寄生虫感染症情報5月号






 
!!!!! 寄生虫疾患流行速報(2001年5月)!!!!!

「成田空港検疫所・OUTBREAKメーリングリスト」より引用

成田空港検疫所ではFederation of American Scientistの新興感染症情報・ProMedの 翻訳を行っています。 追加の解説や誤訳などありましたら info-nrt@forth.go.jp までお願いします。過去の記事は http://www.forth.go.jp/ のProMED情報を, outbreak メーリングリストについては http://square.umin.ac.jp/outbreak/ ,原文 は http://www.promedmail.org/ をご参照ください。


 
1.クリプトスポリデイウム症ー英国(北アイルランド)続報

●05-03(0504-0100)
北アイルランドでクリプトスポリディウム症流行。
 4月第1週中、北アイルランドの東部保健社会サービス局に12例のクリプトスポリディ ウム症患者が報告され、翌週にはさらに21例の報告があった。4月としては異例の患 者数増加となった。患者の大部分が都市部に居住し、海外渡航歴のある人、動物との 接触のあった人は希であった。

 診断確定例の住所による上水道域調査で、Dunore上水 道域のみ感染率が2.8/1万人とその他の上水道域の0.14/1万人に比べ高値を示した。 同時期にクリプトスポリディウム症患者の報告数が増加した隣接する北部局による同 様の調査でも、Dunore上水道域のみ住民での感染率が高値を示していた。

 4月25日ま でに110例の診断確定患者がDunore上水道域で発生した。Dunore上水道では緩徐砂濾 過法を用いており、約10万人に上水を供給している。これまでにはこの水道が原因の クリプトスポリディウム症の発生は報告されたことはなかった。水質検査では2月 末、3月中旬、3月下旬にクリプトスポリディウムの嚢胞体の密度増加が記録されてい た。感染から発症までの潜伏期の平均は7日間であるので、この記録は患者の発生増 加時期と関連するものと考えられる。詳細な調査の結果、浄水場での給水管の損傷か ら未処理水が上水中に混ざっていたことが判明した。 4月22日に施設の改修が終了した。

2.クリプトスポリデイウム症ーカナダ(Saskatchewan)

●05-04(0507-0010)
飲料水中にクリプトスポリディウムが確認された。
 North Battlefordの浄水場で_Cryptosporidium parvum_が確認され、100人以上が感 染、発症している。North BattlefordのSaskatchewan町西中央部で3人が死亡し、 100人以上が発病した原因は汚染された飲料水と考えられている。

 4月上旬と5月上旬に発生した、汚染水が原因と考えられている死亡患者2人は Battlefords Union病院での入院患者、死亡患者の疫学的見直し調査中に発見され た。当局者は、最近の患者は便検体から原虫が確認されたと述べている。死亡した 3人ともが免疫系に異常があった。感染原因の原虫は市浄水場の上水濾過システムの 欠陥部から侵入したと考えられている。

 Battlefords 保健区の医官は26例のクリプトスポリディウム症患者の診断が確定して おり、さらに100例以上の胃腸炎疑い患者が発生していると述べている。

3.マラリア治療薬ータンザニア

●05-13(0515-0010)
タンザニアでマラリア治療薬としてクロロキンを放棄。
5月12日タンザニア保健省は、従来マラリア治療に一般的に用いてきたクロロキンを 今年8月以降新薬に代えると決定したことを発表した。専門家は新たに使用する薬と して、一般名Sulfadoxine pyrimethamine (SP), 商品名はFalcidin, Fansidar,Laridox, Malostat, Orodar, Metakelfinlをあげている。同省内のマラリ ア対策計画責任者は新薬の導入は政府のマラリア治療にクロロキンを適応しないとい う計画にそったものであると説明している。同氏は各地で行われたクロロキンの効果 に関する研究では、耐性マラリアの率が1960年には5%であったものが1990年には 52%に増加したことが判明していると述べている。WHOでは薬剤に対する耐性率が 25%に達した際には使用薬剤を変更すべきとしている。小児・妊産婦での感染の危険 性が高まっている。SPによる治療対象年齢は2ヶ月齢からである。

[Moderator 注: タンザニアはケニアに次いで2番目にマラリア治療薬としてクロロキ ンを放棄した国となった。この地域ではSP(Fansidar)に対する耐性率も増加している ため、その次ぎの治療薬に関心が高まっている。特に、MalawiでのFansidarに対する 耐性率は25%に近づいている。アフリカで薬剤耐性マラリアが増加している件で問題 なのは、現地での抗マラリア薬が安易に無制限に購入できる点である。]

4.トリパノソーマ症ーケニア
●05-11(0512-0010)
ヒトと家畜に睡眠病を媒介するツエツエバエが再興している。
この疾患は1991年までに99%まで抑止が成功していたが、約3ヶ月前コンゴから次第に 侵入し始めたと言われており、タンザニアのSerengetiから現在ではLambweのRuma公 園に拡大した。ケニアでは経験したことがないようなレベルでのツエツエバエの個体 数増加が認められるとICIPE(International Centre of Insect Physiology and Ecology)の専門家が指摘している。

これまでのところLambwe ではヒトの睡眠病患者は発生していないが、Toroto で8例 が、ケニア国境沿いで1例が発生している。TropNetEuroとProMED-mail への報告で は、タンザニアのSerengeti国立公園とその他の公園を訪れた5人の観光客が2001年 3月頃アフリカトリパノソーマ症に感染した。政府が現地で家畜感染に関して十分な 対策を行っていないという批判もある。

他方、ケニアトリパノソーマ症研究所(KETRI)が行った調査では、現地8ヶ所 (Kamato, God Jope, Nyadenda, Magunga, Olando, Ndisi, Ombek, Andingo)で採取し た764動物個体からの検体中陽性検体は31例のみであったと報告している。 他の感染症例えばBabesiosisなどの混在が事態を複雑化させている可能性もある。

5.アメーバ性髄膜脳炎ー合衆国(カルフォルニア州)

●04-23(0424-0020
自由生活の(注: 寄生的でも共生的でも定着性でもない)アメーバによるカルフォルニ ア州での髄膜脳炎症例。
公衆衛生当局は、2人の小児がどのようにアメーバの一種であるBalamuthia mandrillarisに感染したかを解明するため緊急の調査を行っている。遺体は隔離さ れ、脳を冒しほぼ全例が死に至るこの疾患が流行する恐れはないと主張している。 稀な微生物が3歳の小児の死因となったのは4月11日であった。患者はその3週前にイ ンフルエンザ様の症状で発症していた。3月にはOrange郡の7歳の少年がアメーバ感染 で死亡していたが、現地の保健当局は症例について詳細を明かすことを拒否してい た。

問題のアメーバBalamuthiaは1990年にアフリカ産のヒヒで発見され、専門家も詳細 については知らないというのが公衆衛生当局の不十分な対応の背景にある。 他の多くのアメーバとは異なりBalamuthiaは寄生せず、宿主なしで生存が可能であ る。

発見以来合衆国内での30例を含め全世界では100例での感染が診断されている。CDCの 原虫学専門家は患者は免疫系が不全状態の人(高齢者、幼児、AIDS患者など)が多いと 指摘している。

【注】 Balamuthia mandrillarisについてより詳しいWebsitesはここあるいはここにあります。



輸血でBabesia microtiに感染か?[99/7/02]