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医療の国際化と本学の取り組み
医学部教育委員長 田中雄二郎
21世紀に入り国を越えた連携や交流は急速に拡大しており、医療もその例外ではありえない。その象徴が国を越えた患者の移動である。タイ、シンガポールのように医療を一つの産業と位置づける国が出現し、この両国は2005年には安価良質な医療を求める計50万人の外国人を受け入れ治療を行ったとされる。医療の国際交流といえば専ら医師が自らのキャリア開発のために留学することを指すという時代は終わったのである。
しかし、我が国では深刻な医師不足に直面し、このような潮流に目が向いていないのが現状である。即ち「自国民の面倒がみれないのに外国人のことなど・・・」ということである。本来世界最高水準の医療提供が可能な日本、トヨタやソニーなど技術力の世界的ブランドイメージを有する日本がこのような潮流に背を向けるべきではないし、21世紀の重点産業として医療を捉えていくことは多くの識者が指摘する「我が国の進路」ともいえる。医療の国際化への対応こそ明日への備えなのである。
そもそも医師育成には長い年月を要する。今必要な医師は現役の医師で対応し、将来必要な医師を今育成することは当然の理である。このような背景を踏まえれば我が国の医療人育成のために国際共用語である英語教育を重点化すべきは今、現在なのである。必要な言語運用能力を育てる英語教育プログラム、さらには海外の医療をとりまく制度や風土への理解を深めるための国際医療教育プログラムを編成し、よって日本における医療系教育の新しいモデルを提示することを目的として本事業は発足した。
平成16年度から4年間に渡って行われた本取り組みの背景には、以下のような先行努力があった。そもそも本学は「国際性豊かな医療人の育成」を教育理念のひとつとして掲げており、以前より医学英語という必修科目が存在した。平成15年度より、鈴木章夫学長の主唱により始まった米国ハーバード大学との提携を機に同大学の臨床実習へ参加の道が開かれ、その準備教育として横須賀米国海軍病院医師を招聘しての課外授業("Language
and Philosophy of Western Medicine"「米国臨床医学の学習方法」)を実施していた。
本事業が採択されたことにより、これら従来の取り組みを発展させて改革中だった新カリキュラムに取込み1年後期から卒業まで医学で英語を学ぶことにより言語運用能力のみならず知識、技能、態度のいずれにおいても、国際的に通用する人材を育てることを目指した。本事業期間中の具体的な取り組みは以下の通りである。
1学年後期より4学年前期に全員必修の「英語で医学を学ぶ」コースを設定した。教育責任者に海外臨床留学経験のある講師を起用し、英語教育の専門家と連携し運営を行う体制を整備した。特に英語による医学の「聞き取り」「表現」に関しては、ネイティブスピーカーを非常勤講師として配置し、英語力に応じた学習目標を設定し、修学意欲を高める配慮も行った。
具体的には、 先述のハーバード大学医学部との提携によるハーバード大学医学部での臨床実習が6学年の4月から6月まで最大8人参加できる機会、ロンドン・インペリアルカレッジとの提携により5学年後期5ヶ月の研究体験コースを設定した。また学生の自主的な短期留学を支援するため海外研修制度を設けた他、5学年後期にはプロジェクトセメスターと呼ばれる自由選択研究実習において海外でフィールドワーク等を行う機会を設けた。
| 海外での臨床実習、研修、研究を支援する英語学習プログラムの体系化 |
海外における実習は多くの医学部で学生の自主的な取り組みに任せられており、大学としての体系的教育支援は限られていた。その結果、帰国子女のような例外的存在を除き、殊に臨床実習では見学に終始せざるを得ない実情があった。しかし、上記ハーバード大との単位互換プログラムは診療チームの一員としての参加型実習であり、見学に留まることは許されない。また教育上も好ましくない。本事業ではこの点を解決するため上記の医学英語コースに加え、さらに高度な医学英語トレーニングの機会を設けた。その詳細は別項を参照されたい。
本学は、大学院医歯学総合研究科を有する医学、歯学に携わる医療人養成総合大学である。その観点から、本事業は医学科を主体とするものの、他学科の専門英語教育の底上げを視野に入れている。具体的には入学後の初期英語教育のe-learning教育環境の整備や歯学部の学生を対象とした「歯科英会話入門コース」等である。これらの整備や実施にあたっては歯学部および教養部の教員と連携し、活用に努めた。
本事業遂行には本学内外の多くの支援を得た。文部科学省の支援なしには勿論成立し得ないし、鈴木章夫学長の強いリーダーシップにより始めて実現したものも多い。また、インペリアル・カレッジとの有機的提携を実現した同大学高田正雄教授の協力も大きなものがある。歴代の科目責任者として尽力された森尾友宏准教授、吉田雅幸教授および高田和生講師、数多くの非常勤講師の方々、事務の伊藤郁美さん、松村悠子さん、高田由美さん、飯島万貴さんの労に謝したい。そして、本報告書のとりまとめを始め、全体の事業遂行に多大な尽力をくださった前沢浩子特任講師に謝意を表し業績概要説明の稿を了えたい。 |
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