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ごあいさつ

快眠センター長 宮崎泰成

 昭和の時代、私たちが子供だった頃には、正月はお店がほとんど開いていませんでした。「おせち」で正月を過ごし、夜に店が開いていることはまずなく、24時間開いている「コンビニエンスストア」もほとんど見かけませんでした。昼と夜の境目、盆暮れ正月と言ったオンとオフがはっきりしていたわけです。20世紀初頭にエジソンにより白熱電球が広まり「世界から夜が消えた」と言われるようになりました。現代社会に至っては24時間社会となるとともに社会構造が変化し、それとともに睡眠障害が大きな社会問題となって来ています。睡眠障害のなかでも睡眠時無呼吸症は成人の2〜4%を占める疾病で、日中の激しい眠気のため社会生活に大きな影響を及ぼすとともに、無呼吸とそれに伴う低酸素血症および睡眠の断片化が原因となって、高血圧、メタボリックシンドローム、心血管障害や脳血管障害を合併します。社会資源の損失であるだけでなく、本人の健康や生命に大きな脅威を与えています。

 この睡眠障害や不眠については、特に日本ではなかなか認知理解されませんでした。「4当5落」という言葉がかつてありました。4時間睡眠で勉強すれば受験に合格し、5時間眠れば落ちるという意味です。この言葉が示すように「快眠」を考える時代ではなかったのです。それが一変したのが2003年2月26日の事件です。山陽新幹線の運転手が前日10時間の睡眠を取ったにもかかわらず、時速270kmで8分間26kmに渡り、居眠り運転をし、本来停車する駅を通過してしまったのです。そこで睡眠障害の対極にある「快眠」について診療する部門が大学病院にも必要に なって来たと我々は考えました。

 このような現状を解決するため、2009年11月、「快眠センター」は東京医科歯科大学医学部附属病院においてスタートいたしました。3年後の2012年10月には同歯学部附属病院にて快眠歯科(いびき・無呼吸)外来が発足しました。医科(呼吸器内科、精神神経科、耳鼻咽喉科)と歯科(快眠歯科、顎関節治療部、義歯外来、総合診療部、歯科技工部)が連携して診療にあたっていますが、2009年10月19日より診療連携を深めるため、これらの診療科が集まって快眠センター会議を毎月開催しています。快眠センターの「快眠」とは、単に不眠の反対を意味するものだけでなく、快適な睡眠を得るためのすべてのプロセスを含むと考えており、これらの疾患に対して協力して集学的な治療体制の確立と有効な治療法を開発し、テーラメード医療を現実のものとして来ています。

2018年7月
快眠センター長 宮崎泰成