平成18年度から東京医科歯科大学では、医学部5年生のキャリキュラムが大幅に改訂される予定です。それは、ベッドサイドラーニングからクリニカルクラークシップへの移行であり、私もそのワーキンググループ委員として新しいフレーム作りに積極的に参加しております。クリニカルクラークシップとは、学生を病棟、外来における医療チームの一員と位置づけ、単なる見学や講義だけでなく、相当なレベルの医行為や病棟業務を実習させる新しい教育形態であります。将来医師になるための必要な知識、技能、態度、習慣を身につけるには、優れた実習方法であります。さらに平成18年度にはOSCEの全国規模のCBT(computer based test)が開始されます。OSCEではステーションごとにいろいろ課題が設定され、実際の診療行為、たとえば医療面接、胸部や腹部の診察、頭頸部診察、外科手技などを、学生がうまく行なえるかが試されます。従って、クリニカルクラークシップ開始前までにしっかりと臨床技能を教え、学生が病棟にきたときには必要最低限の臨床的手技はできるようなカリキュラムを組むことが重要となります。そのためには、学生たちが医療実習を行うための教材とそれを自由に使ってトレーニングをする場所、そして指導する教官が必要となります。その役割を果たすのがスキルスラボです。さる9月中旬、ハーバード大学医学部より教育スタッフを招いて行われたクリニカルクラークシップに関するFDの際に、Dr T. Aretzは充実したスキルスラボでの実習トレーニングの重要性を強調しておられました。
私が専攻する産婦人科は女性の恥部を扱う診療科であり、医学生が医行為を行う場合に、ほかの診療科にみられないデリケートで困難な問題を抱えております。総合診断実習における産婦人科診察のクルズスの際、この度オープンした本学スキルスラボにて人形(内診モデル)を使った内診診察の実践を行うことができたことは大きな意義があり、また多大な効果が得られたと確信しております。学生達の間でも、たいへん好評でありました。今後実技訓練の重要性がますます増してゆく医学教育の中で、本学スキルスラボの果たす役割は大きいと思われます。まだ利用の仕方がわからない学生や教官も多いと考えられますので、その有用性を学内すみずみまで広報することも大切であり、関係各位のご尽力を期待する次第です。