サイクロスポーラ,外国産と国内産の新鮮果物の安全性
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[1] BITTER FRUIT / ILLNESSES RAISE SAFETY CONCERNS ON IMPORTED PRODUCE
苦い果実―輸入産品に対する安全神話が病気を引き起こす

October 13, 1997
Newsday
Thomas Maier

 今年の4月にニューヨーク州Westchester 郡で行われた結婚式の参列者に端を発した食品媒介性の病気は新鮮な果物と関連していた。この流行では新鮮なラズベリーが160人の出席者のうち20人にサイクロスポーラ症を起こさせた。

 過去2年間の冬期間に合衆国内でサイクロスポーラに汚染されたグアテマラ産ラズベリーを食べた2000人以上の人が腹痛と血性下痢に悩まされた。

 今回の流行は,食品を介して海外から持ち込まれる病気に対して―少なくともその一部は,輸入食品に対してより公平にあるべきであるという合衆国政府の開放政策のために,アメリカの消費者が被害を被る事例が増加していることを示している。グアテマラ産ラズベリー以外に,イチゴ,レタス,バジルなどの食品が最近の流行と関連していた。

 CDC・食品由来下痢性疾患部門の責任者Robert Tauxe博士は「この国でとうの昔に解決されたと思われていた問題が今また,輸入された食物とともにふたたび戻ってきた」と述べている。

 Newsday誌のレポータは先週訪れたグアテマラの農園で,労働者が農園内で排便しているという不衛生な光景を目撃している。

 グアテマラ産の農作物によって毎年このような感染が起こるようであれば,来春のラズベリーの輸入を禁止するとFDAの担当者は声明を出している。どうして特定の季節にだけサイクロスポーラ症がみられるのかは不明であると科学者は述べている。

 連邦政府は,現時点では毎年9千人のアメリカ人が犠牲になっている食品媒介性の疾病が今後十年のうちにさまざまな原因で10ないし15%増加すると予想している。

 病原性大腸菌や肝炎,サルモネラと同じように,グアテマラ産のラズベリーによっておきた今回の出来事は,サイクロスポーラ症のような食べ物による新興感染症が今後確実増加することを物語っている。

 ほとんどの事例は国内産の食物によって引き起こされていたが,ニューヨーク州の食品安全部門の責任者は,今後ますます多くの外国産品が関与する事例に食品検査官が遭遇するようになるであろうと述べている。1993年以来,NAFTAなどがアメリカ市場で扱う外国産の果物や野菜の量は劇的に増加した。

 1994年に合意されたNAFTAや他の貿易協定によってアメリカ人が外国産の食物を原因とする新しい病気にさらされたという見解を連邦政府は否定している。輸入食品に関するこうした見解は,NAFTAに新しい「貿易認証のファーストトラック」を拡大しようとするクリントン大統領の提案に対する反対派のの人気取りのための意見であるといわれている。

 アメリカ通商代表部スポークスマンのJay Ziegler 氏は「反対派は食物汚染という特殊な例だけを引き合いに出して,貿易自体が問題であるといっている。これは正しくない」

 NashvilleにあるVanderbilt医科大学のMartin Blaser博士は,昨年New England Journal of Medicineに発表した食物供給のグローバリゼーションが及ぼす健康被害についてという論文を引用して,「貿易は諸刃の剣である。年中果物を食べれるようになったが,注意しなければならないのは,果物の生産国の衛生状態がこの国の衛生状態と同じだと考えることである。食物を輸入し続ける限り,今回のサイクロスポーラ症の流行にみられるような健康に対する危険性も覚悟しなければならない」

 CDCにおけるサイクロスポーラ流行対策委員会の長であったBarbara Herwoldt博士は,このような新しい疾病は「食品の安全に対してなにをなすべきかをわれわれにもう一度思い起こさせるもである。サイクロスポーラは全国どこでも同定できる疾病ではないしCDCに報告する義務もない。この病気は重症になることもあるし症状も長引くにもかかわらず,今回の流行では多くの症例が報告されずに終わったのではないかと思っている,と語っている。


[2] SANITATION IN THE FIELDS FALLS SHORT
October 13, 1997
Newsday
Ray Sanchez

 グアテマラのChimaltenango―降り続く雨の中,合衆国中を夢中にさせるデザートとグルメ料理に変身するために,9才と10才の姉妹が摘んだラズベリーからこの物語は始まる。51才になる母親―Cristina Reyesのそばで働くために二人は1年前に学校を退学した。そして,世界中に輸出するためにきれいなプラスチックの容器に果物の山を重ねていった。

農園では手書きの掲示が労働者に石けんで手を洗うよう促している。しかし新しい奇妙な寄生虫病の流行がグアテマラのラズベリーと関係しているとわかったあと,先週2日連続してラズベリー農園の流しは工事中で,そこには石鹸がなかった。

そして,近くの別の農園と同じようにここでも清潔で新しいトイレがいつも使われていたわけではない。近くのキャベツ畑にある,屋根に錫を張った便所まで5分もかかるのでそこで働いている人はラズベリー畑の中で排便すると何人かの労働者は記者に語ってくれた。

CDCとFDAによる視察のあと,グアテマラのラズベリー産業は農園の衛生状態の改善を目的とする一連の規制案を昨年実行した。

農園主はきれいな水を潅漑に利用し,その水も定期的に検査しなければならない。またトイレと洗面所は水が流れるようにし,手洗い場には石鹸を常備するように求められた。しかしこれらの勧告にも関わらず,先週いくつかの農園をまわって聞き取り調査した農業担当官は地球規模の食糧貿易を監視する重要性を強調した。



1.「自由貿易によってペストが流行した」というのはよく知られた歴史上の教訓である。

2. 世界的な食糧供給の拡大によってもたらされた恩恵は,先進国が発展途上国から得る食糧によって発展途上国自身も医療や衛生に注意を向けるようになったということであろう。