11.中枢神経の概要

§1.中枢神経系の研究方法

神経系の研究とは、神経系の構造と、その構造によって成立する機能を調べる こと、にほかならない。ここでもまず形態的な研究が先行し、それに機能的な 研究が続く過程をとった。 神経組織の形態的研究は、Golgiによる銀染色法の発見によって進んだ。 この銀染色はCajal(1852-1934)によって改良され、次々に種々の神経に適用 された。その結果、神経系の構造が明らかになった。 彼の書いた「神経系の 組織学( Histologie du systeme nerveau)」は今なお古典として読まれている。 渡銀法は更に改良され、変性した(二次変性;Waller変性)軸索ないし終末部 のみ渡銀する Nauta 法が生まれて、神経組織学はまた一段と進歩した。 更にnauta 法の変法である Fink-Heimer 法は終末ボタンの変性を電子顕微鏡で 研究できるようにした。 現在では、神経軸索流を利用した Horse-Radish Per- oxidase 法、標識したアミノ酸法が全盛を極めている。 一方、機能的な研究は、破壊実験、刺激実験によって始められた。前者は神経系の ある部分を実験的に摘出除去し、それによって起きる機能障害及び欠除を観察する ことによって、摘除した部分の機能を決定しようとする。たとえば、Kluver-Bucy は、サルの両側頭葉を破壊することによって、視覚失認、口唇傾向等が生じる ことから、側頭葉が、視覚性認識、記憶、情動と関連があることを見い出した。 これはそのよい例である。 刺激実験では、種々の刺激を神経、感覚器、中枢に与え、効果器における筋収縮 などの反応を見る。それから刺激場の機能を類推する。刺激実験で歴史的に有名 なのは、Fritsch と Hitzig による大脳皮質運動領の刺激実験である。この実験 によって、大脳は全体として漠然と働くのではなく、機能局在があることが分かり、 その後の生理学発展の基礎を作った。 刺激による反応を見ることによって脳機能を類推する一種の暗箱解析は、 Sherrington によって脊髄に適応され、脊髄反射における脊髄の中枢の機序の 解明に多大の成果をあげた。更に、刺激0反応による解析の考えは、 Pavlov, Watson によって大脳皮質に適用された。 しかし、このような間接的な調べ型では飽き足らなくなり、次第に脳内の各々の 神経構造の働きを電気活動を指標として、直接とらえ、その反応様式からそれらの 機能を知ろうとする方向に進んでいった。 このような脳機能研究に画期的な進歩をもたらしたのは微小電極法であった。 この方法によって、われわれは脳の構成単位である個々のニュ−ロンの活動を とらえることが可能となった。 しかし、この方法にも欠点があった。この方法は数十ミクロン以下という小さな 神経細胞から電気活動をとらえるため、脳も含めた動物の体を動かないように処置 することが必要であった。すなわち、動物は筋弛緩剤によって不動化された上、 麻酔した状態下で実験が行われた。ところが、このような状態下では、高次の 脳構造は機能していないことが多い。従って、この方法によって成果をあげたのは、 主として比較的低次の神経機構に関するものであった。 このような神経生理学のゆきづまりを打破し、より高次の脳機能を解明するには 当然、動物の高次中枢が機能している時の活動を調べればよい。高次中枢が機能 しているのは、動物が無麻酔、無拘束下に行動しているときである。したがって、 高次神経機構の研究は行動時の高次神経機構の働きを調べることによって達成 される。そして動物が行動しているときに、単一ニュ−ロンの活動を記録する 方法が開発されてきた。 以上のような種々の方法によって、低次から、高次までの中枢神経系の機能が 解明されつつある。 神経系、感覚器系は全体として働いており、その部分部分の過程は全体の一部 としてみるとき始めて意味をもつ。例えば、感覚といっても単に感覚器における 刺激受容のみを述べたところで、我々の知覚現象全体はわからない。それと関連 する中枢神経系を余すところなく統一的に述べなければならない。 ところが、このように神経系を縦のつながりをもった一連の系として取り扱うと、 小脳が述べられたり、また大脳が出てきたりして、解剖学的知識のない人を とまどわせる。そこでまず、脳・脊髄の構造及び機能を順を追ってひとあたり 述べることとする。

§2.中枢神経系の分類

中枢神経系は、脊髄と脳から成り立っている。脳は次表のように分類される。 また、外套大脳核と小脳を除いた残りの脳全部を脳幹と呼ぶ。終脳と間脳を合わ せて大脳と呼ぶ。また、中枢神経における方向、位置の呼び方を図11-2に示す。 <図11−1> <図11−2>

§3.脊髄 spinal cord

脊髄は脊柱管内にある細長い円柱。頚部と腰部に膨大(enlargement)がある。 脊髄の下方は段々細くなって腰椎で終わる。それ以下では、脊髄を出入りする 神経の束、馬尾となる。腰椎穿刺(lumber puncture)は、この部位すなわち、 第3と第4腰椎間で行われる。(腸骨稜cristailiaca の頂上の高さが 第4腰椎棘突起に相当)。 <図11−3> <図11−4> 脊髄から図のように31対の脊髄神経が出入りする。これは、8、12、5、 5、1対の頚、胸、腰、仙骨、尾骨神経からなる。それぞれの脊髄神経が出入り する高さに応じて、31の脊髄節(spinal segment)に分ける。脊髄の水平断を見 ると、H型の灰白質とそれをとりまく白質からなる。 灰白質は細胞の集まりで、上位中枢と中継核、脊髄反射の中枢をなしている。 白質は上位中枢及び末梢と結ぶ伝導路である。脊髄の中央には中心管がある。 <図11−5> <図11−6> 脊髄灰白質 その水平面は後角(dorsal horn)、中間質(帯)(intermediate zone)、前角(anterior horn)に分かれる。細胞構築的には10層に分ける(Rexed)。 後角(1〜6層)は後根線維のおもな終止部である。背側から白質である 後外側束(Lissauer束)に続き、 海綿帯 (Substantia spongiosa ; 1 層 ) 膠様質 (Substantia geltinosa ; 2$3層) 膠角固有核 (4$5$6層) からなる。 C8-L3では、後角固有核の内側にクラーク背核〔Nucleus dosalis(clarks); 胸髄核〕が存在する。これは後脊髄小脳路の起始核である。 中間質には、介在ニュ−ロンが多数存在する。また腰髄の外側部には、 前脊髄小脳路の起始細胞が存在する。 C8−L2及びS2−Coには側角があり、それぞれ交感神経、骨盤内臓の 副交感神経の起始細胞が存在する。 前角(8、9、7層の一部)には運動神経細胞が存在する。 これらはBell-magendieの法則に従う。 <図11−7a> <図11−7b> 脊髄白質 上位中枢と連絡するための伝導路である。後索、側索を区別する。 伝導路の主なるものは次のように分類される。 1.脊髄上行路 a)大脳皮質に入力するもの イ)後索(dorsal tract):弁別的触圧覚、位置感覚・自己受容性感覚を伝える もの。下半身のものは内側を上行する(薄束)。上半身のものは外側を 上行する(梨状束)。 ロ)前側索系(anterolateral pathway) i)新脊髄視床路(前脊髄視床路;ventral spinothalamic tract); 後角固有核から始まり交叉して反対側を上行する。粗大触圧覚を伝え る。(痛覚、温度覚の一部) ii)旧脊髄視床路(外側脊髄視床路;lateral spinothalamic tract 及び 脊髄延髄(網様)路);膠様質から始まり、白前交連で交叉して 上行する。痛覚・温度覚(おおまかな触圧覚の一部)を伝える といわれているがむしろ意識水準を高めるのに役立っている。 b)小脳に入力するもの 触圧覚、位置感覚を伝える経路である。 イ)脊髄オリーブ路:後角の内側から生じ交叉して上行。下オリーブ核か ら下小脳脚を介して小脳へ入る。(登上線維) ロ)前脊髄小脳路(VSCT);中間質から生じ、交叉した後上行する。上小脳 脚から小脳にはいる。(苔状線維) ハ)後脊髄小脳路 (DSCT);クラーク核から生じ、同側性に上行し、下小 脳脚から小脳にはいる。(苔状線維) c)その他 2.脊髄下行路 a)大脳皮質運動領から下行するもの。 イ)錐体路:大部分は延髄錐体で交叉する外側皮質脊髄路、一部は非交差 で胸髄中途でなくなる前皮質脊髄路となる。精密な随意運動を司る。 直接運動細胞に終わる経路と、中間質外側部に終わる経路がある。前 者は霊長類のみに発達している。 ロ)赤核脊髄路:大細胞性赤核から始まり、交叉して側索を下行、中間質 外側部に終わる。ヒトでは痕跡的である。 b)それ以外の経路 イ)前庭脊髄路:前庭核から同側前側索を下行して、下肢伸筋に興奮を伝 える。 ロ)網様脊髄路:前索、側索を下行する経路で、姿勢、運動の調節をしてい る系。ガンマ系に属する(後述)。また、痛覚の脊髄での伝導を調節し ている(I、II,港悄 3.その他の経路脊髄の固有束等がある。 脊髄半切実験(Brown-Sequard の症候群) 脊髄の半側のみを切るか、 それと同等の障害を受けると次のような症状が生じる。 〔半切側〕 (1)随意運動麻痺 (2)位置感の消失 (3)触圧覚の低下 (4)血管運動麻痺(チアノーゼ:皮膚温低下) 〔反対側〕 (1)触圧覚の低下 (2)痛覚、温度覚の消失 <図11−8>

§4.延髄および橋 Mdeulla oblongata, Pons

脊髄の上方には延髄及び橋が存在する。そのうちには、種々な核及び白質が ある。機能として、 (1)植物機能の中枢 a)呼吸器に関するもの イ)呼吸中枢 ロ)呼吸調節中枢 ハ)くさめ、せきに関する中枢 b)循環器に関するもの イ)心臓中枢 ロ)血管運動中枢 c)消化器に関するもの イ)えん下、嘔吐、そしゃく ロ)唾液分泌 (2)眼の保護作用 イ)閉眼反射の中枢 ロ)涙液分泌 (3)中継核、連絡路 イ)感覚の中継核、中継路;味覚、体性感覚、聴覚、平衡覚、頚動脈洞、 頚動脈小体からの経路、その他の胸腹部内臓からの知覚の連絡路 ロ)運動の中継核・中継路 ハ)小脳と大脳・脊髄との連絡路 <図11−9> <図11−10> 延髄と橋の主要部分 (1)後索核(dorsal column nuclei):内側にあり、下半身からの体制感覚を 中継する薄束核(gracil nucleus)と外側にあり、上半身のそれを中継 するり状束核がある。 (2)錐体(pyramis):延髄腹側にあり、皮質脊髄路の通路。 (3)脳神経核 a)舌下神経核(将供法Ю紊留親阿鮖覆 b)舌咽(宗法¬汰(将機砲粒坊 イ)自律機能を司るものとして i)迷走神経背側核(勝法Ф司部内臓へ行く。心臓(抑制)中枢。 消化器へ行く。 ii)その上方に唾液核($察砲存在する。 耳下腺、顎下腺、舌下腺に行く。 ロ)頚部の内外の筋へ行くもの i)疑核(nucl.ambiguus;迷走神経腹側運動核 $$将機飽頭・咽頭筋 に行く。嚥下反射、嘔吐、くさめ、せきと関係。 ii)それより下に副神経脊髄核 胸鎖乳突筋、僧帽筋へ行く。 ハ)知覚性の核として i)孤束核 (mucleus tractus soliltarii, ,,勝 内臓感覚をつかさどる。 ・口腔、咽頭の粘膜 , ・胸腹部内臓 ・頚動脈小体及び洞 ・味覚 , c)蝸牛神経核 上オリーブ核(台形体背側核);(次 d)前提神経核群(次法┥紂内、外、下の4つの核に分ける。以下の4つの 経路がある。 イ)前庭神経→上核(Bechtevew)、内側核(Schwalbe)及び下核→下小脳脚→ 片葉小節葉(前庭小脳、)室頂核に行く。 ロ)前庭神経→外側核(Deiters)→同側の前庭脊髄路を下行する。 ↑ 小 脳→↑ ハ)前庭神経→全部の前庭神経核→両側内側縦束(medial longitudial tract)を 上行→眼筋核に入る。 ニ)前庭神経枝→大脳皮質へ <図11−11> e)三叉神経核(V) イ)大脳皮質運動領から運動核に入力し、咀しゃく筋に行く。 ロ)頭部及び顔面領域の体性知覚 機肪翡章核:そしゃく筋からの自己受容性感覚、位置感 供房臙粒亞法 頭部及び顔面の 脊髄路核のsubnucleus oralis 触圧覚 (半月神経節) 掘 subnucleus interpolaris(→小脳) 検棒埒駭核のsubnucleus caudalis 温度覚、痛覚 気論埒饋牲仞瓠↓兇聾綺核、犬論埒餮絣法柄安索系)に相当する中継 核である。 f)顔面神経核(察法大脳皮質運動領、大細胞性赤核から線維を受け、 顔面の表情筋に行く。そのうち眼輪筋は、閉眼反射(blink reflex)に 関係する。 g)外転神経核(此乏梓禧擇粒安δ抄擇帽圓。眼筋核の項で述べる。 <図11−12> (4)下オリーブ核群(inferior olive) a)脊髄オリーブ路及び大脳皮質運動領から入力し、 →下小脳脚を介して→登上線維となる。 b)その他、線条体 赤核、網様体等から入力する。 (5)橋核(pontene nuclei) 大脳皮質連合領から入力し →中小脳脚を介して苔状線維となる。 (6)網様体;白紙つ及び各位外に網様体が広く存在する。 a)内臓中枢:呼吸中枢 心臓中枢 血管運動中枢 b)姿勢運動の調節を司るγ−系 c)網様抑制系・賦活系 (7)青斑核(locus caeruleus)、縫線核(raphe system) (睡眠の項で述べる。) <図11−13> <図11−14>

§5.中 脳 Midbrain

中脳は背側から中脳蓋(tectum)、中脳被蓋(tegmentum)、大脳脚(cruscerebri)に 分かれる。 <図11−15> 1.中脳蓋 tectum mesencephali (イ)上丘(superior colliculus):対象に眼を向ける;視覚性の注意を司る。 7層に大別。 浅白質層(帯層)superficial white(zonal layer) 浅灰白質層 superficial gray 視神経層 optic layer 中間灰白質層 intermediate gray 中間白質層 intermediate white 深灰白質層 deep gray 深白質層 deep white [上丘への入力] a)視索からの投射がある。 視神経層(3層)の一部をつくる。浅灰白層(2層)で終わる。 b)大脳皮質から投射がある。 後頭葉から浅灰白層(2層)。前頭葉から中間・深層 c)その他の感覚器から深層(5層以下)に投射。 [上丘からの出力] d)浅層から視床後核、 中間・深層から背内側核縁(MDrim)、視床網様核に投射 e)中間・深層から中脳網様体を介して眼筋核に投射。 f)中間・深層から視蓋脊髄路 オリーブ、網様体内側を下降して頚髄に終わる。 (ロ)下丘(inferior colliculus):聴覚伝導路の中継核。 外側毛帯→下丘→内側膝状体に行く。 (ハ)視蓋前部:瞳孔反射の中継核;→動眼神経副核(EW核)へ 2.中脳被蓋 tegmentum mesencephali (イ)眼筋核 a)動眼神経核(掘房膤法内側縦束から投射をうける。また、まわりの網様体 から投射。大部分は同側性である。 内側部−上直筋 背側部−下直筋 腹側部−内側直筋 中間部−下斜筋 <図11−16> <図11−17> b)副核(Edinger-Westphal nucleus) 上方にあり同側性、瞳孔反射の中枢 c)滑車神経核(此法┝膤砲糧方延長部にある。上斜筋を支配 (ロ)赤核(nucleus ruber) a)大脳皮質運動領及び小脳の中位核から(上小脳脚をへて)大細胞部へ 投射する。 〔→赤核脊髄路となる。〕 b)小脳(の外側核から上小脳脚を介して)から小細胞部に投射。視床の 外側腹側核(VL)を介して大脳脂質運動領へ投射。 (ハ)網様体(formatio reticularis) a)大脳、間脳、小脳から入力する。γ系となり下行する。姿勢制御の調節 に重要な役割をする。また下行して脊髄のレベルで痛覚伝導の調節をする。 b)知覚路から側枝が、また大脳からも入力し、網様賦活系となって上行する。 (ニ)黒質(subustantia nigra) 淡蒼球から入力し、線条体へかえす。 (ホ) 伝導路 a)外側毛帯−聴覚 b)内側毛帯、そのまわり−体性感覚、味覚 c)その他の下行路 3.大脳脚 crus cerebre 錐体路である。

§6.小脳 Cerebellum

運動の(開始)調節、誤り補正を行っている器官である。橋、第4脳室後方 にある。手拳大、はまぐり形をしている。 小脳は、小脳皮質と髄質にわかれる。小脳室は、中央の虫部(vermis)と 小脳半球に分かれる。半球は更に中間部と外側部に分かれる。髄質内には 小脳核がある。 <図11−18> <図11−19> (1)小脳皮質 系統発生学的に3つに分かれる。 a)原始小脳(archicerebellum)(また前庭小脳)(vestibular cerbellum) :一番古い。片葉小節葉(flocculonodular lobe)が属する。 b)古小脳(paleocerebellum)(または脊髄小脳)(spinal cerebellum) :虫部、中間部がこれに属す。 c)新小脳(neocerebellum) :大脳皮質と結合の強い所。後葉及び全容側部が、これに属する。 (2)小脳核 3つある。 a) 内側核(medial nucleus)または室頂核(nucleus fastigii) 虫部から線維を受ける。 b)中位核(intermedial nucleus)または栓状核(nucleus embaliformis)と球状核 (nuclleus globosus) 中間部から線維を受ける。 c)外側核(lateral nucleus)または歯状核(nucleus dentatus) 半球外側部から線維を受ける。 <図11−20> (3)小脳への入力 2つの系がある。 a)登上線維系(climbing fiber system) 直接プルキニエ(Purkinje)細胞にシナプスを作る。また、小脳核に行く。 b)苔状線維系(mossy fiber system) 一方は小脳核へ行き 他方は、顆粒細胞(franular cell) →平行線維(parallel fiber) →多数の Purkinje 細胞にシナプスを作る。 平行線維はバスケット細胞(basket cell)を介して、Purkinje 細胞に抑制のシナプスを作る。 これらの2系が3つの小脳脚を介して入力する。 a)上小脳脚; 結合腕 前脊髄小脳路が通る。 b)中小脳脚; 橋腕 橋核を介して入力する線維が通る。 c)下小脳脚 i)下オリーブ核からの線維が通る。 ii)後脊髄小脳路(DSCT) iii)前庭核からの入力が通る。 機能的にみれば a)運動領その他の大脳皮質 b)筋紡錘、皮質 c)前庭器官 d)視覚 等の受容器からの入力がある。 (4)小脳からの出力 出力は小脳核を介して生じる。小脳核にPurkinjeニュ−ロンは抑制性の シナプスを作る。 a)前庭小脳 前庭核に行く。 b)内側核(室頂核) 虫部から線維を受け、下小脳脚を通って延髄網様体に行く。 c)中位核(球状核、栓状核) 皮質中間部から線維を受け、上小脳脚を介して大細胞性関核およびVA, VLへ行く。 d)外側核(歯状核) 小脳皮質外側部から線維を受け、上小脳脚を介してVA,VLに行く。 従って小脳からの影響は脊髄運動ニュ−ロンに対して、前庭脊髄路、 網様脊髄路、赤核脊髄路、及び大脳皮質運動領を介して生じる。

§7.間脳 Diencephalon

間脳は視床と視床下部に分かれる。 視 床 Thalamus 視床は、大脳皮質と皮質下、及び皮質同士を結ぶ中継核である。 特殊核と非特殊核とに分かれる。 <図11−21> <図11−22> (1)特殊系 a)前核(A; nuclei anteriores) 乳頭体から線維を受け、帯状回に線維を送る。 (Papezの回路の一部を作る。) b)内側核(nucleus medialis)=背内側核(MD; nucleus medialis dorsalis) 前頭前野、扁桃核、視床下部、上丘から線維を受け、前頭前野に線維を送る。 c)外側核群 イ)外側核 背外側核(LD; nucleus lateralis dorsalis)と 後外側核(LP; nucleus lateralis posterior)からなる。 ロ)腹側核 i)後腹側核(VP;nucleus ventralis posterior) 後外側腹側(VPL;ventraris posterolateralis) 下半身の体性感覚を大脳皮質体性感覚領に中継する。 後内側腹側核(VPM;ventralis posteromedialis) 上半身のそれを中継する。 に分ける。 ii)外側腹側核(VL; ventralis latelaris) 小脳及び淡蒼球から線維を受け、運動領に線維を送る。 iii)前腹側核(VA; ventralis anterior) 小脳から運動前野に行く線維を中継する。 d)後核群 イ)視床枕(Pulvinar):後頭(I)、側頭(L)、頭頂葉(M)の連合核 ロ)外側膝状体(GL; lateral geniculate):視覚の中継核 ハ)内側膝状体(GM; medial geniculate):聴覚の中継核 (2)非特殊核(網様体核) 中心核、髄板があるが、これは網様体の頭側部と見ることが出来る。 視床下部 Hypothalamus 視床下部は a)下垂体ホルモンの分泌の統御 b)中脳の内臓中枢と、より上位の辺縁系の中間に位する統合中枢である。 i)摂水、摂食体温維持というような自律反応の行動表現に関与する。 外側−摂食中枢(feeding center) 内側−満腹中枢(satiety center) 前側−熱放散中枢(heat-lose center) 後側−熱産生中枢(neat-production & conservation center) 室傍核近辺−飲水中枢(drinking center) ii) 情動に関与する。(sham rage;見かけ怒り) <図11−23> <図11−24> 視床下部は、前、内、外、後部に分けられる。 (1)前部は漏斗核(nucleus infundibularis;下垂体前葉に行く下垂体門脈系 起始部に線維を送る)、室傍核(nucleusparaventricularis;下垂体後葉 へ投射する神経分泌核)、視索上核(nucl. supraopticus)を含む。 (2)後部は、乳頭体を含む。この核は乳頭体−視床前核−帯状回−海馬−脳弓 −乳頭体、というPapezの回路の一部をなす。 (3)中隔(終板傍回、嗅結節)等は、視床下部外側部を貫ぬいている内側前脳束 (medial forebrain bundle)を介して、中脳被蓋と結ばれる。この束の 走行中、視床下部の核と線維の授受を行う。

§8.終脳 Telencethalon

終脳は、外套、髄質及びその中にある大脳核に分けられる。 外套(pallium)=大脳皮質(cerebrral cortex) 大脳皮質は大きく、前頭葉、 頭頂葉、側頭葉、後頭葉に分けられる。中心溝、外側溝はこれらの境界となる。 <図11−25> <図11−26> <図11−27> 大脳皮質は、構造を基礎として、発生学的に次のように分類される。 同種皮質=新皮質 異型皮質 = 感覚野、運動野 同型皮質 = 連合野 異種皮質 中間皮質(mesocortex) ≒辺縁系 6層を前部は区別できず。 原皮質(archicortex) :海馬、歯状回 古皮質(paleocortex) :梨状葉、嗅球 大脳皮質のうち、系統発生学的に比較的新しい皮質(neocortex)は、発生の 途中、必ず一度、6層全層存在する時期があり、構造的に同種皮質(isocortex)と 呼ばれている。同種皮質における6層とは以下を言う。 第1層 表在層(zonal layer)或は分子層(molecular layer) 第2層 外顆粒層(external granular layer) 第3層 外錐体細胞層(external pyramidal layer) 第4層 内顆粒層(internal granular layer) 第5層 内錐体細胞層(internal pyramidal layer) 第6層 多形細胞層(multiform layer) この同種皮質(すなわち新皮質)のうち、運動野は完成時に第4層である顆粒 細胞層が薄く、第5層の錐体細胞層が特に発達している。一方、感覚野では、 皮質への投射線維が主として終わる第4層、すなわち顆粒細胞層が特によく 発達している。このように、新皮質中、感覚野及び運動野は、皮質各層間に 不平等が存在する所から、構造的に異型皮質(heterotypic cortex)と呼ばれ ている。 これに反し、1〜6層のどの層もほぼ平等に存在する皮質がある。この皮質は、 構造的には同型皮質と呼ぶ。 大脳皮質に入力する線維は、特殊投射線維(specific projection fiber)と 非特殊投射線維に分けられる。前者は、第4層に多数枝分かれして終わる。後者は 全ての層(1層を除く)に終わる。 大脳皮質を構成するものは、錐体細胞(pyramidal cell)と短軸索細胞 (short axon cell)である。 3層と5層には錐体細胞がたくさんあり、これらは出力細胞である。錐体細胞 には一本の尖頭樹状突起(apical dendrites)があり、第1層まで伸びている。 また、短い多数の基底樹状突起(basal dendrites) がある。 線維投射は5層の錐体細胞に由来し、交連線維(commisural fiber)及び連合線維 (association fiber)は3層錐体細胞に由来する。 短軸索細胞は、入力と出力の間の介在ニュ−ロンであり、2層と4層に多い。 <図11−28> 大脳皮質の分類(Brodmannの分類) 細胞構築学的及び生理学的に、大脳皮質は 次のように分類される。 4野:運動領 6野:運動前野 1,2,3野:体性感覚野 17野:視覚領(有線野) 41野:聴覚野 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 5,7野:体性感覚連合野 42野:聴覚連合野 18,19,20,21野:視覚連合野 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 22野の尾側部(Wernikeの領野) 40野:縁上回 39野:角回 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 8野:前頭眼野;刺激の選択(attention) 9,10,(46)野:前頭前野;行動の選択(set) 11,12野 眼窩回;動機づけ(motivation) 44,45野:運動性言語領(Broca'sの領野) 辺縁葉 limbic lobe 脳梁と脳幹吻側をとりかこんでいる大脳皮質を辺縁葉という。 終脳傍回:25野 後眼窩回: 〃 帯状回 :24野(32野) :顆粒皮質 23野(31野) :無顆粒皮質 帯状回狭:26野(30野) 海馬傍回:36野 歯状回 :28野 等である。 <図11−29> <図11−30> <図11−31> 海馬傍回の内側は、まくれ込んで海馬となる。海場は線維性の脳弓となる。 その前方には中隔野(septial area;ヒトではほぼ終板傍回)がある。中隔などに 送られる。CA1部からの線維は脳弓に入るものと、海馬支脚にはいるものとがある。 海馬支脚は視床下部などにつながっている。 辺縁葉は視床下部を貫く内側前脳束等によって視床下部、中脳運動核、自律神経核、 網様体と相互に連絡している。 これらの辺縁葉は、嗅覚、情動、本能、記憶と密接な関係がある。 <図11−32> <図11−33a> <図11−33b> 大脳核 cerebral nuclei 大脳核は、基底核(basal ganglia)と扁桃核 (amygdala)に分ける。前者は姿勢、運動の反射的調節を司り、後者は扁縁系に属する。 基底核(basal ganglia) 基底核は、 ┌─ 尾状核(caudate) ┌─(新)線状体(striatum)─┤ │ └─ 被殻(putamen)─┐ │ ├─ レンズ核 └─ 淡蒼球(pallidum) ─┘ に分けられる。基底核に、黒質、Luys体(視床下核)、網様体、赤核を含めること もある。 基底核は、鳥類(爬虫類)では、最高位の中枢である。大脳皮質はあまり発達して いない。哺乳類では大脳皮質が現れ、図11−32の様な線維結合をしている。 線状体は大脳皮質4,6,8,9領野及びこれらの核周囲の網様体構造から線維を 受ける。淡蒼球は線状体から線維を受ける。淡蒼球から視床の腹側外側核(VL)、 視床下核(Luys体)、黒質、赤核、中脳網様体に線維を送る。 <図11−34> 扁桃核(amygdala) 辺縁葉、視床下部と密接な関係にある核である。情動行動、 食欲、性欲等をcontrolする側頭葉内に存在する核である。入力は、 i)下側頭回等周囲の辺縁皮質、中隔野(後眼窩回、終板傍回) ii)嗅球(外側嗅条) から受ける。出力は、 i)分界条を経て視床下部へ行く。 ii)腹側遠心系として a)中隔、視床下部へ。(内側前脳束を経る) b)視床背内側核(MD)に行く (下視床脚を経て行き、MDから眼窩回への投射) c)尾状核へ行く。 側頭葉破壊によって生じる Kluver-Bucy症候群のうち、情動自律神経系の行動的 障害(多食症、口唇傾向、性行動の亢進、おとなしくなる等)は、扁桃核が破壊 されたとき生じる。(視覚失認は側頭葉皮質破壊のみで生じるという。) 扁桃核は大別すると前部が逃避行動に、後部が攻撃行動に、また内側部が性行動 及び摂食行動に促進的に、外側部が抑制的に働く。