HOME > 診療のご案内 -先進的な診療 : 前立腺手術後の尿失禁治療

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先進的な治療

前立腺手術後の尿失禁治療:人工尿道括約筋、尿道スリング手術

前立腺癌に対する前立腺全摘除後の尿失禁は、患者さんの生活の質(QOL)に大きな影響を与えます。外科的な治療を必要とする尿失禁患者は、全摘除患者の約2~3%に発生するといわれています。本邦では、年間15000~20000件の前立腺全摘除が施行されております。多数の医療機関で手術が施行されているのに比較して、男性尿失禁治療に習熟している医師、医療機関は極めて少ないのが実情です。全国で苦しんでおられる患者さんに、当科では、人工尿道括約筋手術と尿道スリング手術の両方を導入し、尿失禁の重症度に応じた治療を積極的に推し進めております。現在、パッドやオムツを数枚以上常用されているかたも、1枚程度またはパッド不要になる可能性があります。

1)人工括約筋

人工尿道括約筋手術は、外尿道括約筋機能低下を有する尿失禁患者すべてが対象となります。尿道に巻きつけたカフを括約筋の代わりとして用いて、手動でカフを弛緩させて排尿を制御します (図参照)。カフはまた自然に5分程度で閉じます。その有効性は極めて高く、尿失禁の程度に関係なく改善すること、尿失禁に対する既治療(コラーゲンほか)の有無や、放射線照射の既往もその効果に影響を与えません。挿入1か月半後ぐらいから、実際に使用(アクチベーションといいます)します。

人工括約筋は現在世界的にAMS-800という機種が用いられており、日本においても厚生労働省の認可を得ています。しかし、この治療法は保険診療として認められていないため、自費診療または先進医療となります。先進医療であっても、手術に関連する部分と器具に関しては自己負担であり、実際の費用はほとんどこの部分が占めるため、費用が著明に軽減することはありません。当科では、先進医療費として164万円程度かかり、その他入院費ほかが保険診療の対象として別にかかります。詳細については、担当医にご相談下さい。

2)尿道スリング手術

尿失禁の患者さんでは、尿がもれない人と比較して、腹圧時に尿道が後方に動きやすく、尿失禁の原因のひとつと言われております。本手術は、尿道をテープで後方から支え、括約筋機能を有効に尿禁制につなげることを主眼としています。全周から尿道を閉鎖する人工尿道括約筋に比較すればその尿禁制効果は強くはありませんが、人工尿道括約筋と異なり、自然排尿することが可能です。欧米では、男性スリング手術キッドが発売されておりますが、本邦で使用することができないのが現状です。当科では、女性腹圧性尿失禁に対するスリング手術に対する豊富な経験を生かして、女性骨盤底再建に利用するメッシュを用い、男性への臨床応用をすすめております。基本的には、尿失禁量が一日200-300グラム程度までの軽症~中等症症例が対象となります。スリング手術で思わしい結果がえられなかった場合でも人工尿道括約筋手術を行うことは可能です。

3)手術を考える時期及び適応

前立腺全摘除後は、多くの方が尿失禁を経験されます。術後、6か月までは急速に改善し、その後はゆるやかに改善または、不変であるとされています。約18~24か月を越えてさらに改善することはありません。治療としては、最低12か月程度までは、内服治療、骨盤底筋群体操、低周波などが行われます。臨床的な改善傾向がみられる限り、保存的な治療を継続すべきであり、この時期にスリング手術や人工尿道括約筋手術を行うことはありません。12か月後の段階で、高度尿失禁(目安として、一日400グラム以上)のかたは、その後急速に改善する可能性は低いので、外科的治療を視野に入れます。欧米のスリング手術や人工尿道括約筋手術の多くも、治療介入まで3~10年程度経過しているのが実際のようです。

軽度尿失禁(24時間パッドテストで100グラム以下)は、スリング手術の適応と思われます。中等度尿失禁(24時間パッドテストで100-400グラム)では、どちらの治療も選択しに入ります。長期成績が明らかなのは、人工尿道括約筋です。しかし、自然排尿を望まれる場合は、スリング手術となります。スリング手術をまず行い、効果が不十分な場合や再発時に人工尿道括約筋を考慮するという方法もあります。ただし、膀胱機能が低下している場合や、放射線照射の既往のある場合は人工尿道括約筋が望ましいとされております。高度尿失禁(24時間パッドテストで400gram以上)では、人工尿道括約筋が勧められます。

4)おわりに

上記の両治療とも、本来の尿道括約筋機能の代用であり、完全に元に戻るわけではありません。また、人工尿道括約筋のシステム自体の故障の可能性もあります。なによりコストの問題が大きく普及を妨げています。尿失禁患者さんの多くは、自分の行動を制約することで対処しております。手術で尿禁制を得られた患者さんの「オムツを全部捨てました」「旅行にやっといけました」などと語る際の笑顔は、こうした治療を地道に続ける原動力となります。まずは、ご相談頂ければ幸いです。

実績

当教室の業績

  1. 増田 均、木原和徳. 前立腺手術後の尿失禁に対する治療治療戦略―最近の話題―。泌尿器外科 22 (9), 1163-9, 2009.

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