HOME > 診療のご案内 - 当科開発の治療と検査 : 前立腺立体生検

最先端の技術で、「安全」「体への負担軽減」を実現する「ミニマム創内視鏡下手術」

当科開発の治療と検査

MRI-経直腸エコーfusionガイド下ターゲット生検:MRIでみつけた病変を、そのまま超音波で生検

MRIと立体生検を組み合わせたオーダーメードの生検方法

当科では、前立腺生検は前立腺癌の有無の診断のみならず、前立腺癌の悪性度、病期に関する精度の高い情報を得るための大変重要な検査法と考えています。これは前立腺癌の治療は前立腺生検の情報に基づいて決定されるからです。(前立腺生検の情報が不明瞭だと、個々の患者さんに応じた治療方針を決めることができません)。施行するに当たって我々は以下のこと重視しております。

1. 治療が必要な癌の有無を正確に判断できる 2. 検出された癌の悪性度がわかる 3. 検出された癌の進行度がわかる

当科では治療が必要な癌を見逃さないために、生検前にMRI検査を行い、前立腺癌が疑われる領域を特定し、各患者さんに適した生検計画を立てています。現時点のところ、MRIのみで前立腺癌を確定診断することはできませんが、優れた局在診断能をもつMRIと高精度の立体生検の組み合わせにより、「オーダーメード」の前立腺診断を行っています。立体生検とは2方向から組織採取を行っていることを意味しています。一般的に前立腺の組織は直腸面から採取する経直腸生検と、会陰と呼ばれる陰嚢と肛門のあいだの皮膚領域から採取する経会陰生検の2種類があります。多くの施設でどちらか一つの方法で行っておりますが、当科では2つの方法を併用して行っております。これは前立腺に存在する癌を効率的に検出するには、一方向からのみであると、検出しにくい場所ができてしまうからです。実際に同じ本数の組織採取を行った場合、一方向よりも2方向(立体生検)のほうが、検出率が有意に高くなり、効率的に癌を検出できることが確認されています。また立体生検から得られた組織により、癌の進展度や悪性度が高い精度でわかり、癌の治療方針の決定時にきめ細かな治療計画を策定することができます。当科では、立体26か所生検(経会陰14か所生検+経直腸12か所生検)を開発してまいりました。現在、MRIを取り入れ、立体14か所生検(経会陰8か所生検+経直腸6か所生検±標的生検(MRIで癌が疑わしい場所を狙った生検))を開発し施行しております。痔などの直腸病変をお持ちの方、感染リスクの高い方(糖尿病をお持ちの方など)は、経会陰14か所生検±標的生検を行っております。
※立体生検は欧米の学会においても優れた生検法として高く評価され、2度の受賞(優れた臨床に対する評価)を受けております。

前立腺周囲の模式図と立体生検

黒矢印は直腸方向からの刺入ルート。青矢印は会陰方向からの刺入ルート。例えば直腸方向からのみだと、前立腺の腹側(図の上側)や会陰側の組織採取が不十分になります。両方向から採取.することにより前立腺全体が効率的に採取しやすくなり、癌の見逃しが減ります。

当院での生検の具体的な方針
初回生検 立体14か所生検±標的生検
直腸病変をお持ちの方や感染リスクの高い方 →経会陰14か所生検±標的生検

※上記は原則ですので、希望の生検がある方は主治医に伝えて下さい。お体の状態などにより生検本数が変わる場合があります。

※癌検出率の比較 (標的生検の成績を除く)

立体26か所生検の癌検出率を100%とすると

立体14か所生検 90-95%
経会陰14か所生検 80-85%
経直腸12か所生検 80%前後

不十分な前立腺生検だと・・・

前立腺生検の適応

前立腺生検の適応は主に前立腺特異抗原(PSA)の値により決定されます。PSAの値が高いほど癌が存在する確率は高くなり、検出された癌も進行している可能性が高くなります。

PSA値による癌の検出率
PSA (ng/mL) 癌の検出率 見つかった癌の進行度
2 - 3.9 10-20% より進行
4 - 10 20-50%
10以上 50%以上

※直腸診(肛門から指を入れて直接前立腺を触れる検査)で前立腺に異常を認めた場合は、PSA 値にかかわらず前立腺生検の適応となります

PSA のみで生検の適応を決めると、多くの癌がない方にも、前立腺生検を施行することになってしまいます。そのため当科では PSA のみならず、free-PSA 値、年齢、直腸診、家族歴(家族の方で前立腺癌の方がいるか)、排尿状態、MRI等を全て考慮し、生検の適応を決定しております。様々な因子や背景を考慮すると、PSAのみの場合よりも、高い精度で癌の有無を予測することができます。すなわち、癌のない方に行う、ある意味では無駄な前立腺生検を防ぐことができます。

同じPSA 6でも

→前立腺針生検の入院スケジュールはこちら

前立腺生検の実際(局所麻酔)

直腸診
  1. 指による直腸診を行い前立腺に癌が疑わせる結節があるかどうか確認します。同時に麻酔ゼリーを肛門内塗布します。
  2. 肛門内に経直腸超音波(エコー)装置のプローブ(親指位の太さの棒のようなもの)を挿入し、前立腺の観察を行います。このとき直腸内より前立腺周囲に麻酔を注入することもあります。
  3. 会陰部の皮膚に麻酔薬を注入します。そこから奥に針を進め、前立腺周囲にも麻酔薬を注入します。
  4. バイオプティガンと呼ばれる特殊な針のついた装置で、前立腺に特殊な針を刺し、組織採取を行います。前立腺を描出し、穿刺位置を確認しながら行います。立体14か所生検の場合は会陰より8か所組織採取します。次に直腸内より6か所組織採取を行います。
  5. 出血がないことを確認し終了します。検査時間はおおよそ15-20分程度です。帰室直後より飲食と歩行が可能になります。

※ 前立腺生検の麻酔

前立腺生検時は“とても痛いのだろうか”、“麻酔は安全なのだろうか”などと、痛みや麻酔に関する不安がよぎられる方も多いと思われます。我々が行っている麻酔方法は大きく分けて2つあります。

  1. 局所麻酔:前立腺の周囲に局所麻酔薬を注入します。会陰部の皮膚および、前立腺周囲に局所麻酔薬を注入します。メリットは麻酔注入部位にしか麻酔は効かないので、検査後すぐに歩いたり、食事をしたり通常の生活に戻れます。また安全性が高いのも特徴です。デメリットは麻酔注入時の針が刺さる時に痛いことや、除痛が完全ではなく、個人差はありますが、多少の痛みはあります。“それほど痛くなかった”と言う人が多いですが、なかには、“かなり痛くて本当に大変だった”と言われる方もいます。一般的に若い方ほど痛みが強い傾向があります。
  2. サドルブロック: 脊椎の下部にある仙骨付近のクモ膜下腔に麻酔薬を注入し、生検部位および下肢の痛みを完全に取ります。意識はあります。メリットは完全な除痛状態になるので、検査時に痛みをほぼ完全に感じないことが特徴です。デメリットは極めて稀に循環器系等の重篤な合併症があり、局所麻酔に比べると安全性がやや落ちることが挙げられます。また生検前後に、数時間の絶飲食が必要で、翌日までベッド上安静となります。頭痛や吐き気が出る方も稀にいます。

基本的には痛みは多少ありますが、安全性を重視すれば局所麻酔をお勧めします。しかしながら、やはり完全に痛みがない状態で行いたいなどの希望がある方は、サドルブロックを選択することもできます。外来主治医に希望を伝えて下さい。

前立腺生検の合併症

前立腺に多数の針を刺す検査ですので、出血関連の軽微な合併症はしばしば起こります。具体的には直腸出血(便に血が混じる)、血精液症(精液に血が混じる)、血尿などです。多くは治療しなくても自然によくなります。また入院の延期あるいは再入院が必要な合併症は0.6%前後に起こっており、それらの大半は前立腺炎、熱発でした。

治療不要な癌

前立腺癌の多くは進行が遅く、高齢者ではたとえ前立腺癌を有していても、治療が不要な場合もあります。沢山の組織を採取すると、治療不要の癌が見つかり、過剰治療につながる恐れもあります。当科では過剰治療を避けるため、治療不要と思われる極めて早期な癌に対しては、無治療経過観察を治療選択肢の一つとして提示しています。立体生検は癌の悪性度を高い精度で予測できるので、治療不要な癌を比較的正確に予測することができます。無治療経過観察中にPSAや画像所見で進行を認めた場合は、適切な治療を行います。

文献

当教室の業績

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