22.体性表面感覚 II−痛覚及び温度(感)覚

 痛覚は組織が障害されそうになったり、障害されたとき生じる感覚である。 そして、反射的に痛覚の原因となる刺激を取り除くよう反応する。従って生きる ために重要な感覚である。このため痛覚の閾値は全ての人で略一定である。Hardy の痛覚計をつかって皮膚温を上昇させたとき、約45_C(43_C〜47_C)になると 痛覚を感じる。この温度はまた、組織が障害される温度に一致している。  また痛みは組織が障害されているときに生じ、障害された後はあまり痛みを感じ ない。このことも痛みが組織障害の警告という意味をもつことを示す。  痛みは普通3つに分類される。 (イ)刺痛(pricking pain)は鋭い痛みで、順応速く、局在は比較的はっきりして いる。 fast pain ともいう。(Aδ線維によって伝えられるという)。 (ロ)灼熱痛(burning pain)は鈍い痛みで、順応おそく、部位はっきりせず、 (麻酔で一番早くやられる。) slow pain ともいう。(C線維によって伝え られるという。) (ハ)疼痛(aching pain)は深部(somatic deep)及び内臓(visceral)の組織が 侵害、刺激されたとき生じる。持続的、部位不鮮明でにぶい痛み。

§1.痛みの一般的性質

(イ)痛みの閾値は、年齢、性、疲労、ムードで変わらない。(暗示によっても 閾値変化することもある。しかし、これがない条件では)鎮痛剤、麻酔薬、 アルコール等は痛みの閾値(熱で計った)をかえない。しかし痛みに対する 反応には影響する。 (ロ)痛みには adaptation なし。一次線維の放電頻度を低下することもない。 また、一次線維の放電が痛み感を引き起こす効力を低下することもない。 (ハ)spatial summation:痛みの閾に関しては、これはない。しかし、侵害刺激に 対する反射を指標にすると(防御反応)は大いに関係あり。 (ニ)tempoal summation:大いに関係、特にC fiber 。一回の刺激では痛みなし。 3/secで刺激すると痛みを感じる。 (ホ)痛みの閾値とmaximally painful sensation の間のrenge は小さい。2:1 (ヘ)痛みに伴って生じる現象:痛みによって、反射的に flexion muscle が収縮 する。(これが持続すると soreness 起こり、深部通が生じる。→後述) 自律性反射、自律性の血管、呼吸反射も生じる。特に非常な痛みのとき。

§2.痛みの末梢機構

(イ)痛みの受容器:あらゆる刺激はその強度が大であるとき、痛みをひきおこす。 従って、痛覚は本来の適当刺激ではなく、侵害受容性(nociceptive)感覚 という。しかし、受容器を考える。  それは痛覚を感じる部分は皮膚に点として分布している。痛点(pain point) という。触、圧点に比して密度大である。角膜、鼓膜で特に密である。  その部位を調べると自由神経終末(free nerve ending)が覆いから、 これが受容器と考える。普通自由神経終末は互いにからまり、神経による 支配領域も重複している。それで一本の神経幹の一部を傷つけても痛みは なくならない。受容域が広いといえる。 (ロ)痛みの二重性:痛みは fast pain と slow pain が存在することは前に述 べた。そして、それぞれの痛みはAδとC線維によって中枢に伝えられて いる。これは fast pain と slow pain の行動が色々な条件で異なる所から 主張されている。 ()圧迫血流遮断、局所酸素不足により、fasto pain → slow pain の順にな くなる。 ()局所麻酔により、slow pain → fast pain の順になくなる。()電気刺激 の閾値。抹消神経幹を露出して繰り返し刺激したとき、弱い刺激では pricking pain、強くすると burning pain が生じる。()Aδの受容野小。 pricking pain は比較的定位できる。それでAδが pricking pain を伝える と考えられている。 (ハ)痛みの受容機構:細胞が障害されると、タンパク質分解酵素(proteolytic eyme)を細胞間液へ放出する。この酵素はγ−グロブリンに作用してポリペ プチド(プロスタグランジン・ブラジキニン)をつくる。このポリペプチド が痛覚受容求心線維を興奮させる、と考えられている。 しかし、Aδ線維は直接、痛覚刺激によって刺激されるかも知れない。 <図23−1>

§3.痛みの中枢機序

 痛みはA線維とC線維によって伝えられる。そして、これらの線維は後根は 後角でシナプスをかえ、前側索系に入る。後索には入らない。  脊髄の一側前側索を切断すると、反対側の体幹の痛み感覚がなくなる。後索を 切断しても痛覚に影響しない。したがって、前側索が痛み(温度覚)に不可欠の ものである。 (イ)脊髄での痛覚機序 痛みに関係ある神経Aδ、C(細い線維)は後根の外側 から脊髄に入る。そして、大部分のリーサウエル索(Lissauer's tract)に 入り、それから海綿体膠様質(1,2層)に終わる。ここのニュ−ロンは 侵害性刺激に特異的に応じる(nociceptive specific neuron)。また、 4,5,6層にも終わる。個のニュ−ロンは侵害刺激の外、機械的刺激にも応じる。 (wide dynamic range neuron)。 (ロ)痛みの上行路 脊髄後角で中継された線維は反対側の前側索を上行する。前側索刺激で 半分の試行で痛みが生じる。 末梢の侵害刺激に応じる視床ニュ−ロンは後腹側核尾側部、視床後帯、 髄板内核などに見い出される。ヒトでも、後腹側核の尾側部を電気刺激する と反対側に投射する痛みが起こる。髄板内核電気刺激は痛みでなく独特の 不快感が生じる。   大脳皮質の侵害受容ニュ−ロンは、第二次感覚野(S供砲妨いだされ ている。また、S兇鮖彪磴垢襪板砲澆生じ、破壊するとなくなるという 人もいる。

§4.痛覚の抑制(調節)機構

 中脳の背側縫線核(dorsal raphe)や中心灰白質(central gray)を電気刺激 すると痛覚がおさえられ、動物では侵害防御反応がおさえられる。これは、板縫 線核からの下行線維が後角や三叉神経脊髄路核での侵害刺激の中枢ニュ−ロンを 抑制するために生じるといわれている。 また、エンドルフィンは脊髄後角2層または三叉神経核にある介在ニュ−ロンの 伝達物質として、痛覚抑制に関与するのかも知れない。モルフィンの作用も同様 なもかも知れない。

§5.かゆみ感(itch sensation)とくすぐったい感じ(ticfkle sensation)

 皮膚内に微小電極をさし、機械刺激、または電気刺激を与えると、皮膚に itch point が見いだされる。その点は、痛点と一致している。itch は皮膚及び粘膜 のみの感覚で深部組織にはない。  itch はC-fiber で伝えられる。itchは局所麻酔によって burning pain と 平行して、消失する。このように、itch は pain と平行して消失するので、痛み の別の形と考えられる。しかし、itch は pain と異なることも多い。それで、 itch は highly sensitive mechanoreceptive C fiber によって生じるという。  itch は機械刺激、化学刺激で生じる。その中でもヒスタミンはかゆみを生じる 物質である。また、それ以外に proteinase とか polypeptide も itch を生じる という。 くすぐったい感じは、動く機械刺激によって生じる itching component of sensation であるという。

§6.温度感覚

温度感覚は、温と冷という独立の2つの受容器系で伝えられている。 その証拠として、 (イ)温度を感じる部位は皮膚に点在。ある点は温のみ(温点 warm spot)、他は 冷のみ(冷点 cold spot)のみを感じる。 冷点の数は温点の数よりも多い。 (ロ)主観的に温と冷を感じる。又、口蓋、陰茎亀頭、角膜では冷覚のみを感じる。 また冷点のみが見いだされる。 (ハ)電気生理学的に温度の高いときに発火するユニット、及び温度が低いとき 発火するユニットが見いだされる。 (イ)温度刺激によって活動するユニット 皮膚に温度刺激を加えたとき、3つの神経線維(ユニット)が働く。 イ)冷線維、ロ)温線維、ハ)痛覚線維である。 <図23−2> イ)非常に冷たいと pain fiber のみ発火。 ロ)15_C程で pain fiber のインパルス減り、cold fiber が働き出す。 ハ)25_C以上で cold receptor が刺激されにくくなり、warm fiber が刺激 される。 ニ)33_C(32.5〜33.5_C)で cold fiber と warm fiber が同程度発火する。 このとき、温度刺激が皮膚に加えられても、冷覚も温覚も生じない。この 温度を無感温度(indifferent temperature)という。 ホ)45_C付近で warm recepter がだんだん刺激されなくなる。同時に cold fiber が再び刺激される。それで45_C以上の高温刺激で冷覚が引き起こ される。これを矛盾冷覚(paradoxical cold sensation)という。同時に 痛覚線維も発火するようになる。 (ロ)温度感の順応、対比、空間的加重 温度の差別は24_C−30_Cの範囲で最も良い。0.5_C−1_Cの差を弁別 できる。刺激温度が無関温度から著しく離れていない限り温度感覚の順応が生 じる。ユニットの発火で見ると、32_C→30_Cにしたとき、cold fiber の 放電頻度は4倍にもなるが、1分後一定値に落ち着く。  このように温度の transient の変化が生じたとき極端な温度差を感じる。 これは対比の現象に外ならぬ。  体表全体が温度差にさらされると0.01_Cの温度差を弁別できる。しかし、 1cm2 のところが感じるときは、1_Cの温度差しか弁別できない。すなわち、 面積効果がある。 (ハ)温度信号の神経伝搬 温度覚は pricking pain と平行して消長する。これから温度覚を伝える線維 はAδであろうと考えられている。終末は自由終末。 ◎ Cold fiber は皮膚の変形に敏感ではない。Aδ線維。1mm以下の直径の受容野 を持つ。 ◎ 大きな線維は、遅順応製の機械受容性の求心線維であることが多い。これらの 線維の多くは冷刺激で興奮する。しかし、cold fiber よりはるかに敏感では ない。Weber の錯覚。 ◎ Warm fiber は機械刺激に応じない。温刺激のみに応じる。Aδでも細い。 受容野は点状。温刺激に対しては transient response なし。