致死性マラリア−カナダ
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Date: Tue, 17 Jun 1997 19:22:24 -0800
From: varmint@well.com (Hacsi Horvath)
Source: Canada Communicable Disease Report --- Volume 22-20, 15 October 1996
http://www.hwc.ca/hpb/lcdc/publicat/ccdr/96vol22/dr2220ea.html

症例1
 生来健康な66歳の白色人種の男性が,ジンバブエのKrueger 国立公園とビクトリア滝を含む南アフリカを旅行した。彼はカナダ滞在中にはアフリカ旅行中のアドバイスを受けていなかった。しかしながら,彼は,ヨハネスブルグからジンバブエに向かう途中からproguanilとリン酸クロロキンによる予防内服を始めた。

アフリカ滞在中は健康であったが,消化器症状が表れたために,1996年4月5日にカナダに戻ってすぐに予防内服を中止した。およそ1週間後に,患者は嘔気,食欲不振,及び頭痛を自覚した。熱発はなかった。

1996年4月19日の朝,彼は意識不明で発見され,地元の病院に運ばれた。 入院時発熱はなく,見当識障害があり,頻呼吸で心房細動がみられた。血液検査で低血糖とアシドーシスが指摘された。しかし入院時には完全な血液検査は実施されなかった。患者はより大きな病院に移送され,そこで完全な血液検査が実施された。血液中の血小板数2100万/l,また血液塗抹標本に熱帯熱マラリアの寄生(寄生率約50%)が指摘された。非経口キニジンはその病院に保管されたいなかった。そこで患者は1,500mgのメフロキンとFansidar3錠で治療された。10時間後に患者は熱帯熱マラリアの非経口療法を受けるためにその地方の第三次病院に移送された。

病院に到着したとき,患者は昏睡に陥っており,急性腎不全を呈していた。その病院の薬局にも非経口キニジンは保管されていなかったが,オタワから静注用のキニーネが緊急輸送された。患者は交換輸血,キニーネの非経口投与及びドキシサイクリンによって管理された。これにもかかわらず,彼は不可逆ショックを発症し,翌日に死亡した。剖検で典型的な重症の脳マラリアの所見が確認された。

症例2
 生来健康な45歳の白人女性が,3人の子供と夫とともに1995年12月から1996年1月まで1カ月間ナイジェリアに旅行した。出発の前に,家庭医からの旅行前の忠告を受け,リン酸クロロキンによる予防内服を処方された。患者とその家族はこの指示を守ったが,防虫スプレーや蚊帳などの個人的な予防手段はまったくとらなかった。

彼女はナイジェリアに到着してから3週間目に,全身倦怠,水様性で非血性の下痢及び背部痛を自覚した。発熱,悪寒,硬直,及びせん妄が生じたために,彼女は地元の内科医を受診した。初診時にマラリアとの仮診断にもかかわらず,鎮痛剤とジアゼパムが投薬された。翌日に報告された厚層塗抹標本の結果は熱帯熱マラリアであった。患者の意識状態は鈍麻し,黄疸もみられた。補液と非経口的なクロロキン療法に切り替えられた。一時的に治療に対して反応が見られたが,結局昏睡に陥り,2日後に脳マラリアで死亡した。3週間後に彼女の遺体がカナダへ戻ったあとに行われた剖検で熱帯熱マラリアの診断が確定した。

トロントに戻る途中で,患者の子供は3人とも.熱帯熱マラリアを発症した。入院時の感染赤血球の割合は0.5%から3%であった。子供達はそれぞれキニーネ(3日間の600mgのPO t.i.d.)とドキシサイクリン(7日間の100mgのPO b.i.d.)によって治療された。3人とも治療に対する反応が遅く,治療開始後5日目になって血液塗抹標本からマラリアは消失した。フォローアップのために実施した28日目の塗抹標本では,3人ともマラリア原虫は認められなかった。


Hacsi Horvath
ProMED-mail Special Correspondent
e-mail: (varmint@well.com)
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