3.研究概要 

  寄生虫感染症は終宿主と寄生体がともに高度に進化した動物であり、寄生適応にさまざまな巧妙な仕掛けを必要とする点が他の感染症との際立った違いである。そのため流行成立にヒトの側の文化的側面が大きく関与している。

 一方でヒト寄生虫感染症には未だに診断・治療法の確立していない病気も多く、それは宿主と寄生体がともに多細胞生真核生物であることによって薬剤などの治療標的が見出しにくいことも関係している。さらに感染症でありながら微妙に調節された宿主-寄生体相互作用が成立している結果、明確な防御免疫が誘導されずワクチン開発は殆ど進んでいない。

 このように寄生虫感染症は研究材料として手つかずの未知の対象といって良い。また流行成立に生物学的および社会的要因が深く関与するために横断的、包括的な取り組みも要求される。従って本分野では寄生虫感染症の成り立ちを多様なアプローチから研究している。