トリパノソーマ病−アンゴラ,赤道アフリカ(2)
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Date: Sat, 21 Jun 1997 19:51:53 -0700
From: "Dr. Steve Berger" (mberger@post.tau.ac.il)
Organization: Tel Aviv Medical Center

アフリカのTrypanosomiasisに関する以下のバックグラウンド情報は,GIDEONソフトウェアプログラムからの抜粋である。

睡眠病は2種類の鞭毛虫類の原生動物−Trypanosoma Trypanozoon brucei gambienseそして,T.b.rhodesiense−によって引き起こされる。

自然界での保虫宿主はシカ,野生の肉食動物及び牛などのさまざまな大型哺乳動物である. 病原媒介者はGlossinaに属するハエ(ツェツェバエ)。

3日から21日までの潜伏期のあと,患者は皮膚の硬化,筋肉痛,関節痛,リンパ腺症及び再帰熱がみられる。後期には神経学的変化や,精神的な変化(`睡眠病'),感覚異常及び心臓疾患が見られる。Trypanosoma brucei rhodesienseによる病気はT.b.gambienseによるそれよりも急速で,障害の程度が大きい。

診断のための検査法としては脳脊髄液や血液またはリンパ節の吸引液中や血清学的あるいは核酸増幅によって原虫を見つけることである。

典型的な成人に対する治療はスラミン(100mgの試験的注射ののち)の静脈内注射(1 g on days 1, 3,7, 14 and 21 )かペンタミジン4mg/kg/d X10d又はelfornithine。

毎年,およそ2万5000人の新しい患者(世界銀行の試算では1年あたり5万5000人の死亡例)が報告されている。サハラ砂漠周辺のアフリカに住む25万人がこの原虫に感染しており,5500万人が感染の恐れがあると見積もられている。

以下のそれぞれの国の追加情報はGIDEONからの抜粋である。

アンゴラ:
最新の報告では人口10万人に対する感染者の割合は30人と報告されている。Trypanosoma brucei gambienseが優先種(ほとんど北西部−Zaire,Uige,Luanda,Cuenza Nortでみられる)。また,Trypanosoma brucei rhodesienseによる散在的発生が報告される。この地方の媒介昆虫はGlossina palpalisG. fuscipes ssp(quanzensisとmartinii) そして,
G. morsitansである。

ケニア:
西部地方で報告されており,Lambawe Valleyでは比較的普通にみられる。流行の原因となる種は,Trypanosoma brucei gambienseT.b.rhodesienseである。

この地方での媒介昆虫はGlossina pallidipesG. swynnertoni及びG. fuscipes ssp. fuscipesである.

スーダン:
ほとんどの症例は赤道の州から報告される。流行の原因となる種類はTrypanosoma brucei rhodesienseである(南東部ではT.b.gambienseかもしれない)。媒介昆虫はGlossina pallidipesG. tachinoidesである。

ウガンダ:
白ナイル,スーダンの国境付近,ビクトリア湖の北の岸,Iganga,Kambuli,Mokono及びTinja地域ではありふれた病気である。人口10万人あたり年8〜50人の感染率である。原因となるトリパノソーマの種類はTrpanosoma brucei rhodesiense(T.b.gambienseによる症例もある)である。ベクターはGlossina fuscipes(ssp. quanzensis,martinii及びfuscipes)とG. pallidipesである.

エチオピア: GambellaとGila地域の標高2,000m以下の西部地域では風土病である。感染種はTrypanosoma brucei rhodesiense(Trypanosoma brucei gambienseによる散発的な流行の報告もあるである。ベクターはGlossina tachinoides,G. fuscipes(ssp quanzensis,martinii及びfuscipes)G. pallidipesG. morsitans ugandensisの個体群は,近年減退した。


Steve Berger