33.自律神経系

 骨格筋は、体性神経によって、支配、調節され、姿勢、運動が生じている。
これに対して、内臓、腺、血管などは、自律神経系(autonomic nervous system)
によって支配、調節されている。その結果、我々の内部環境(internal milileu)
を恒常に保ち、生命を維持する。
 自律神経系は、上述のように内臓、腺、血管など植物機能に関与しているので
植物神経系(vegetative nervous sysmte)ともいわれる。また読んで字の如く意
志に無関係に自律的に働くのが特徴である。そして、交感神経系(sympathetic 
nervous system)と副交感神経節(parasympathetic nervous system)に分けられる。

§1.自律神経ニュ−ロン
 自律神経ニュ−ロンは節前ニュ−ロンと節後ニュ−ロンからなる。
 節前ニュ−ロンは中枢内にある。それから節前線維(preganglionic fiber;B線
維、有髄)がでる。そして、自律神経節(autonomic ganglion)で節後ニュ−ロン
にシナプスを作る。節後ニュ−ロンの軸索(節後線維 postganglionic fiber;C
線維、無髄)が支配器官に達する。
 交感神経系では、節前ニュ−ロンは胸髄及び上部腰髄にある。節前線維は相当
した高さの脊髄前根を通る。そして交感神経節(sympathetic ganglion)は脊髄の
近く(幹神経節 in 交感神経幹)にある。(図34-1)。
 副交感神経系では、節前ニュ−ロンは中脳、延髄、仙髄にある。その線維は脳
神経及び仙髄前根を通る。ニュ−ロン交代する副交感神経節は支配器官の近傍
(前脊椎神経節)或は内部(器官内神経節)にある。

<図34−1>

§2.交感神経系の分布
 節前ニュ−ロンは胸髄(I−XII)、腰髄(I−III(IV))の側角にある。その
軸索は前根をへて交感神経幹(sympathetic trunk)に入る。交感神経幹は、人
で左右約22対の神経節が上下に鎖状に連なってできたものである。
 ここに入った軸索は適当な高さの神経節でニュ−ロンをかえ、節後ニューロン
となる。これは、交感神経幹から出た後、血管に沿って走ったり、体性神経と一
緒に走ったりして支配器官に達する。
 胸髄最上部よりでたものは上、中、下頚神経節、星状神経節でニュ−ロンをか
え、頭部の腺、血管、内臓に行く(頚部交感神経麻痺:Hornerの三微;眼球後
退、眼裂狭小、縮瞳)。
 胸髄上部より出たものは胸神経節でニュ−ロンをかえ胸部の内臓(心臓、冠状
動脈、気管及び気管支、その他血管など)へ行く。
 下部胸髄−腰髄より出たもののあるものは、幹神経節でニュ−ロンをかえ、皮
膚血管、汗腺立毛筋(収縮)に行く。
 下部胸髄から出た節前線維のあるものは、交感神経幹を素通りして脊椎側神経
節(paraavertebral ganglion)腹腔神経節、上腸間膜神経節など)などでニュ−
ロン交代を行う。そして節後ニュ−ロンは腹部内臓、骨盤内臓に分布する。腹部
内臓を支配する節前線維はまとまっているので内臓神経(大、小)となる。
 腰髄から出たものは下腸間膜動脈神経節でニュ−ロンを変え、骨盤内臓に行く。
(結腸、膀胱、等)

§3.副交感神経系の分布
 中脳では動眼神経に(掘忘じって走る。毛様体神経節でニュ−ロンをかえ、
短毛様体神経となり、瞳孔筋、網様体筋へ行く。
 延髄では察↓宗↓召亡泙泙譴襦4虧命牲弌吻察砲任詫禪蓋神経節でニュ−ロ
ンを変え、涙腺に行く。また、顎下神経節をへて顎下腺、舌咽神経(宗砲任麓
神経節を介して耳下腺に行く。迷走神経(勝砲任篭司部内臓に行く。
 仙髄では節前線維は適当な長さの前根をへて集まって骨盤神経(Nn.splanachnici 
pelvini)(勃起神経 N.erigentes ともいう)を作り骨盤内臓及び外陰部にむかう。

<図34−2>

§4.二重支配
 一般に内臓、腺、血管は交感神経副交感神経の二重支配(double innervation)
を受けているといわれてきたが、多くの例外がある。

  立毛筋|
  汗腺  |− 交感神経系のみ
  血管 |
  副腎髄質−−交感神経節前ニュ−ロンのみ

 交感神経と副交感神経とは多くの場合支配効果が反対である。これを拮抗支配
(antagonistic innervation)という。また交感神経も副交感神経も常時一定の緊
張 tonus が存在する。
 拮抗支配の現れ方は器官によって異なるが、一般に、動物個体の維持が危険に
さらされたとき(底温・出血・敵の攻撃)は交感神経が働く。その作用は全身の
器官に一斉にあらわれる。他方、個体が休息し、体内エネルギーの蓄積、散逸の
防止などが必要のときは副交感神経が働く。その働き方は特定の器官に限定して
いることが多い。
 個々の器官に対する支配効果は、
              交感神経     副交感神経
心臓−−−−−→促進−−−−−→ 抑制

血管
 皮 膚	 縮小               −
 腹部および     縮小               −
  骨盤内臓
 筋             縮小・拡張         −
 冠状動脈       拡張               −
 性 器          −              拡張
眼                                  
 網様体筋        −              収縮
 虹 彩 筋     散大筋収縮        括約筋収縮
 眼 瞼 筋       収縮               −
腺
 涙  腺         分泌?           分泌
 汗  腺         分泌              −
 唾 液 腺       分泌(少量濃厚) 分泌(大量稀薄)
 胃  腺        分泌              分泌
 膵  腺           −              分泌
平滑筋
 気 管 支        弛緩             収縮
 皮膚立毛筋      収縮              −
 胃小腸大腸    蠕動抑制        蠕動促進
 幽門回盲門
                  収縮              弛緩
 肛門の括約筋
    壁        弛緩              収縮
 膀 胱             
    括約筋    収縮              弛緩
 性  器         収縮               −

§5.自律神経節におけるシナプス伝達
 節前線維から節後ニュ−ロンへの興奮の伝達は他のシナプス伝達とほとんど
同じである。節前線維を電気刺激すると節後細胞に短潜時のEPSPが発生し、
EPSPが大きければ活動電位が発生する。EPSPは反復刺激後増強が見ら
れる。EPSPはOVに向かって変化し、Na+、K+の透過性増大によって発
生する。また神経除去性過敏が見られる。
 交感神経では集中が強い。このため交感神経系の反応は全身に拡がりやすい。
副交感神経では集中はあまり著明ではない。
 節前線維から分泌される伝達物質はアセチルコリンである。節後細胞のアセ
チルコリン受容体はニコチン様で、低濃度のニコチンの働きで軽い脱分極が節
後ニュ−ロンに生じ、シナプス伝達は促進される。(しかし、高濃度のニコチ
ンは過度の脱分極をおこし伝達を block する。)クラーレ、ヘキサメトニウム
は受容体を block し、シナプス伝達を阻害する。アセチルコリンエステラーゼ
の阻害剤(エゼリン等)は伝達を促進する。

§6.節後ニュ−ロンからの支配器官への伝達
 交感神経の節後線維末端から放出される伝達物質はノルエピネフリンである。
その受容体はα型とβ型がある。これは薬理的区分である。
 α型はダイベナミン(dibenamine)、フェノキシベンザミン(phenoxybenzamine)、
フェントラミン(phentolamine)で block される。β型は、プロプラノール
(propranolol)やDCI(dichloroisoproterenol)で block される。
 交感神経節後線維で汗腺を支配するものの伝達物質はアセチルコリンである。
 副交感神経の節後線維末端からの伝達物質はアセチルコリンである。この場合
アセチルコリンに対する受容体はムスカリン様であり、ムスカリンやピロカルピ
ン(pilocarpine)に応じる。アトロピンは伝達を阻害する。
 副腎髄質は交感神経節前線維をうけて、そのインパルスによってエピネフリン
とノルエピネフリンを血中に放出する。

§7.自律器官の脊髄・延髄反射による調節
 脳や脊髄への求心性インパルスに応じて自律神経に支配されている内臓、腺、
血管の活動が反射的に調節される。これを自律反射(autonomic reflex)という。
 ()排尿反射(micturition reflex)
		交感神経の役割弱い。外括約筋は随意筋である。
 ()排便反射(defecation reflex)
 ()性反射  (sexual reflex)
 ()圧受容器反射(baroreceptor reflex)

34.上位内臓調節

 脊髄における自律神経系の反射機構は、さらに上位の中枢から制御を受けてい
る。心臓血管の調節、呼吸調節、体温調節のための中枢は網様体と視床下部にあ
る。
 視床下部は脳底で第3脳室壁にあり、内臓調節中枢である。視床下部は、より
上位の中枢と考えられる辺縁系より線維を受け、脳幹や脊髄の自律中枢へインパ
ルスを送る。(逆のfeed back 回路もある)。視床下部はまた、脳の基底部です
ぐ下にある下垂体のホルモン分泌に影響をあたえる。下垂体は master endocrine 
gland と呼ばれ、他の内分泌腺の機構を調節している。したがって、水分、塩類
の平衡、食行動、成長、性活動、ストレスに対する反応は下垂体によって調節される。

§1.呼吸調節(自律神経ではない)
 吸気において、横隔膜、肋骨筋が収縮し、胸腔が増大する。胸腔内圧は陰圧と
なり、肺が受動的に拡がり空気が入る。呼気では、筋肉が弛緩し、肺は、自体の
弾性によって縮まり空気が吐き出される。
 このような呼吸運動を生じさせている領域は延髄にある。これは胸幹を順次尾
方へ向かって切断していったとき、延髄に達するまで呼吸運動が消失しないこと
からいわれるようになった。Pittsetal(1939)は電極を延髄各部に挿入し、刺激
した。そして、刺激中、吸息を続ける吸息領域(inspiratory region)を見いだす。
同時に、延髄頭背側に刺激中、吸息をやめ、呼息を持続する呼息領域(expiratory 
region)を見いだした。(図35-1)

<図35−1>
<図35−2>

 ユニットのレベルで観察すると吸息中枢ニュ−ロンの活動が増大すると呼息中
枢ニュ−ロンの活動は低下し、逆は逆となる。これによって、呼吸のリズムが生
じる。
 このリズムと呼吸パターンは種々は調節機構によって、制御されている。
 Herning Breuer 反射:吸息によって肺が膨らむと、肺の伸張受容器からのイン
パルスによって吸息中枢が抑制される。同時に呼息ニュ−ロンが興奮し、肺が過
大に膨張することを防止する。
 炭酸ガスによる調節:血液のCO2濃度が上昇すると、頚動脈小体及び大動脈小
体等の化学受容器を介して反射的に呼吸の数と深さをます。また、直接高CO2濃
度の血液が呼吸中枢にふれると同様なことが生じるという。
 延髄の呼吸性リズムの特徴は gasping(あえぎ)であり、これは正常呼吸
(eupnea)とちがう。橋の下2/3に持続性吸息中枢(apneutic enter)があり、吸
息中枢と呼息中枢に影響して持続性吸息(apneusis)を生ずる。橋のその上に呼吸
調節中枢(pneumotaxic center)があり、円滑で周期的な呼吸リズムを作ると考え
ている人もいる。
 更に、前方の構造から呼吸は制御を受ける。この機序によりセキ、クシャミ、
燕下時の呼吸停止や、発生時の微妙な息使いなどが生じる。また感情変化にとも
なった呼吸パターンの変動を引き起こす。また、熱あえぎ(panting)がある。
 視床下部をあたためるとここからの入力がまして panting が起こる。

§2.心臓血管調節
 人工呼吸下に延髄各部を電気刺激すると、頭側で外側部では血圧が上昇し
(昇圧領域、pressor region)、尾側内側は降圧する(降圧領域, depressor 
region)。(図53-3)。

<図35−3>

 脳の更に頭側にも血圧を変動させる領域がある。視床下部は延髄を介して影
響をあたえる。視床下部を刺激すると交感神経の活動が増大し、心拍数が増多し、
血圧が上昇する。また、視床下部内側部の限局した所を刺激すると、筋に行く血
管が拡張する。
 大脳辺縁系の内、帯状回を刺激すると血圧が上昇する。また前頭皮質を刺激し
ても血圧が上昇する。

§3.体温調節(temperature regulstion)
 正常な哺乳動物では、体温は一定に保たれている。これを恒温動物(homothermic 
animal)という。これに反して爬虫類などは変温動物(poikilothermic animal)で
体温は周囲の温度に左右される、低温度下では動きが鈍くなり、外的に襲われる
可能性が大となる。
 恒温動物では体温調節は熱の放散と産生という2つの機序でおこなわれる。特
に昼からの放散が著しい。不感蒸泄(14%)、対流(29%)、輻射(37%)、で80%、その
他呼吸器における不感蒸泄(11%) 、ふん、尿その他9%である。放散は皮膚血管拡
散、熱あえぎ(panting)、発汗、物質代謝抑制等によって促進される。
 体温調節機構がどこにあるかを脳の種々なレベルで切断することによって調べ
られた。視床下部より前方で脳を切断しても体温調節には影響がない。しかし視
床下部以下で破壊すると動物は変温性となる。このような動物は、周囲温度を変
化させると、核心温度(core temperature)が、それにつれて変化し、周囲温度を
もとにもどしてもなかなかもとにもどらない。
 視床下部の内、熱放散中枢(heat-loss center)は前部に、熱産生中枢(heat-
producing center)は後部にあるといわれている。視床下部の前交連の腹側を破
壊すると、高温下での体温調節が不能となり、体温が上昇し死ぬ。それで前部に
熱放散中枢があるという。また、乳頭体背外側を破壊すると高温時、低温時いず
れの環境でも正常の体温を保つことが不可能となる。これは後部にある熱産生の
中枢がおかされているのと同時に、前部にある熱放散中枢の下行路も侵されるた
めと考えられている。
 上述のことは熱による局所の刺激実験によってもわかる。熱で前視床下部を局
所刺激すると熱放散が促進され、体温が下がる。また、浅麻酔、周囲が高温下で、
後視床下部を冷やすとふえる(shivering) が生じる。

§4.視床下部と下垂体後葉
 視床下部と下垂体の間には密接な関連がある。視床下部の視索上核と室旁核に
は、大きな分泌細胞の形をした神経細胞がある。この神経細胞は軸索を下垂体後
葉に送る(視床下部−下垂体路)。そしてホルモンまたはその前駆物質を軸索流
の形でおくる。
 視索上核ではバソプレッシン(vasopressin)がつくられる。これは抗利尿ホル
モン(Antideuretic hormone,ADH)である。不足すると尿崩症(Diabetes 
insipidus)が生じる。室旁核ではオキシトシン(oxytocin)が作られ、子宮収縮
、射乳等の作用がある。

§5.視床下部と下垂体前葉
 視床下部から下垂体への物質の輸送機序は血管系によるものである。

<図35−4>
<図35−5>

 視床下部にある核の周囲の血管は門脈系となる。この門脈は下垂体前葉に行き、
この部分の細胞に血流を供給する。ホルモンは視床下部の神経細胞内で作られ、
この門脈によって運ばれ、下垂体前葉のホルモン分泌を調節する。下垂体前葉ホ
ルモンの分泌を促進するホルモンを放出因子(releasing factor)、抑制する
ホルモンを抑制因子(inhibiting factor)という。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
      名  称            略語      作  用
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1. growth hormone releasing hormone      GRH,SRH    成長ホルモン分泌促進作用
2. somatostatin, somatotropin-release 
                inhibiting hormone        SIH        成長ホルモン分泌抑制作用
3. corticotropin releasing hormone        CRH        ACTH分泌促進作用
4. thyrotropin releasing hormone          TRH        TSH分泌促進作用
5. luteinizing hormone releasing hormone  LH-RH,LRH  LH分泌促進作用
6. follicle-stimulating hormone 
   releasing hormone                      FSH-RH     FSH分泌促進作用
7. prolactin-releasing hormone            PRH        プロラクチン分泌促進作用
8. prolactin-rerease inhibiting hormone   PIH        プロラクチン分泌抑制作用
9. melanocyte stimulating hormone         MRH        MSH分泌促進作用
   releasing hormone,
   MSH-releasing hormone                  
10.melanocte stimulating hormone          MIH        MSH分泌抑制作用
   release inhibiting hormone, 
   MSH-release inhibiting hormone
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 ACTH,TSH,FSH,LH には放出ホルモンだけで抑制ホルモンがないのはこれらの分泌
 にフィードバック系が存在するためであり、フィードバック系のないGH,
 PRL,MSHには放出ホルモンと抑制ホルモンの2つが備わっている。

詳しくは「植物性機能の生理」で学ぶ。

§6.性行動の調節
 後述する。