21.体性表面感覚機鬱ヽ受容性感覚

 体性感覚(somatic senses)とは、視、聴、味、嗅、平衡の諸感覚以外の体組織 (body tissue)に由来する感覚をいう。体性感覚は特殊感覚(special senses) に対するものである。 体性感覚は体表面の皮膚や粘膜に生じる表面感覚 (superficial sensation)と筋、腱筋膜、関節、靭帯などに生じる深部感覚(deep sensation)からなる。

§1.表面感覚の分類

 (イ)触感覚(tactile senses; touch-pressuosense);体組織の機械的変形に よって生じるもの(flutter-vibration)。  (ロ)痛覚(pain senses);組織を障害する要因によって引き起こされる感覚。  (ハ)温度受容性感覚(thermoreceptive senses);温覚(warm sense)と冷覚 (cold sense)がある。  (ニ)かゆみ感(itch sensation);くすぐったい感じ(tickle sensation)

§2.体性感覚と受容器の形態

 体性感覚の受容器は、特定感覚種に対して分化している。たとえば、温度を敏感 に感じる点が皮膚上にある。これを温点といい、そこに温覚の受容器があると考え られている。それを刺激して痛みを生じる熱エネルギーの1/1000で温感を生じる。  このように、皮膚表面の1つの種の刺激に対する天井の感覚閾値の低いところを その感覚種の感覚点(sensory spot)という。触点、冷点、温点、痛点がある。 全身の感覚点の数は、触点50万、冷点25万、温点3万、痛点200万である という。  皮膚内には組織的に構造を異にする受容器と思われる構造物がある。そこで、 「それぞれ特有な種に対して特有な受容器が存在するのではないか(Freyの特異 種説 specific modality theory)」という考えを生んだ。そこで、皮膚小部分の 感覚点を決め、それぞれの点に「しるし」をつけ、皮膚を切り取り組織学的に 感覚点と受容器と見られる構造物の対応が調べられた。しかし、感覚点の直下には 自由終末が見いだされることが多く、感覚の種の分化は機能的なものであろうと 言われていた。 しかし、近年動物を使った実験が行われ、ある程度の感覚種と 皮膚内の構造物の対応が主張されるようになった。 <図22−1> <図22−2> <図22−3> <図22−4a> <図22−4b>

§3.機械受容器の種類

 触−圧覚を伝える機械受容器は、反応の順応の仕方で3つに分けられる。 (イ)遅順応機械受容器(slow adapting mechoreceptor)Merkelの触盤(Merkel's disc)およびRuffini小体(Ruffini's ending)は、皮膚が急に変形すると 過渡的なインパルスに引き続いて低頻度のインパルスが持続する。皮膚の 機械的変化の速度と大きさを知らせると言われている。いずれもAβ線維に つながる。 前者は、自発性インパルスなく、敏感。後者は自発性インパルスあり、 不規則はインパルス発生、温度を下げるとインパルス発射増す(Weberの幻覚)。 (ロ)速度を検出する受容器   (I)毛包の受容器。毛の起始部を取り巻く。毛をまげる時のみインパルス発射する。 AβとAδにつながるものがある。 (II)Meisner小体(Meisner's corpuscle)Krauseの終球(Krause's end bulb) は同じ様なものと考えられている。いずれもAβ線維につながる。前者は 低頻度(5〜40Hz)の振動flutterによく応じる。 (ハ)過渡状態を検出する受容器  毛包受容器の一種、およびPacini小体(Pachini's corpsule)。刺激を球に 与えると一発のみインパルスを発生する。敏感、高頻度の振動(300〜400Hz) にもよく応じる。

§4.触−圧覚(touch-pressure sense)の性質

 細い剛毛の先端で皮膚を軽く刺激すると、触または圧覚を感じる。これは皮膚の 変形が刺激となって生じる。このとき、圧に対する閾値を測定する。神経支配の 密度の大である顔と手が最も刺激閾値が低い。局所による閾値の相違は刺激の probe で刺激された機械受容政受容器の数によると考えられる。  皮膚変形と刺激の強さの感覚が比例する。圧覚における差別の閾値は大。中程度 の強さのとき、10〜15%増さないと増大したとは感じない。  触−圧覚の重要な機能として、皮膚上に与えられた刺激の空間上の定位がある。 このため、二点弁別閾を調べたり、刺激した場所を再びさす正確さを調べる。正確 さは中等度の刺激のとき最大。そして、2点を同時ではなく、間隔をおいてだした 方が成績がよい。一般に受容器の密度大な所ほど、敏感。(手の先、口のまわり)

§5.機械受容性体性感覚の伝導路−視床まで

頭部以外の体性感覚の求心系は2つある。(図22-5) <図22−5> (1)毛帯系(lemniscal system) 1つはこの系。主として有髄で太い(4-6μ以上)後根線維として脊髄に入る。 1つの脊髄節に属する後根線維が分布する皮膚領域を、その脊髄節の皮膚分節 (dermatome)という。人では丁度よつんばいになったとき、それと直角な帯状に 分布している。 脊髄に入った線維は同側の後柱を上行する。そして後索核にその約20%が終わる。 後索核では、外側が体幹の上部、内側が下部を再現する。 さらに後索核の外側 には三叉神経脊髄路核があり、頭部の体性感覚を再現している。また、後索核で は後側に皮膚の触圧覚に応じるものが多く、前側に来るにしたがって、深部皮膚 及び関節運動に関係のあるものが多くなる。 後索核でシナプスをかえたニュ−ロンは交叉して反対側にでて上行する。これ が内側毛帯(medial lemniscus)である。そして視床の後外側復側核(nucleus ventralis posteriolateralis; VPL)に投射する。ここから中心後回(post central gyrus)にある第一次体性感覚領に投射する。 この系は ()体の部位を正確に再現している。 ()第一次線維の刺激種の特異性を保っている。 ()反応が速く確実であるという特徴を持っている。 従って機械受容性感覚の詳細な知覚及び弁別に関わっていると考えられている。 後索が傷害されると、接触刺激が定位できない。たとえば、さわられたのは、 わかるが何処がさわられたか判断できない。また、後述するように、関節の位置 ・運動感覚も侵され、曲げているか、伸ばしているかわからなくなる。そのため、  両足を閉じて起立すると身体動揺し、両眼を閉じると一層それが甚だしくなる。  (Rombergの症候;脊髄性の運動失調)。 <図22−6> <図22−7> (2)脊髄視床路;前側索系 粗大な感覚(その他、後述の温度覚、痛覚)を脊髄から視床へ伝える伝導路で ある。この系は細い後根系(有髄、無髄、及び太い線維の側枝;406μ以下)で ある。これらは後角の介在ニュ−ロンに終わる。(終始する灰白質の層は中枢 神経の概要を参照)。これらのニュ−ロンは脊髄反射の中枢でもある。一方この 介在ニュ−ロンからこの系が生じる。これは交叉した後反対側の前及び側柱を 上行する。この系はさらに2つに分けられる。 (イ)新脊髄視床系(前脊髄視床路):これは脊髄、延髄、中脳を上行し、視床の後 核群(PO)及び一部は後復側核の尾側部に終わる。後者のニュ−ロンは、ある 種類の topographical organization がある。POに行くものには、あまりな いという。POから第二次体性感覚領に投射があるという。 (ロ)旧脊髄視床系(外側脊髄視床路)及び脊髄延髄系:前者は視床の髄板内核である Nucl.centralis lateralis に、後者は中脳網様体を介して髄板内核に終わる。 いずれも、上行賦活系の drive を行う。    これらの系は、 (1)体を正確に再現しない。 (2)刺激種内の集中がある。 (3)シナプスの drive 不確実である。 これらのことから、機械受容刺激を介した脳の一般的な意識水準を高めること に役立っていると考えられている。 この2つの系が平衡し、相協力して働いて体知覚を形作っていると考えられて いる。 (3)三叉神経視床路 顔面や口腔からの体性感覚は三叉神経視床路を介して伝えられる。この経路は 体幹のそれと対応している。(中枢神経の概要参照)    三叉神経主知覚核 <−−−> 後索核    三叉神経吻側亜核   で、この核からの線維は、交叉し、反対側の視床の後内腹側核(nucleus ventralis posteromedialis VPM)へ投射する。次に第一次体性感覚野へ行く。    三叉神経尾亜核 <−−−> 脊髄の後角(前側索系) <図22−8> <図22−9>

§6.視床における再現

 VPM、VPLを含む後腹側核(nucleus ventralis posterior;VP)には体の 再現がある。PO等にはあまりない。

§7.体性感覚領(somatic sensory areas )

 大脳皮質の中心後回(Brodmannの1,2,3野)が体幹の体性感覚を再現している。 内側が下、外側が頭部である。そして、hair cell, pressure cell deep cell, joint cell 等の感覚の種類に特異的に反応する細胞が存在する。  これらの刺激を与えると、インパルス数/秒で放電していた細胞の発火が100/sec にも達する。また、これらの細胞は中心−周辺型の構成された受容野をもっている。 さらに特異的な異に、体性感覚領においては、皮質表面に垂直な軸に沿って細胞は 同じ modalilty をもっているという。たとえば垂直に記録用微小電極をさしたとき、 その track ではすべて hair cell であり、他の track では joint cell である という。視覚領ですでに述べたように、機能的 column が存在する。  体性感覚領では視覚系と同様3b→1→2野に進につれて、より特徴的な刺激のみ に応じるようになる。  更に5領野に行くと、一次体性感覚野と同様に関節及び皮膚性ニュ−ロンがあり、 これら個々のニュ−ロンが集中し、より特定の刺激のみに反応するようになる。 ここでも、刺激パターンの特徴抽出が生じていると考えられている。  5野は7野に投射している。7野は自己以外の空間(extrapersonal space)の 定位に重要な役割を演じている。 projection jeurons hand manipulation neurons   5,7野 fixation neurons <図22−10> <図22−11>