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最先端の技術で、「安全」「体への負担軽減」を実現する「ミニマム創内視鏡下手術」

先進的な診療

順次薬物療法(前立腺がん)

進行前立腺がんに対する順次的治療
-生活の質を保ちつつ、長期間の病勢安定を目指した治療方針-

はじめに

前立腺がん細胞には血液中の男性ホルモン(アンドロゲン)の刺激により増殖する性質があります。両側の精巣摘除手術やLHRH製剤と呼ばれる薬剤により、精巣から分泌される血液中の男性ホルモン値を低下させると、前立腺がん細胞の多くは死に至ります。これが前立腺がんに対する内分泌治療(アンドロゲン除去療法)であり、転移のある進行前立腺がんでは第一に行われています。しかしながら、男性ホルモンは副腎からもわずかに分泌されているため、完全にゼロにはなりません。副腎から分泌される男性ホルモンの働きは、抗アンドロゲン剤によりブロックすることができるため、アンドロゲン除去療法と抗アンドロゲン剤を併用することもあります。この治療法は複合アンドロゲン阻害療法(CAB: combined androgen brockade)もしくは最大アンドロゲン阻害療法(MAB: maximum androgen brockade)と呼ばれています。

治療開始当初は90%以上の患者さんで効果を認めますが、多くの場合数年で徐々に治療の効果がなくなり、病状が再び悪化(再燃)してきます。このような状態の前立腺がんを「再燃前立腺がん」または「内分泌治療抵抗性前立腺がん」と呼びます。 残念ながら再燃前立腺癌は現在根治することができないため、できるだけ長期間の病勢安定を得ることを目標とした治療を行います。再燃前立腺がんには、主に化学療法が施行されています。

前立腺がん内分泌治療・化学療法の問題点

前立腺がんに対する内分泌治療には、いくつかの問題点もあります。第一は副作用であり、投与直後から起こりうるホットフラッシュ(ほてり)、性機能障害などに加え、長期的には全身倦怠感、記銘力低下、うつ、骨粗鬆症などが出現します。これらの副作用は生活の質の低下につながります。第二に治療コストの問題が挙げられます。内分泌療法は長期間継続されることとなるため、総治療費用も高額となります。したがって、全体の生存期間を損なわない限り、内分泌療法の開始を遅らせること、薬剤を少量から順次投与することは、副作用軽減・医療費軽減の観点から有意義であると考えられます。

近年、再燃前立腺がん(内分泌治療抵抗性前立腺がん)に対する有効な化学療法として、ドセタキセル(商品名:タキソテール)という薬剤が広く使用されるようになりました。ドセタキセルは再燃前立腺がん患者のPSA値を高い確率で低下させ、生存期間も延長させることが証明されています。現在、多くの施設ではCAB療法に再燃となった時点で開始されています。しかしながら、ドセタキセル療法は骨髄抑制などの副作用を伴い、治療を重ねるにつれて徐々に副作用が強くなるため、治療可能な期間には限りがあります。したがって、ドセタキセル療法についても、治療効果を損なわない限り、他の薬剤よりも開始時期を遅らせることや、投与量を減量して投与することが重要と考えられます。

以上のような背景から、我々の教室では、転移を有する進行前立腺がん、および再燃前立腺がんに対して、副作用軽減、医療費軽減、長期間の病勢安定を意図した順次的治療を施行しています。

東京医科歯科大学病院で行っている、進行前立腺がんに対する順次的治療

下記の表は、我々の施設で施行している「順次的治療」です。比較的副作用の少ない治療法より開始し、施行中の治療が効かなくなった場合に、有効と考えられる治療を順番に行う治療です。順次的治療では、各段階の治療全てに有効性があることがわかっています。

当科の治療方針の特徴的な点を説明します。

1.遅延CAB療法(上表の1, 2)

我々の教室では、内分泌治療を開始する際に、アンドロゲン除去療法のみで治療を開始し、再燃時に抗アンドロゲン剤ビカルタミドを追加しています。これを遅延CAB療法と呼んでいます。当科における過去の検討では、アンドロゲン除去療法に再燃となった患者のうち、66%に遅延CAB療法の有効性(PSA値の50%以上の低下)を認めました。遅延CAB療法が有効であった症例群では、順次的治療の以降の薬剤の奏効期間が長く、全体の生存期間が長い傾向も認められました。したがって遅延CAB療法は、副作用・医療費軽減につながるのみならず、その有効性が今後の予後予測や治療方針検討に役立つ可能性があると考えています。

2.女性ホルモン剤抵抗性前立腺がんに対する低用量ドセタキセル療法(上表の4, 5)

現在多くの施設において、ドセタキセルはCAB療法に再燃となった時点で施行されています。基本的に3週間ごとに投与され、併用薬剤として女性ホルモン製剤や糖質コルチコイド製剤が同時に使用されています。この投与方法は、一般的な化学療法の効果の指標である奏効率(PSAが50%以上低下した患者の割合)の点では非常に有効ですが、標準の投与量では副作用も強く、前述したように投与継続回数にも限りがあります。ドセタキセルと併用薬剤のそれぞれの治療効果が分からなくなってしまうというデメリットもあります。

我々の教室では、遅延CAB療法(表1,2)および抗アンドロゲン剤交替療法(表3)後、女性ホルモン剤(表4)を少量より投与しています。女性ホルモン剤の低用量投与により、重篤な副作用なく多くの患者さんで1-2年程度のPSA安定化が得られます。さらに女性ホルモン抵抗性となった時点でドセタキセルを低用量で開始することにより、副作用による生活の質の低下を抑えつつ、さらなる生存期間延長を目指しています。

我々の教室で、女性ホルモン再燃後にドセタキセル療法を受けた患者におけるドセタキセル療法開始後の全生存期間は、CAB療法再燃時にドセタキセル療法を開始した他施設の報告とほぼ同等でした。直接比較することはできませんが、CAB療法再燃時点からの全生存期間という観点では、延長している可能性も示唆されました。これは我々の教室の「順次的治療」の総合的な優位性を示しているものと考えています。

3.糖質コルチコイド療法(上表の6)

糖質コルチコイドは副腎より分泌されるホルモンの一つです。全身の代謝反応や免疫反応を調節する他、様々な作用を持つことが知られています。糖質コルチコイドには全身倦怠感の改善、貧血の改善、食欲増進などの効果があるため、末期前立腺がん患者さんへの緩和治療として以前より使用されてきました。近年、糖質コルチコイドには症状緩和効果のみならず、前立腺がん細胞自体に対する増殖抑制効果があることが分かり、現在我々は積極的治療の一つと捉えられています。糖質コルチコイドは、内分泌治療とドセタキセル療法に抵抗性となった患者さんに対しても、多く場合で効果が認められるため、現在我々は、ドセタキセル療法に抵抗性となった後、ドセタキセルと糖質コルチコイドの併用投与を施行しています。

糖質コルチコイドが前立腺がんに効くメカニズムは、副腎からの男性ホルモン分泌を抑制する内分泌療法としての作用であると考えられていました。我々の教室では、糖質コルチコイドには、がん細胞の生存・増殖に重要な機構である血管新生およびリンパ管新生を抑制する作用もあることを、基礎研究により発見しました。

実績

当教室の業績

  1. Fujii Y, Kawakami S, Masuda H, Kobayashi T, Hyochi N, Kageyama Y, Kihara K.  Deferred combined androgen blockade therapy using bicalutamide in patients with hormone-refractory prostate cancer during androgen deprivation monotherapy. BJU Int, 97: 1184-9. 2006
  2. Kijima T, Kawakami S, Fujii Y, Okada Y, Sakai Y, Saito K, Koga F, Masuda H, Kihara K. Docetaxel is effective to estrogen-refractory prostate cancer but not to estrogen- and glucocorticoid-refractory prostate cancer. 25th anniversary EAU Congress, 2010/4/19
  3. Kijima T, Kawakami S, Fujii Y, Okada Y, Sakai Y, Saito K, Koga F, Masuda H, Kihara K. Activity of docetaxel against estrogen-refractory prostate cancer and against estrogen- and glucocorticoid-refractory prostate cancer. 2010 Genitourinary cancer symposium, 2010/3/5
  4. Yano A, Fujii Y, Iwai A, Kageyama Y, Kihara K. Glucocorticoids suppress tumor angiogenesis and in vivo growth of prostate cancer cells. Clin Cancer Res, 15: 3003-9. 2006
  5. Yano A, Fujii Y, Iwai A, Kawakami S, Kageyama Y, Kihara K. Glucocorticoids suppress tumor lymphangiogenesis of prostate cancer cells. Clin Cancer Res, 15: 6012-7. 2006

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TEL 03-5803-5680
(泌尿器科外来直通)
(午前6:00~午後4:00)
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