臨床と同様に研究分野も多岐にわたる。 急性、慢性の過敏性肺炎の病態解析や診断法の開発、間質性肺炎における肺線維化の病態解明を行なうと共に、肺悪性腫瘍を対象とした遺伝子治療、癌抑制遺伝子の機能解明、慢性閉塞性肺疾患モデルにおける気道上皮と間質の相互作用、喘息の動物モデルを用いた病態解析などを行なっている。

  1. 過敏性肺炎(鳥飼病,夏型過敏性肺炎)の病態解明,特異的診断法の開発,発症に関わる遺伝子多型,肺線維化機序の解明
  2. ノックアウトマウスやラットを用いた喘息モデルにおける気道過敏性発症機序の解明
  3. 喫煙による気道上皮と肺間質相互作用の検討
  4. 新規癌抑制遺伝子の細胞死誘導機序の解明

各研究班の紹介
  1. 間質性肺炎班
  2. 腫瘍班
  3. 感染症班
  4. COPD ・ 呼吸不全 ・ 気管支喘息班
  5. 睡眠時無呼吸症候群班

1.間質性肺炎班紹介
 間質性肺炎は、じん肺(石綿肺、珪肺)、膠原病肺、薬剤性肺炎、慢性過敏性肺炎などを含む包括的な病名であり、原因不明の場合は特発性間質性肺炎(IIPs)と診断されます。IIPsは厚生労働省の「特定疾患」に指定されています。その中の一つである特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis; IPF)はIIPsの約半数以上を占めており慢性進行性の疾患で呼吸不全を来す疾患です。IIPsのなかで最も重要な疾患である特発性肺線維症(IPF)には有効な治療法が少なく、厚生労働省難治性疾患克服研究事業などにおいて全国規模の研究がすすめられています。当科でもIPFの臨床試験に参加し、新しい治療法の開発に貢献することを目指しております。
 また、当科の特色として慢性過敏性肺炎の臨床経験が豊富であり、診断に必要な実験室レベルでの免疫学的検査法が準備されております。慢性過敏性肺炎は家のカビや鳥(鳩、インコ、羽毛製品など)が原因となるアレルギー性疾患で、いわゆる「原因のある」病気でありますが、IIPsと臨床像が類似しており専門的な知識と経験がないと正しく診断することができません。本来、間質性肺炎をみた場合十分な鑑別を行った上でIIPsと診断すべきですが、実際には通り一遍の問診と簡単な画像の読影により特発性(原因不明)とする傾向があり、慢性過敏性肺炎は誤ってIIPsと診断されていることが多いようです。稲瀬教授は厚生労働省難治性疾患克服研究事業のびまん性肺疾患に関する調査研究班の班員で、慢性過敏性肺炎を担当し全国調査を計画しています。
 この研究班の目標は、慢性過敏性肺炎の病態理解を踏まえて肺線維化のメカニズムを解明しよう、というものです。具体的な研究内容には環境における原因抗原の同定・定量、抗原決定部位のクローニング、Th1/2バランスを含むケモカイン・サイトカインの発現解析、線維化肺におけるアポトーシスや上皮・間葉系形質転換(EMT)の関与、ラット慢性過敏性肺炎モデルの作製などがあります。マンパワーが必要な実験も多いのですが、抜群のチームワークを発揮しております。
(文責 宮崎泰成・稲瀬直彦)



2.腫瘍班紹介
 腫瘍班は「Yushima Lung Cancer Oncology Group(YLOG)」として大学と関連病院が一体となって定期的に会合を開き、臨床研究を推進しています。化学療法に関する臨床試験を計画、実施しており、その成果を学会、論文にて発表しています。完全切除後非小細胞肺癌に対する術後化学療法において、忍容性試験としてカルボプラチン+TS1療法を行ない、現在論文投稿中です。新規には進行非扁平上皮非小細胞肺癌におけるカルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ療法におけるバイオマーカーの検討、高齢者進行非扁平上皮非小細胞肺癌におけるカルボプラチン+ペメトレキシド療法またはペメトレキシド療法による導入療法に引く続くペメトレキシドによる維持療法の無作為化第場K相試験を行っています。当科には間質性肺炎が多く、間質性肺炎には高率に肺癌の合併が見られますが、間質性肺炎合併肺癌の化学療法における薬剤の選択および安全性、治療効果は確立されていないことから、現在間質性肺炎合併肺癌に対する化学療法の臨床試験を計画中です。さらに、WJTOGにも加盟し、今後は全国規模での臨床試験の参加や、各種バイオマーカーを検討するtranslational researchを検討しています。
 
(文責 坂下博之)



3.感染症班紹介
 肺炎は日本人の死因別統計で第4位を占める重要な疾患です。肺炎による死亡の約9割は65歳以上の高齢者です。上気道反射の低下や嚥下障害の進行により,高齢者肺炎の多くに誤嚥の関与が推測されますが,不顕性誤嚥(明らかなムセ症状のないまま起こる誤嚥)であることが多いため、各種誤嚥試験で診断できる率は多くありません。
 これまでにわれわれは、関連施設が多数あることを生かし連携することで、大規模な臨床研究を行ってきました。誤嚥性肺炎と非誤嚥性肺炎では、患者さんの基礎疾患・肺炎の原因菌種などにかなりの差異があることを見出し、両者を区別することの重要性を指摘してきました。また、より有用な誤嚥性肺炎診断法および治療薬について検討を重ねてきました。
 今後も、大学と関連施設の連携により更なる検討をしていく予定です。
(文責 榊原ゆみ)



4.気管支喘息・COPD班紹介
 気管支喘息の治療においては、ステロイドの吸入薬が普及したことによって喘息のコントロールは飛躍的に改善し喘息死も減少しました。しかし一方で、アレルギー疾患の患者数は着実に増加しており、喘息においては有症率が10年ごとに1.5〜2倍と急速な増加を示しています。喘息の発症メカニズムについては未だ不明な点が多く、発症後の病態についても気道過敏性(わずかな刺激にも気管支が敏感に反応して収縮してしまうこと)や気道リモデリング(慢性炎症によって気管支が傷害された後に異常な修復が起きて気管支の壁が硬くなったり厚くなったりすること)の病態はまだ十分解明されていません。我々は、ヒトの気道上皮細胞・気道平滑筋細胞の培養系や、マウス・ラットの喘息モデルを用いて気道過敏性・気道リモデリングのメカニズムについての解析を行っており、喘息の予防・治療に役立つことを目標に研究を進めています。

(文責 土屋公威)



5.睡眠時無呼吸症候群班
 睡眠制御学講座と共同で診療および研究にあたっています。
 近年、24時間社会となり社会構造が変化するにつれて睡眠障害は大きな社会問題となっています。睡眠障害は一般人口の20%におよぶとされ、日中の生活機能障害が社会問題となっています。睡眠障害のなかでも睡眠時無呼吸症候群は成人の2〜4%を占める疾病で、日中の激しい眠気のため社会生活に大きな影響を及ぼす一方、無呼吸とそれに伴う低酸素血症は本人の健康や生命に大きな脅威を与えるだけでなく社会資源としても損失となります。さらに睡眠は「心と身体が出会う領域」であり循環器疾患や内分泌疾患など内科的疾患だけでなく、うつ病などの心身・精神疾患と睡眠障害との関係も明らかになってきています。
 こうした疾患の研究と治療を確立するため、睡眠制御学講座は2009年6月に発足致しました。私たちは、治療が必要なこれらの疾患に対して循環器科や内分泌科などの内科および精神科さらに歯科と耳鼻科と協力して集学的な治療体制の確立と有効な治療法の開発を目指して行きます。
(文責 宮崎泰成)





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