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診療内容Medical Contens

肺癌

肺癌は日本において、がんの中では男性では1位、女性では2位の死亡数であり予後不良な疾患です。しかし、近年遺伝子異常を標的とした分子標的薬免疫療法の開発がすすみ、治療成績が飛躍的に改善されてきております。

診断

画像診断

胸部レントゲン、胸腹骨盤CT、頭部MRI、FDG-PET など

細胞診、組織診、遺伝子検査

喀痰、気管支鏡検査、他科と連携したCTやエコーを用いた生検、胸腔鏡下肺生検などの手術で採取した検体を用いて、病理部にて細胞診、組織診を行います。肺癌の種類によって、肺癌の増殖や転移などにかかわる遺伝子変異の有無を調べる遺伝子変異検査を行います。検査を行う遺伝子変異の種類には、EGFR遺伝子変異ALK融合遺伝子ROS1融合遺伝子BRAF遺伝子変異などがあります。必要に応じて、これらの遺伝子異常を専門の検査機関にて検査します。また、近年保険診療で使用可能となった免疫チェックポイント阻害剤の効果を予測するバイオマーカーとなるPD-L1検査も行います。さらに、希少肺がんの患者さんに有効な治療薬をいち早く届けることを目標とした個別化治療の全国的な臨床試験であるLC-SCRUM-Japan(http://www.scrum-japan.ncc.go.jp/lc_scrum/)とも連携し、より詳細な遺伝子検査もおこなっています。

血液検査

全身状態を検査するための一般的な血液検査のほか、治療効果の評価目的の腫瘍マーカー測定を行います。また、EGFR遺伝子変異のある肺癌をターゲットにした分子標的治療薬を使用後の耐性変異(EGFR T790M)を調べる目的に、血液を用いた遺伝子検査なども行います。

分類

大きく以下の4つに分類され、神経内分泌腫瘍の高悪性度腫瘍である小細胞肺癌と、非小細胞肺癌で治療が異なります。また、近年は扁平上皮癌とそれ以外の癌で使用する薬剤が異なる場合があります。
腺癌
扁平上皮癌
神経内分泌腫瘍(小細胞肺癌)
大細胞癌
・その他

治療

手術

がんの広がりを検討して手術可能な場合には行われます。術前に腫瘍を小さくするための化学療法や、術後に再発予防の化学療法を行う場合があります。

化学療法(抗がん剤、分子標的治療薬)

病理結果や遺伝子異常による肺癌の分類によって、個別化治療を行います。EGFR遺伝子変異が認められれば、EGFRを治療標的とした抗がん剤(EGFR-TKI)の治療を、ALK融合遺伝子またはROS1融合遺伝子が認められれば、ALK融合タンパクまたはROS1融合タンパクを治療標的とした抗がん剤(ALK阻害剤またはROS1阻害剤)の治療を検討することになります。治療効果には個人差があり、治療開始後2クールごとに効果判定を行います。治療効果が認められれば、治療継続します。副作用については、投与する薬剤によっても異なりますが、一般的には、発熱、食欲不振、嘔気嘔吐、皮膚の発疹、血球減少、肝障害、腎障害、脱毛、間質性肺炎などがあります。治療効果がないと判断された場合や、副作用が強い場合には、投与を中止し、別の治療薬に切り替えることがあります。通常初回治療は、状況に応じて入院にて行い、2回目以降は原則として外来化学療法室にて行います。

放射線治療

癌が存在する部位に放射線を照射し治療を行います。肺の機能が悪く手術できない場合や、脳や骨など、局所に転移した部位に照射することがあります。

免疫治療

免疫チェックポイント阻害剤である抗PD-1抗体抗PD-L1抗体を用いた治療を行います。非小細胞肺癌では、腫瘍のPD-L1が高発現であれば、一次治療(一番最初の治療)に抗PD-L1抗体を使用することが推奨されています。ただし、多彩な副作用(発熱、倦怠感、咳、腹痛、下痢など)が出現する可能性があります。

緩和治療

診断初期から、痛みのコントロール目的として緩和治療を行います。疼痛が強い場合には、入院中に院内の緩和ケアチームと連携して、疼痛管理を行うこともあります。