下垂体腫瘍Pituitary adenoma

下垂体腫瘍(かすいたいしゅよう)の治療は、脳外科のみならず糖尿病・内分泌・代謝内科、耳鼻咽喉科、眼科などが連携して患者様の病状を適切に評価して、最適の治療法をご提案させて頂いております。
また手術治療が必要な場合には、エキスパートによる経鼻内視鏡手術や開頭手術を行っています。

田中 洋次 (脳神経外科外来:毎週木曜日)

下垂体腫瘍とは

下垂体は脳の最深部にある直径1cmほどの小さな器官で、さまざまなホルモンを分泌して体を正常な状態に保つ働きを担っています。この部分にできる腫瘍としては下垂体腺腫、ラトケ嚢胞、頭蓋咽頭腫、髄膜種などがあり、中でも下垂体腺腫は頻度が高い(脳腫瘍全体の約18%を占める)腫瘍です。

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症状

下垂体に腫瘍ができると、正常の下垂体が圧迫されて機能が低下したり、また近傍を走行している視神経を圧迫して視野異常が出現することがあります。また下垂体腺腫のうちホルモンを分泌するタイプのものは、ある特定のホルモンが無秩序に分泌されて体の中で過剰な状態となり、さまざまな症状が出現します。たとえば成長ホルモンを分泌するタイプの下垂体腺腫であれば先端肥大症や巨人症が出現し、乳汁分泌ホルモン(プロラクチン)が過剰となれば男性でも乳汁が分泌されたり、女性では無月経になったりします。

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治療方針

下垂体腫瘍の多くは良性腫瘍であり、何も症状がなければ定期的な経過観察のみで治療が必要の無いケースも多数あります。一方で上記のように、圧迫による症状やホルモン分泌異常がある時は治療が必要となります。また発見された時は手術治療の適応にはならず、経過観察中に増大して手術が必要になるケースもあります。

下垂体腺腫のMRI所見(図)

図
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治療の特色

下垂体腫瘍で重要なことは、患者様にとってすぐに治療が必要なのかそれとも経過を見るだけでよいのか、治療が必要であればどのような治療が最も適しているのかを正しく判断する事です。

当院では脳外科のみならず糖尿病・内分泌・代謝内科、耳鼻咽喉科、眼科などが連携して患者様の病状を適切に評価して、最適の治療法をご提案させて頂いております。また手術治療が必要な場合には、エキスパートによる経鼻内視鏡手術や開頭手術を行っています。

特に経鼻手術は従来の顕微鏡手術と最新の神経内視鏡技術の利点を併せた低侵襲・先端治療を行っています。また手術後の評価やケアも患者様にとっては非常に大切な問題で、我々にとって重要な課題です。この点についても各科で連携して手術後患者様のフォローにあたり、少しでも苦痛や不快を和らげて、早期に元の生活に戻れるよう工夫しています。

MRI、CTなどの画像を合成して立体モデルを作り、安全な手術に役立てています。

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診断と治療の流れについて

当院における一般的な診断、治療過程についてご説明します。

下垂体腫瘍が疑われた場合は、現状を把握するために画像検査、視野検査、下垂体機能検査などが必要です。このうち下垂体機能検査は糖尿病・内分泌・代謝内科で入院(約1週間)して行います。

手術治療が必要な場合は引き続き脳外科に転科してそのまま手術を受けていただく場合と、後日改めて脳外科に入院していただく場合があります(患者様のご都合や症状の緊急度によって相談いたします)。

手術後は約1週間脳外科に入院していただき、その後は糖尿病・内分泌・代謝内科に再び移って術後の下垂体機能検査を受けていただきます(約1週間)。したがってトータルの入院期間はおおよそ3週間です。

当院における手術患者診療の流れ(図)

図

平成24年4月から当院では神経難病先端治療センターが開設されました。間脳下垂体腫瘍も対象疾患の一つであり、上記のようにチームで総合的な治療を行っています。下垂体腫瘍について当院での治療をご希望の方や詳しくお話しをお聞きになりたい方など、どうぞお気軽にご来院下さい。なお、初回受診の方は紹介状や画像などがありましたらお持ち下さい。

神経難病先端治療センターのご案内はこちらをご覧ください → 神経難病先端治療センターホームページ

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