日本における寄生虫学・医動物学教育の現況調査報告
------医学教育の変革の中で、どこへ向かいつつあるのか?----
                          2009年10月26日
日本寄生虫学会教育委員会
高橋優三(岐阜大学)、奥 祐三郎(北海道大学獣医学部)、青木 孝(順天堂大学)、赤尾信明(東京医科歯科大学)、嶋田淳子(群馬大学)、鈴木 守(群馬大学)、松岡裕之(自治医科大学)、有薗直樹(京都府立医科大学)、坪井敬文(愛媛大学)、金澤 保(産業医科大学)、由井克之(長崎大学)、竹内 勤(慶応大学)

緒言
 1991年に大学設置基準が大綱化されて以来、医学教育が内容と方法において大きく変貌しつつある。 これは明治時代に解剖学、生理学、内科学、外科学などの基本が作られた近代の医学教育が、その後に激変した医学と医療の現状に、マッチしなくなった結果への対応策と考えられる。
変化の具体例としては、医学の進歩に伴って膨大化した教科書、医療の高度化に伴って取得に熟練を要するようになった診察技術、国民の人権意識の高揚に伴う患者の人権への配慮などである。これらを考えると医学教育の抜本的改革は当然の要求である。 改革の基本方針は、量的にも質的にも変化した医学の全てを医学生の頭脳に詰め込むのではなく、内容を取捨選択、再編成し、6年間の限られた年月のなかで、何をいつ教えるべきかを求められる医師像に合わせてカリキュラムを組む、ということである。
そのような流れのなかで、医学部の教育は激変したが、古典的な科目である寄生虫学・医動物学のおかれた状況を正確に把握し、この専門知的集団が今後日本の医学教育に占める役割を考察する基礎データをまとめたので報告する。

方法
結果
1. 寄生虫学・医動物学の学部教育の責任者
2. 寄生虫学・医動物学の学部教育を担う部署の名称   
3. 寄生虫学・医動物学の主要な部分が教育されているカリキュラムの名称  
4. 教育の実施は、単独か分担か

{自由記載意見}

進級判定
カリキュラム上の時間
PBLのコース以外で、寄生虫学・医動物学に関係する時間
PBLのコース中で、寄生虫学・医動物学に関係する時間
カリキュラム上の時間の過不足
部署の教員数
教育内容
医学部における寄生虫学・医動物学教育の意義
寄生虫学・医動物学教育の重点・準拠
学部教育の方法
統合化
兼担

{教育方法について自由記載意見}

付図 寄生虫学・医動物学の教育の方法についての分析

実習
生きている寄生虫の観察の例 
その他の実習メニュー 
実施のスケジュール
拠点校

考察
寄生虫学・医動物学を専門とする教授の数は、近年、減少傾向にある。教授の退任などに伴い、免疫学、ウイルス学など近縁の専門分野や、まったく違った専門に変化する場合がある。さらに医学部の小講座が大講座に再編成された場合には、准教授・講師が寄生虫学・医動物学教育の責任者になる場合がある。 逆に、寄生虫学・医動物学プロパーの人材が、公衆衛生、微生物学など関連の分野の教授に就任した例は、わずかである。
ソフト的にも医学教育の改革に伴い、カリキュラムの統合化が進みつつあるが、その場合、寄生虫学・医動物学は、病原体、生体防御、公衆衛生といった概念で、統合化されることが多く、寄生虫学・医動物学は、identity crisisの時代に突入している。
寄生虫学・医動物学の分野は、従来から、医学生に幅のある考え方を教育できる科目として存在してきた。このidentity crisisの時代を経て今後、近未来的な寄生虫学・医動物学の教育のあるべき姿については、日本医学教育雑誌への投稿を通して、新たな統合科目という視点で意見の提言を行なう予定である。

付図 寄生虫学・医動物学の教育の内容についての分析

{自由記載意見}