研究内容


1. セルフケア支援と自己決定支援の方法
ストレスへの無意識的な反応から意図的な自己対処に至る過程において,感情や感覚と思考はどのように関連し合っているかについて解明を図りながら、この過程についての理解を人々がセルフケア(=自己決定に基づく健康問題の解決と自己管理)の充実に生かしていけるような学習支援の方法論を検討している。特に自己決定支援のための技法を重視しながら、精神疾患患者や身体疾患患者と、看護学生のたどるプロセスの比較を試みている。
2. 専門職によるセルフヘルプグループ支援
セルフヘルプグループは、健康問題をはじめとする生活上の困難を共有する人々が、共に集い語り合うことを通じて、それぞれの自立を支え合う集団であり,とりわけ精神保健の領域では専門医療の限界を補う大きな役割を担っている。保健医療福祉の専門職がセルフヘルプグループの経験から何を学び、グループの自律性を尊重しながらその活動をどのように支援していったらよいかについて検討している。
3. 精神疾患患者の回復を促進するための看護的介入
精神疾患患者の回復を促進するために試みられてきた看護的介入の諸技法を取り上げ、精神疾患の発病と回復に関する精神医学的な知見と突き合わせながら、介入の結果に影響を及ぼす要因の連関について解明を図っている。とりわけ入院の早期における問題把握と関係づくりの方法論の確立、ならびに長期在院者や触法精神障害者の社会復帰に向けたケアマネジメントのシステム化に力を入れている。
4. 精神障害者の地域における生活自立の要件
精神障害者が地域において自立した生活を営み、再発を予防し、QOLを向上させ、社会参加を増進していくためには、どのようなシステムや環境条件と支援活動が必要なのかについて検討を進めている。とりわけ、精神科デイケアの機能についての分析と、スタッフの役割の解明に焦点を当てている。
5. 事例検討を用いたスーパービジョンとコンサルテーションの方法
看護領域において事例検討会は、実践と学習の結節点と考えられてきたが、実践課程への批判に傾き事例を提供した看護師の実践への動機づけをむしろ低下させる場合が少なくない。事例検討の場に生じる参加者間の集団力動に焦点を当て、病棟看護チームの集団力動と比較しながら、参加者間で適切な役割分担を行えれば、看護実践の特徴に見合ったスーパービジョンやコンサルテーションが可能となり、事例提供者のエンパワメントをもたらすことができる。そのような方向性を持った事例検討会の組織化とリーダー養成の方法論について検討を重ねている。
6. 看護相談の現状把握と相談面接技法の開発
看護師による患者や家族に対する相談活動は様々な看護場面で広範に実施されているが、その実態は十分に把握されておらず、看護師の自己評価も必ずしも高くない。そこで、看護相談の現状把握を踏まえながら、関連領域で行われてきた相談面接の技法を看護場面に生かすにはどうしたらよいか、また看護職の持ち味を生かした看護相談の担い手を養成するにはどのような教育が必要かについて検討を進めている。
7. 異和感の対自化(感性を磨く技法)
対人関係において相手の言動が予測と期待に反していたことから心身に生じる軽い一過性の失調としての“異和感”に注目することによって、自己や対人関係の相手についての理解を深め、関係性の改善を図るための技法である“異和感の対自化”の洗練に努めている。異和感の対自化を軸とし、自己一致、感情活用能力、感情労働等の概念と組み合わせながら、看護師・看護学生が、援助過程の吟味による内省の深化を通じて、援助職としての専門性を高めるための方法論と、その応用について検討している。とりわけ、看護学生が臨地実習で体験した看護場面の分析にこの方法を持ち込み、援助職としての力量を高めていくための学習を支援する方法論に焦点を当てている。
8. 司法精神看護学の理論と方法
「心神喪失者医療観察法」に基づいて開設された指定入院医療機関における治療・看護のガイドライン作りとその洗練に向けた活動への関与を通じて、司法精神医療における臨床実践を支える理論と方法の確立を目指している。具体的には、精神疾患患者の回復と自立を促進するために開発されてきた相談面接,認知行動療法、心理教育等の技法を用いた、患者観察,患者評価,患者ケアの方法論についての検討を通じて、多職種チームにおける看護職の役割の明確化を試みている。とりわけ、入院時の多職種チームの連携によるインフォームドコンセントと看護師による綿密なガイダンスの有効性の実証や、患者が自らの病気についての理解と他害行為についての内省を深化していく過程の解明と、それを促進するための援助技法の確立に重点を置いている。

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