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小脳の縦縞区画構造を可視化した遺伝子改変マウスでの機能解析
 アルドラーゼは,解糖系の1段階に関わる酵素で,A,B,Cのアイソザイムが存在し,それぞれ,筋と脳,肝臓,脳に優位に発現する。このうち,アルドラーゼCは,他の幾つかの分子とともに,小脳のプルキンエ細胞の一部に強く発現する。小脳皮質は,分子の発現パタンの違うプルキンエ細胞集団の配列によって,40以上の縦縞区画に分かれている。アルドラーゼC発現パタンは小脳の基本的な構造を反映すると考えられるので,この縦縞構造を可視化して解剖学的・生理学的解析を進めるため,アルドラーゼC遺伝子に蛍光タンパクVenusの遺伝子が挿入されたノックインマウス(Aldoc-Venus)を作製した。
 Aldoc-Venusマウスでは,アルドラーゼCの発現パタンに完全に一致して,VenusがアルドラーゼCと置き換わるようにして発現している小脳のどの領域でも,アルドラーゼCの発現パタンを見ると,その発現パタンに対応する投射パタンがすでに登上線維とプルキンエ細胞軸索においてほぼ明らかにされているため,トレーサー注入を行わずともその領域の線維連絡を知ることができる。Aldoc-Venusマウスを用いると,免疫染色の必要がないため,連続切片のすべてを容易に回収してアルドラーゼC発現を蛍光標識として得ることができる。そのため,切片の蛍光写真から各小葉の分子層部分を抜き出して整列させるという精密な解析方法により,発現の強弱の連続性を小脳全体で従来3よりも正確に解析することができた。
 Aldoc-Venusマウスでは,麻酔下に開頭して露出した小脳においても蛍光によって明白な縦縞構造が認められる。これを利用して,in vivo 標本で小脳の縦縞構造を同定した上での生理学的・解剖学的実験が可能である。われわれは現在,特定の縦縞に蛍光標識の逆向性トレーサーを注入することにより,縦縞特異的な苔状線維の投射パタンを解析している。
Aldoc-Venusマウス灌流固定標本(Whole mount; 切片)
Aldoc-Venusマウス 麻酔下開頭後の小脳表面(明視野;落射蛍光)
担当教員:杉原 [詳細]
発表論文

Nguyen-Minh VT, Tran-Anh K, Luo Y, Sugihara I (2019) Electrophysiological excitability and parallel fiber synaptic properties of zebrin-positive and -negative Purkinje cells in lobule VIII of the mouse cerebellar slice. Front Cell Neurosci 12:513. doi: 10.3389/fncel.2018.00513. DOWNLOAD

Fujita H, Aoki H, Ajioka I, Yamazaki M , Abe M , Oh-Nishi A, Sakimura K, Sugihara I (2014)  Detailed expression pattern of aldolase C (Aldoc)  in the cerebellum, retina and other areas of the CNS studied in Aldoc-Venus knock-in mice, PLoS ONE, 9(1):e86679. DOWNLOAD.

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