各班紹介脊椎 of 医科歯科大学 整形外科ホームページ

脊椎

診療内容

 脊椎班は、毎週金曜日の午後に専門外来を行うだけでなく、午前中の一般外来においてもほぼ毎日脊椎班スタッフが出ており、脊椎疾患患者の診療を行っています。脊椎疾患の特定の疾患に偏ることなく、また手術療法のみに固執することなく、病状の説明や考えられるすべての治療法の長所短所を患者に十分に説明し、患者自身の治療法選択を十分に取り入れていく様にしています。

最先端医療 

脊椎疾患の手術法は前方法と後方法に大別されますが、脊椎のどの部位でもこれら全ての手術法を行うことができます。特に、難病に指定されている頚椎後縦靭帯骨化症に対する広範囲前方除圧術は、当科で開発された極めて理にかなった手術法ですが、難易度の高い手術であるためこの術式を選択している施設は多くはありません。また、脊髄モニタリングに関しては世界のトップレベルにあり、モニタリングが必要とされる疾患、例えば側彎症・脊髄腫瘍・脊髄係留症候群などの手術は、脊髄モニタリングを駆使することにより、極めて安全に手術が行うことができます。

研究の内容

基礎研究

1. 骨再生方法の開発

整形外科の手術では、患者さん自身の骨盤から骨を採取し、必要な部分へ移植するという、自家骨移植が多く行われています。しかし、神経血管損傷や感染、採骨部に残存する採骨部痛などの合併症が多く、自家骨移植に代わる方法の開発が望まれています。我々は、骨盤の骨を採らずに、針を骨盤に刺すだけで採取出来る骨髄液から骨を作る間葉系細胞を培養して増やし、人工骨に組み合わせて移植して、大きな骨組織を再生させる技術の開発を行っています。また、高性能で画期的な人工骨の開発を行っており、この人工骨は既に臨床治験の段階まで進んでいます。近い将来、国内だけでなく、海外でも広くつかわれるようになると考えております。

2.脊髄再生のメカニズム

近年、脊髄損傷に対する基礎研究が発展し、脊髄自身が持つ神経幹細胞の存在や軸索再生阻害メカニズムなど多くの再生因子と再生阻害因子が報告されています。我々は1997年から分子生物学的手法や再生神経回路網の解析によって脊髄再生のメカニズムに関する研究を行ってきました。現在は、動物を用いた脊髄損傷モデルを作製して組織学的に脊髄の形態学的回復の評価を行い、損傷環境に不十分な神経栄養因子の補充、失われた組織に対する神経幹細胞の移植等の機能回復実験を行っています。

3. 脊髄の電気生理学

 当初は、手術中の脊髄機能モニタリングや術前の脊髄機能診断法として、従来の脊髄誘発電位を用い解析してきました。近年、運動神経系を反映する電位導出のために経頭蓋的電気または磁気刺激法を用い、より正確でかつ侵襲性の少ない新たな手法を開発してきました。1997年、新規に生体磁気記録装置が設置され、動物実験で体表面から詳細な脊髄障害部位診断が可能となりました。現在、身体に非侵襲的な神経機能診断法としてヒト脊髄誘発磁界を計測し研究を行っています。

4. 椎間板へルニアの発生・自然退縮機序の解明

 MRIを用いた臨床研究によって椎間板ヘルニアが自然消退することが分かってきました。我々は、分子生物学的手法を用いて硬膜外腔に脱出したヘルニア組織の周辺に血管新生が促進され、またマクロファージを中心とした炎症巣が形成されることで、TNF-αなどの走化性サイトカインや生体内にあるタンパク分解酵素であるマトリックスメタロプロテアーゼ:MMP(なかでもMMP‐3やMMP‐7)を介してヘルニアの溶解・吸収が起きていることを解明しました。現在、自然退縮機序のより下流にあるMMPを利用した新たな椎間板ヘルニア治療法の開発中です。

臨床研究  

1. 頚髄症の治療成績と術式選択

頚髄症の手術には前方法と後方法がありますが、これらの長期成績はいまだ明らかではなく、術式選択や術式の改善の余地は残されていると考えられます。それぞれの術式の長期成績や成績不良例を詳細に検討することのみならず、従来は重視されなかった患者のアメニティの観点も検討することにより、術式選択の問題点を明らかにしています。

2. 脊柱靭帯骨化症

脊椎を連結する後縦靭帯が骨化し、頚椎や胸椎レベルで脊髄を圧迫することにより脊髄症状などを呈するのが、我が国でも特定疾患に指定されている脊柱靭帯骨化症です。当教室も、厚労科研費 難治性疾患克服研究事業「脊柱靭帯骨化症に関する調査研究班」の一員として臨床研究に参加しています。とくに、頚椎後縦靭帯骨化症に対する骨化前方浮上術と椎弓形成術の手術選択や手術中の脊髄機能モニタリングについての検討を行っています。また、胸椎部に発生した骨化症は特に手術的治療が困難であり、手術法の進歩した脊椎外科領域の中でも最も治療に難渋する疾患の一つでありますので、我々もその研究班の一員として他施設との共同研究により、本症に対する最適な手術治療法を明らかにすべく検討を行っています。

3.腰部脊柱管狭窄症の手術選択

手術適応のある腰部脊柱管狭窄症に対して、脊柱筋に侵襲の少ない片側進入両側除圧術や、筋肉温存型腰椎椎弓間除圧術を行っており、手術方法の選択およびそれぞれの問題点について検討しています。また、腰椎すべり症や脊椎変形の強い症例には、脊椎固定術あるいは脊椎制動術を適宜併用し、除圧単独群と比較して検討を行っています。

4.椎間板ヘルニアの予後の予想

頚椎・腰椎の椎間板ヘルニアは脊椎疾患の代表的な疾患ですが、多くの患者は保存的治療だけで症状が寛解します。その理由として、ヘルニア腫瘤が血管新生やMMPなどのタンパク分解酵素などの働きにより自然消退する事があることや、ヘルニアの脱出形態によってヘルニア腫瘤の退縮傾向が著しく異なることを、分子生物学的研究やMRIを用いての臨床研究にて報告してきました。ただし、全ての椎間板ヘルニア例で腫瘤が退縮するわけではないため、正確な椎間板ヘルニアの予後予測は十分とは言えず、造影剤を用いたMRIを経時的に撮像することにより、より詳細な検討を重ねています。

5.骨粗鬆症

厚労科研費 長寿科学総合研究事業「骨粗鬆症椎体骨折に対する低侵襲治療法の開発」研究班の一員として臨床研究に参加しています。当院では、腰痛の遺残する骨粗鬆症性椎体骨折後偽関節に対して、CPC(リン酸カルシウム骨セメント)を用いた椎体形成術を実施しています。

6. 脊髄神経疾患に対する高気圧酸素療法

高気圧酸素治療(HBO)は、酸素をたくさん身体内に送り込むことによって、酸素不足の組織やダメージを受けている病巣を回復させる治療です。HBOの効果は、大気圧よりも高い気圧環境下で純酸素または高濃度酸素を吸入することで、高い酸素分圧の動脈血が低酸素障害に陥った細胞・組織に酸素を供給して修復・再生したり、浮腫を軽減、炎症を沈静化させたりするもので、一般的に一酸化炭素中毒、ガス壊疽、減圧症、難治性潰瘍、骨髄炎、重度の急性脊髄障害などの治療に用いられています。腰部脊柱管狭窄症や頚髄症といった脊髄神経疾患の病態も圧迫因子による虚血ですから、HBOの作用機序からもその効果が期待され、保存的治療の一つとして用いています。