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第1回 3つの基本理念を刻む~東京医科歯科大学 壁面レリーフ


3つの基本理念を刻む~東京医科歯科大学 壁面レリーフ

平成14年秋に完成した東京医科歯科大学の総合教育研究塔壁面に刻まれたレリーフ。JRお茶の水駅や聖橋からも見えるので、目にされたことのある方もいらっしゃるでしょう。ところで、いったい何が描かれているかご存じですか。
 3つの基本理念を刻む~東京医科歯科大学 壁面レリーフ 一番左は、医聖と仰がれている古代ギリシアのヒポクラテスによる「医師の誓い」です。ヒポクラテスはB.C.460年頃ギリシアのコス島に生まれ、当時、全アテネを巻き込んだペロポネソス戦争では、諸都市を疫病から救うなど尽力し、また、医学の指導者として多くの著作を残しました。なかでも医の倫理を説いた「医師の誓い」は、患者のために尽くすこと、秘密を守ること、患者を差別しないこと、頼まれても毒薬を与えないこと、など、医学を志す者すべてが心に刻みつけておくべき心得として、多くの医学校の卒業式でも誓われているものです。
 3つの基本理念を刻む~東京医科歯科大学 壁面レリーフ 中央は、イタリア、ルネッサンス期の画家ラファエルによる「アテネの学堂」から。プラトンとその弟子アリストテレスが対話する様を中心に、古代ギリシアの哲人が一堂に会したシーンを描いており、ルネッサンス美術の傑作としてよく知られています。ここに描かれているように、B.C.387年にプラトンがアテネに設立した学校「アカデメイア」では、他者との対話により真実を追究する、という方法がとられていました。つまり、対話は教育の原点といえるのです。
 3つの基本理念を刻む~東京医科歯科大学 壁面レリーフ そして、3つ目。19世紀半ばに、アメリカの歯科医師モウィリアム・モートンが行った世界初の全身麻酔公開実験を描いています。いま、麻酔がなかったら、ということを想像できるでしょうか。しかし、人類が外科手術や抜歯などに伴う耐え難い苦痛から解放されたのは、ほんの150年ほど前のことなのです。医療の現場において、現在は不可能とされていることを将来可能とするために、今後もたゆまぬ研究が続けられていくでしょう。
「診療」「教育」「研究」。このレリーフには、医学にかかわるすべての学科、専攻をもつ日本唯一の医歯学系総合大学院大学である東京医科歯科大学の3つの基本理念が刻まれているのです。今度、通りかかったら、ぜひ、じっくりご覧になってみてください。


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