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先進的な診療

前立腺部分治療 -最良の尿禁制と二つの性機能(勃起・射精)を保つための、最新の前立腺癌治療-

はじめに

限局性前立腺癌の治療法には手術療法や放射線療法などがあり、いずれも良好な長期成績が得られています。しかしながら、これらの治療法は前立腺全体を治療対象としているため、合併症として排尿機能(尿禁制)や性機能(勃起機能・射精機能)が損なわれる危険性が少なくありません。特に、「射精機能」は男性の満足感にも大きく影響する重要なものですが、これまでの治療法では温存することが困難でした。排尿機能と二つの性機能(勃起・射精)の全てを温存するための最新の前立腺癌治療が、前立腺部分治療です。

当科では、倫理審査委員会の承認を得て2010年から前立腺部分治療を開始しています.これまで20例以上の方に同治療を行い,良好な治療成績と高い安全性を確認しています.その結果は、後で述べるように、国際的にも報告しております。

限局性前立腺癌治療の問題点

限局性前立腺癌(前立腺内に限局している癌)は、前立腺全摘除または放射線療法(放射線外照射、密封小線源永久挿入法)などの根治治療の適応です。根治療法の治療成績は良好であり,前立腺癌と診断されても,根治治療により多くの方が長期に生存できるようになりました.しかしながら,いずれの治療においても,合併症として排尿障害(尿失禁)、性機能障害が一定の頻度で起こり、長期にわたり治療後の生活の質(QOL)を損なう可能性があります.

性機能障害には、勃起ができなくなる「勃起障害」と、射精に問題のある「射精障害」があります。勃起障害は、前立腺周囲に存在する勃起神経が治療により損傷されることにより発生します。また射精障害は、治療に伴う前立腺自体、あるいは前立腺部射精管の障害により発生し、射精感があっても精液が射出されない「dry ejaculation」と呼ばれる状態となってしまいます。これは、男性の満足感に大きな影響を及ぼすと考えられています。手術手技の改良(勃起神経温存手術)により、手術後の勃起障害についてはある程度避けられるようになりました。しかしながら、前立腺全体を治療対象とするこれまでの根治療法では、射精障害を防ぐことはできませんでした。

前立腺部分治療とは、前立腺全体を治療せず癌のある部分のみを治療することで、勃起機能のみならず射精機能も温存し、豊かなSexual Lifeを保ちつつ癌の根治を得ることを目的とした、最新の前立腺根治療法です。

他癌種における部分治療の現状

すでにほかの癌に対しても,癌病巣のみを治療し,臓器を温存する部分治療が行われています.たとえば,乳癌では癌病巣のみを切除または治療する乳房温存療法が標準治療として行われています.また泌尿器科の癌においても,腎臓癌では,腎機能を保つことを目的として,腫瘍のみを切除する腎部分切除が小さな腎臓癌に対しては主流となっています.さらに当科では,膀胱癌に対し,放射線化学療法を併用し部分治療(部分切除)を行う膀胱温存療法にも取り組んでおります.以上のように,様々な癌に対し,臓器を温存する部分治療が広く行われており,当科では前立腺癌に対しても部分治療を導入しました。前立腺癌の部分治療は,欧米の一部の施設でも始められています.

前立腺部分治療の確立に向けた当科の取り組み

前立腺癌に対する部分治療を行うには,前立腺内の癌病巣の位置を正確に把握し,その病巣を確実に治療できる治療手段を用いることが重要となります.前立腺癌では,しばしば前立腺内に癌が多発すること(2つ以上の癌病巣があること)と,従来の画像検査では癌病巣が正確に把握できないことが、部分治療を行うにあたり課題とされてきました.近年,前立腺癌の画像診断法としてMRI(磁気を用いた断層撮影)が有用であることが分かり,当科でも前立腺癌の診断に積極的にMRIを行ってきました.また当科では,以前より前立腺内の癌の状態を正確に把握することを目的に立体多ヶ所生検法を開発して、多くの国際的な評価を受けてきました.これら立体多ヶ所生検とMRIを組み合わせることで,より正確に癌の位置を把握できることが分かり、その結果、前立腺を左右に二分割した場合、さらには前後左右に4分割した場合に、治療が必要な癌がどの領域に存在するかを、高い精度で診断できるようになりました.(Matsuoka Y, et al. Eur Urol 2014;65:186-192.)

前立腺内の組織を部分的に治療する手段として,当科では密封小線源永久挿入法(小線源療法)を用いています.小線源療法は限局性前立腺癌の標準的な根治的治療法として世界中で広く行われ、当院でも多数の経験があり、その効果、安全性は確立されています。従来の小線源療法は前立腺全体を治療対象として前立腺全体に小線源を刺入しますが、治療が必要な部位にのみ小線源を刺入することで、治療範囲の調節が比較的容易,かつ確実に行えますので部分治療にも適した治療法の1つと考えています。

当科では、倫理審査委員会の承認を得て2010年から同治療を開始しています.これまで約20例の方にこの治療を行い,良好な治療成績と高い安全性を確認しています.

前立腺部分治療の適応と方法

限局性前立腺癌と診断された方のうち、MRI、立体多ヶ所生検の所見で比較的悪性度の低い癌が前立腺の片側(片葉)に留まっている方が対象となります。他にもこの治療の適応となるか,いくつかの条件がありますので,ご希望される方は担当医に相談してください.なお,他の病院で前立腺生検を受け前立腺癌と診断され,当科での前立腺部分治療をご希望される場合には,基本的には治療の適応性を判断するために当科での立体多ヶ所生検を受けていただくことになります.

部分治療をご希望され,この治療の適応と判断されれば,放射線治療医の診察を受けていただき,治療日の設定,前立腺の事前計測を行います.この時点で,前立腺が大きい(約40ml以上)と判断されれば,より確実に線源を刺入することが可能となるように,前立腺を縮小させるため短期間(3-6ヶ月)の内分泌療法を行います.

実際の治療スケジュールは通常の小線源療法と同様です. 3泊4日の入院が必要となりますが,放射線管理の必要性から放射線科での入院となります.小線源の刺入は,腰椎麻酔下に泌尿器科医と放射線治療医が協力して行います.

治療後は,定期的な外来通院でPSAの測定,およびMRIで治療効果を判定していきます.また、治療による日常生活への影響は、QOL(生活の質)調査票への定期的な記入で調査します。

放射線照射後の前立腺内再発癌に対する部分治療

以上に述べたのは,限局性前立腺癌に対する初回治療としての部分治療についてですが,放射線照射後の前立腺内再発癌に対しても部分治療を施行しています.

先に述べたように前立腺癌に対する根治療法の治療成績は良好であることが分かっていますが,たとえば,放射線療法後に,前立腺特異抗原(PSA)が上昇し,癌が再発することもあります.放射線療法後に癌が再発された方の多くでは,癌は転移を起こしておらず,前立腺内で再発していると考えられています.しかしながら,前立腺内に再発した前立腺癌に対する前立腺に対する局所治療として,前立腺全摘除,また前立腺全体への再度の放射線照射はともに合併症の頻度が多くなるとの報告があり,一般的には行われておりません.このため,放射線療法後の再発に対しては,全身内分泌療法が行われます.近年,長期間の内分泌療法は,骨粗鬆症,骨折,糖尿病,心血管病,うつ症状などの危険因子となることが指摘されており,内分泌療法を行うに当たり注意が必要です.

放射線治療後のPSA上昇により再発と判断され,MRI,および前立腺生検で前立腺内に再発病巣が特定される方が前立腺内再発癌に対する部分治療の適応となります.部分治療をご希望され,この治療の適応と判断された場合には,初回治療としての部分治療と同様のスケジュールで治療を行っていきます.

同治療に対する国際的評価

  1. Saito K, Kihara K, Numao N, Masuda H, Kijima T, Tatokoro M, Koga F, Fujii Y, Hayashi K, Shibuya H. Initial experience of focal therapy for prostate cancer using I-125 seed implantation: Unilateral ablation for patients selected by extended biopsy and MRI findings. The 2011 Genitourinary Cancers Symposium. J Clin Oncol 29: 2011 (suppl 7; abstr 99)
  2. Saito K, Kijima T, Tatokoro M, Ishioka J, Matsuoka Y, Numao N, Masuda H, Koga F, Hayashi K, Shibuya H, Kihara K. Focal therapy for prostate cancer using I125 seed implantation: Hemiablative brachytherapy for patients selected by extended biopsy and MRI findings. 32nd Congress of the Societe Internationale d'Urologie. Fukuoka, Japan
  3. Saito K, Kijima T, Yoshida S, Yokoyama M, Ishioka J, Matsuoka Y, Numao N, Koga F, Masuda H, Fujii Y, Hayashi K, Shibuya H, Kihara K. Focal therapy for prostate cancer using I125seed implantation: Hemiablative brachytherapy for patients selected using extended biopsy and MRI. The 28th Annual Congress of the European Association of Urology. Milan, Italy
  4. Matsuoka Y, Numao N, Saito K, Tanaka H, Kumagai J, Yoshida S, Koga F, Masuda H, Kawakami S, Fujii Y, Kihara K. Combination of Diffusion-weighted Magnetic Resonance Imaging and Extended Prostate Biopsy Predicts Lobes Without Significant Cancer: Application in Patient Selection for Hemiablative Focal Therapy. Eur Urol. 2012 Oct 16. [Epub ahead of print]
  5. Numao N, Kawakami S, Sakura M, Komai Y, Yokoyama M, Okada Y, Koga F, Saito K, Masuda H, Fujii Y, Yamamoto S, Yonese J, Ishikawa Y, Fukui I, Kihara K. Negative result in unilateral 13-core biopsy can predict the absence of significant cancer on the ipsilateral lobe with a high accuracy. Implications for hemiablative focal therapy. The 106th annual meeting of the American Urological Association. Washington DC, USA

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(泌尿器科外来直通)
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