東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科精神行動医科学分野では、国際健康推進医学分野の藤原武男教授、保健管理センターの平井伸英准教授と協力して、COVID-19診療に従事する医療者の、精神的・社会的負荷を検出する簡便な新しい評価尺度Tokyo Metropolitan Distress Scale for Pandemic（TMDP）を開発し、Psychiatry and Clinical Neurosciencesに掲載されました。
A novel brief screening scale, Tokyo Metropolitan Distress Scale for Pandemic (TMDP), for assessing mental and social stress of medical personnel in COVID-19 pandemic

Tokyo Metropolitan Distress Scale for Pandemic (TMDP): Japanese version.

この2週間での中でのことをお聞きします	一度も ない	ほとんどない	ときどきある	よくある	とても よくある
1. COVID-19に罹患するのが怖い	0	1	2	3	4
2. COVID-19に罹患するかどうかは制御できないと感じる	0	1	2	3	4
3. COVID-19患者のケアのリスクを受け入れられないと感じる	0	1	2	3	4
4. COVID-19に罹患しないための職場環境の安全が保たれていないと感じる	0	1	2	3	4
5. 新型コロナウイルスを周囲にうつすのではないかと不安になる	0	1	2	3	4
6. 自分の仕事のせいで、周囲の人が私を避ける	0	1	2	3	4
7. COVID-19に関連して職場の人間関係が悪化した	0	1	2	3	4
8. COVID-19に関連して家族の人間関係が悪化した	0	1	2	3	4
9. COVID-19に関連した経済的負担を感じる	0	1	2	3	4

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Tokyo Metropolitan Distress Scale for Pandemic (TMDP)

During the PAST TWO WEEKS: How frequently were you concerned about the following?	Never	Rarely	Occasionally	Often	Most of the time
1. COVID-19 infection of oneself	0	1	2	3	4
2. You have no control over whether you have COVID-19 or not	0	1	2	3	4
3. Risk of COVID-19 patient care is unacceptable	0	1	2	3	4
4. Safety of the work environment is not maintained in order to avoid being affected by COVID-19	0	1	2	3	4
5. Transmitting COVID-19 to people around you	0	1	2	3	4
6. People around you avoid you because of your occupation	0	1	2	3	4
7. Deteriorating workplace relationships in relation to COVID-19	0	1	2	3	4
8. Deteriorating family relationships in relation to COVID-19	0	1	2	3	4
9. Financial burden associated with COVID-19	0	1	2	3	4

ポイント

• COVID-19診療に従事する医療者の、精神的・社会的負荷を検出する簡便な新しい評価尺度Tokyo Metropolitan Distress Scale for Pandemic (TMDP)を開発しました。
• 新しい評価尺度TMDPは医療者のうつ状態や不安を正確に検出し、さらにCOVID-19などパンデミック特有の現象、つまり感染拡大の当事者になるリスクや不安・社会的偏見・経済的負荷などを明らかにします。
• この評価尺度により、医療者のモチベーションの低下や離職リスクに早期に介入し、COVID-19診療の安定した医療体制が可能になることが期待されます。

研究の概要

東京医科歯科大学医学部附属病院に勤務する全職員を対象として面接を行い、その中で緊急事態宣言下の東京で感染者数の上昇が著しかった2020年4月20日から24日にアセスメントを受けた260名の医療スタッフのPHQ-9、GAD-7、PSS-10で評価したうつ状態・不安・ストレスと新しい評価尺度TMDPのスコアを解析しました。その結果、TMDPのスコアはPHQ-9、GAD-7、PSS-10の結果と相関しました。特にPHQ-9が10点以上、またはGAD-7が10点以上の場合、それぞれ一般的に中等症以上のうつ状態・不安症状と定義されますが、TMDPはこの中等症以上のうつ状態または不安症状を高い判別率で検出できました。

※PHQ-9
Patient Health Questionnaire-9の略。うつ状態の重症度をスクリーニングできる。
※GAD-7
Generalized Anxiety Disorder-7の略。不安症状の重症度のスクリーニングに使用される。
※PSS-10
The Perceived Stress Scaleの略。ストレスをどの程度感じているかのスクリーニングに使用される。