東京医科歯科大学 精神科 大学院医歯学総合研究科 精神行動医科学分野


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研究グループ

基盤系 臨床系 業績 院生募集


基盤系

(1)統合失調症の発達神経科学的研究:本研究では、統合失調症が思春期以降に発症すること、統合失調症様異常発現薬が小児期に精神病状態を誘発し難いこと、および動物でも統合失調症のモデルと考えられるこれら薬物による異常行動は一定の発達時期(臨界期)以降に出現することなどに着目し、統合失調症状の情報処理障害の原因分子は、統合失調症様異常発現薬に対する応答性を一定の生後発達期以後に獲得するという仮説を提唱している。


この新しい仮説にもとづいて、ラット大脳新皮質から、統合失調症様の陽性症状(幻覚・妄想など)を引き起こすmethamphetamine(MAP)に発達依存的応答を示す新規遺伝子mrt1, mrt2およびmrt3を、本症様の陰性・陽性双方の症状を惹起するphencyclidine (PCP)に同様の応答が見られるprt1, prt2, prt3およびprt4を検出し、遺伝子と産生蛋白の構造、局在、薬理学的反応などを解析している。また、動物の統合失調症モデルである行動異常の発現における役割を調べ、本症の治療薬開発の標的分子としての意義を検討している。さらに、ヒト相同遺伝子における多型の統合失調症と健常者との差異を現在解析している。また、これらの遺伝子の遺伝子操作動物(transgenic mouse, knockout mouse)を作製し現在行動異常や薬物応答性を調べている。本研究では、これまでにない視点から、薬物に発達依存性応答を示す遺伝子群を初めて見出した点が注目され、ゲノム上でも特異な構造をもつことが明らかになっている。


(2)内在性D-セリンの代謝・機能の分子機構と精神疾患における病態の解明:私たちは、(a)統合失調症様異常発現薬に拮抗し、(b)NMDA型グルタミン酸受容体と同様の分布を示す内在性アミノ酸であることを発見した、D-セリンの代謝や機能に関連する分子を検索し、最近、ラット大脳新皮質から、(i)D-セリンに選択邸応答を示し、D-セリンと酷似した脳内分布を示す新規遺伝子 dsr-2と、(ii)膜貫通構造をもちD-セリンの細胞への蓄積を減少させるdsm-1を同定した。また、脳内の細胞外液中へのD-セリン放出がグリア細胞の活動性低下により減少することを見出した。これらは、脳内D-セリンシグナルの調節に関与している可能性があり、統合失調症の病態や治療法開発への手がかりとしても重要な所見と考えられる。なお、dsr-2については、本症の治療薬開発の標的分子として特許を出願している。


(3)統合失調症におけるグルタミン酸作動性シナプスの機能異常の原因解明と治療法開発:統合失調症では難治性症状にNMDA受容体機能の低下が関与すると考えられる。そこで、本受容体の機能促進作用をもつD-サイクロセリンについて、臨床試験を行うとともに、脳内作用の基礎的検討をさらに進めている。


(4)ストレス性精神障害の発症・再発の分子機構に関する発達神経科学的研究:ストレス応答が発達に伴って著しく変化することに着目し、最初期遺伝子発現を指標として、不安惹起薬によるストレス負荷に対する脳内の情報処理が生後発達に従って変化することを実証した。また、脳において発達依存的ストレス応答を示す遺伝子群を新たに見出した。本研究は、発達に伴って成熟する新規のストレス応答システムとその分子カスケードの存在を示唆しており、(1)の研究とともに発達という新しい視点から、精神障害の病態解明や治療法開発に有用な手がかりをもたらしていると考えられる。

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臨床系

[D サイクロセリン臨床試験]※Dサイクロセリン臨床試験は終了しました。

[脳機能画像研究]
 当科では診断や治療の一環として幻覚・妄想状態、うつ状態、意識障害など精神症状の評価のために脳画像検査を積極的に施行しています。そこで得られた臨床データから幅広く精神疾患の病態研究を行っています。特に前駆期統合失調症、治療抵抗性の統合失調症やうつ病の患者様の脳SPECTや脳MRIを解析し、脳血流代謝や神経線維連絡と治療反応性や精神症状との関連を精力的に検討しています。


[精神病理研究]
 東京医科歯科大学精神科では、初代教授島崎敏樹先生の時代より精神病理学の伝統がみられ、生化学的研究、生理学的研究を繋ごうという理念のもとに精神病理研究が行われてきましたが、1999年に精神行動医科学教室が設立されて以来とくに生物学的精神医学との関係をテーマとしており、精神疾患に対して生物- 心理-社会-倫理的アプローチを行っています。  近年の研究テーマとしては、ボン大学基底症状評価尺度BSABSを用いた統合失調症と近縁疾患の精神症状評価研究を行い、生物学的マーカーやSPECTなどの機能画像との関係、さらに統合失調症の早期診断・早期発見への利用を試みてきました。
治療的アプローチとして従来の外来治療・入院治療などの枠組みに加えて、デイケアと連携し、グループサイコセラピーを積極的に導入して治療システムをつくり、様々な精神疾患の経過の諸相に応じた適切な治療を提供できるように努力しています。また、グループセラピーのスーパービジョンなど研修にも力を入れています。 H17年度より、厚生労働省精神・神経疾患研究委託費「境界性パーソナリテイ障害の治療ガイドラインの検証に関する研究」の分担研究「境界性パーソナリテイ障害治療におけるネットワーク構築に関する研究」行っています。研究会レベルでは、学外の講師による症例検討会、講演会を定期的に行っています。


[リエゾン研究]
身体科から当科への依頼は月平均40〜50件あり,年間500症例に上ります.精神科診断は,せん妄が最も多く,続いて適応障害,うつ病となっており,一般の総合病院と同様の傾向がありますが,基礎にある身体疾患は多岐にわたっています.また,当院では平成18年7月のERセンター開設により三次救急が開始になったことで,自殺関連行動で救急科に入院する患者が増えており,その診察依頼が多くなっています。
依頼に応じて,その日の担当者が診察し指示を出していますが,毎朝の救急病棟回診と毎週木曜日のカンファレンスにて対応を検討しています.この回診・カンファレンスを研修医や学生の研修の場としても活用しています。
研究は,これら臨床活動に基づくものとなっており,今まで行った主な研究として,@せん妄に対する非定型抗精神病薬の使用についての薬理学的な研究,A心臓血管外科の手術患者に関してのせん妄の画像研究,B自殺関連行動患者の研究などがあります。
これら臨床活動,臨床研究を行っていく上で重要なのが,身体科の医師,看護師,ケースワーカーとの連携です.必要に応じて身体科のカンファランスに参加したり,看護師の勉強会の講師を務めるといった活動も行っています.


[ECT(電気けいれん療法)研究]
当院では短パルス矩形波治療器サイマトロンによる電気けいれん療法を修正型にて気分障害の患者中心に行っています。年間20〜30名で、施行回数は延べ200回以上になります。治療の前後で、うつ病評価尺度による状態像の評価や心理士による各種認知機能検査を行い、パルス波治療器による治療の特徴などを研究しております。また、定期的にカンファランスを行い、施行ごとに治療効果を確認し、施行条件について検討しています。

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業績

2011年度以降発表したものを掲載

[原著]
  • 1.Sekiguchi T, Ishibashi S, Kubodera T, Fukabori J, Uezato A, Kanbayashi T, Takahashi T, Yokota T, Mizusawa H. Anhidrosis associated with hypothalamic lesions related to anti-aquaporin 4 autoantibody. J Neurol. 2011;258(12): 2293-2295
  • 2.Nishida M, Nariai T, Hiura M, Ishii K, Nishikawa T. Memory deficits due to brain injury: unique PET findings and dream alterations. BMJ Case Reports,doi:10.1136/bcr.09.2011.4845
  • Kurumaji A, Umino M, Nishikawa T. Effects of novelty stress on hippocampal gene expression,corticosterone and motor activity in mice. Neuroscience Research. 2011;71:161-167.
  • 3.Jitoku D, Hattori E, Iwayawa Y, Yamada K, Toyota T, Kikuchi M, Maekawa M, Nishikawa T, Yoshika T. Association Study of Nogo-related Genes with Schizophrenia in a Japanese Case-control Sample. Am J Med Genet B Neuropsychiatr Genet. 2011;156:581-592.
  • 4.Tanaka T, Kai N, Kobayashi K, Takano Y, Hironaka N. Up-regulation of dopamine D1 receptor in the hippocampus after establishment of conditioned place preference by cocaine. Neuropharmacology. 2011;61:842-848.
  • 5.Kuriyama K, Honma M, Shimazaki M, Horie M, Yoshiike T, Koyama S, Kim Y. An N-methyl-D-aspartate receptor agonist facilitates sleep-independent synaptic plasticity associated with working memory capacity enhancement. Scientific Reports 1,Epub 2011;1:127.
  • 6.本間元康, 栗山健一, 島崎みゆき, 吉池卓也, 小山さより, 木村美貴子, 金 吉晴. 睡眠が錯感覚統合学習に与える影響の予 備的研究. 精神保健研究. 2011;57: 75-80.
  • 7.吉池卓也, 竹内 崇, 佐々木健至, 石川洋世, 藤田宗久, 熱田英範, 正木秀和, 西多昌規, 行実知昭, 大島一成, 柏 淳, 山本直 樹, 車地曉生, 西川 徹. Aripiprazoleのせん妄に対する有用性. 精神医学. 2011;53: 543-549.

[総説]

  • 1.Nishikawa T. Analysis of free D-serine in mammals and its biological relevance. J Chromatogr B Analyt Technol Biomed Life Sci. 2011;879:3169-3183.
  • 2.西川 徹. 統合失調症の臨床と基礎の最前線. Medical Science Digest,2011; 37(10):14(402)-17(405).
  • 3.山本直樹, 西川 徹. グルタミン酸仮説に基づく新たな統合失調症治療薬. 精神科治療学 2011; 26(12):1501-1506.
  • 4.竹内 崇.薬物療法.看護技術 2011 4月臨時増刊号2011;47-51.
  • 5.竹内 崇.手術前の精神科介入は術後せん妄の発症予防になりうるか.総合病院精神医学 2010;22(4):366-372.
  • 6.竹内 崇.がん患者の抑うつと不安−他の疾患と比較したときの特徴と治療−.精神科治療学2011; 26(8):951-958.
  • 7.上里彰仁, 西川 徹. 統合失調症の病態メカニズム. ファルマシア 2011;47(9): 824-828.
  • 8.治徳大介, 吉川武男. NMDA受容体の遺伝子 ‐mTOR系‐. 分子精神医学2011;11:73-75.


[著書]

  • 1.西川 徹. 薬の作用メカニズムから見た統合失調症の病態.脳(ブレイン)バンク‐精神疾患の謎を解くために‐.加 藤忠史&ブレインバンク委員会(編集).東京, 光文社,2011;184-193.
  • 2.西川 徹. グルタミン酸,グルタミン酸仮説,興奮性アミノ酸 in 現代精神医学事典.加藤敏, 神庭重信, 中谷陽二, 武田 雅俊, 狩野力八郎, 市川宏伸(編).東京, 弘文堂, 2011;258-259, 331-332.
  • 3.車地曉生. 不眠. 緊急度重症度からみた症状別看護過程+病態関連図. 井上智子, 佐藤千史 監修. 東京,医学書院, 2011;368-374.
  • 4.山本直樹. イオンチャンネル,幻覚〔生物学〕,脆弱性‐ストレスモデル in 現代精神医学事典.加藤敏, 神庭重信, 中 谷陽二, 武田雅俊, 鹿島晴雄, 狩野力八郎, 市川宏伸(編).東京, 弘文堂, 2011;45, 283-284, 578-579.
  • 5.竹内 崇,西川 徹.食思(欲)不振.症候からたどる鑑別診断ロジカルシンキング.後藤英司,奈良信雄,藤代健 太郎 編集, 東京,MEDICAL VIEW, 2011; 219-222.
  • 6.西多昌規. 「昨日の疲れ」が抜けなくなったら読む本. 東京, 大和書房, 2011.
  • 7.西多昌規. 60歳からのボケない熟睡法. 東京, 青春出版社, 2011. ‐ 461 ‐ 脳行動病態学講座
  • 8.治徳大介, 吉川武男. 精神疾患の行動遺伝学. 行動遺伝学入門−動物とヒトの“こころ” の科学−. 小出剛, 山本大輔 (編).東京, 裳華房, 2011;183-195.
  • 9.治徳大介, 吉川武男. 自閉性障害・注意欠陥多動性障害のゲノムワイド関連研究(GWAS).医学のあゆみ 2011;239: 721-727.
  • 10.治徳大介, 西川 徹, 吉川武男. 統合失調症における遺伝と環境要因.精神科治療学2011;26:1355-1362.
  • 11.上里彰仁. I・4 生と死の狭間で.脳(ブレイン)バンク‐精神疾患の謎を解くために‐.加藤忠史&ブレインバン ク委員会(編集),東京, 光文社,2011; 37-42




院生募集

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