各班紹介腫瘍 of 医科歯科大学 整形外科ホームページ

腫瘍班 (阿江 啓介 小柳 広高)

★ 診療内容

腫瘍班は、現在毎週木曜日に骨軟部腫瘍専門外来をおいて整形外科のなかでは比較的扱いにくい腫瘍の診療を行っています。四肢・体幹部の腫瘤に対して腫瘍性疾患の有無の鑑別に始まり、骨腫瘍の画像診断やコンサルトを含めた外来レベルでの一般的な腫瘍診に加えて、入院診療部門では日本のトップレベルの治療内容を提供できる施設となっています。悪性腫瘍の不安を抱えて来院した患者さんに対して一般の病院でありがちな長期の検査待ちを解消し、迅速な対応で診断と治療が早期に開始できるシステムを確立しました。CT, MRI検査は当日または翌日に、PET検査も1週以内で撮影可能です。また、骨軟部腫瘍の診療において最大の問題点である病理診断に関して、関東の骨軟部腫瘍病理専門医にコンサルトできるシステムが完備しています。さらに、悪性腫瘍が持つ暗いイメージを払拭し、QOLやamenityの高さを加味した都心部ならではのハイセンスな治療も当グループがめざす診療の特徴の一つとなっています。今後発展すると思われる遺伝子診断などにも対応できるような体制も整いつつあります。

最先端医療 

まず、患肢温存手術をする可能性を追求することをモットーにしています。各種画像、術前治療効果、手術標本と治療成績を詳細に解析して得られた知見をもとに、個々の症例で手術侵襲を最小限にして患肢機能を温存しつつ、再発のない安全な切除縁を設定し、精度の高い手術を行っています。近年in situ preparation法を応用して腫瘍に近接した骨、血管、神経などの重要組織をより安全に温存しながら切除縁を縮小することが可能となってきました。さらに腫瘍切除後の組織機能欠損に対しては人工物をなるべく使用せず自家組織による恒久的な再建を目指し、吸収性の人工骨を開発し応用するほか、大学の特性を生かし、脊椎、手、股関節、膝グループと緊密な連携をとりながら最先端の治療技術による機能的再建にも配慮していることが特徴です。化学療法プロトコールの確定していない肉腫に対しては、免疫化学療法を開始し、一部の肉腫では良好な治療成績が上がっています。また終末期における緩和医療にも積極的に取り組んでいます

★ 研究の内容

基礎的研究

1. ヒト肉腫細胞のcell lineの確立

肉腫は癌に比べて発生頻度が非常に低いため、民間の研究機関では商業ベースに載らないとの理由で基礎的研究にも自ずと限界がありました。このような非採算部門において、我々が少しでも多くのcell lineを確立することで、肉腫の診断・治療に結びつく研究が活性化されるよう、環境づくりを行っています。特に軟部肉腫のcell line確立に力を注いでおり、これまでにsmall round cell sarcomaやclear cell sarcomaの継代に取り組んできました。

2. 骨欠損に対する再生医工学の応用
骨腫瘍切除後に発生する巨大な骨欠損に対して、人工物による補填や体の他の部位からの骨移植を行わずに骨欠損の再建が可能となれば、患者の体に優しい手術が可能となります。そこで現在我々は骨再生の基礎的研究に取り組んでおり、腫瘍切除後の再建外科への応用を模索中です。

3. 新しい癌抑制遺伝子の発見と機能解析

Rhabdoid tumor で認められるIni 1という新しい癌抑制遺伝子を発見し、その機能を解析して報告しました。発病のメカニズムの不明な肉腫の治療のために必要な遺伝子レベルでの研究も着々と進んでいます

臨床的研究  

1. 骨軟部肉腫手術における術後患肢機能の向上

骨軟部肉腫の患肢温存手術において主要な血管・神経にパスツール法処理を施すことで、根治性を損なうことなく縮小手術が可能となり、術後患肢機能が向上することが期待できるようになりました。すでに基礎実験を終了し、現在臨床例を蓄積中で、良好な経過を確認しています。

2. 緩和ケアへの取り組み

大学病院では敬遠されがちな緩和ケアにも積極的に取り組んでいます。進行期の癌患者さんの疼痛や苦痛の軽減を主とした目的に、新たな可能性の追求をしています。もちろん、当院の緩和ケア外来の先生方や他科との連携が必須です。