研究室案内 研究内容

3)多発性筋炎・皮膚筋炎の原因解明と新治療法の開発

多発性筋炎・皮膚筋炎研究の現状

   多発性筋炎は、手足の体に近い部分や首、飲み込む時に使う筋肉の筋力低下を主症状とする膠原病です。 皮膚に特徴的な発疹ができると皮膚筋炎と呼ばれます。我が国に患者さんは、1万人程度いらっしゃいますが、研究は遅々として進みませんでした。 多発性筋炎はキラーCD8T細胞による筋組織攻撃、皮膚筋炎は、血管の内皮細胞細胞に対する抗体が原因で筋肉内の血管に炎症が起きることが特徴のように言われてきました。 しかし、皮膚筋炎の場合には、どうもそれは懐疑的です。

筋炎研究のブレークスルーを目指して

   これまで、研究が進まなかった理由には、患者さんが、膠原病・リウマチ内科以外に皮膚科や神経内科に別れてしまうこともあったと思います。 なかなか別の診療科が研究で話し合う機会はありません。さらに、多発性筋炎のマウスモデルとして、 知られていた実験的自己免疫性筋炎(EAM;experimental autoimmune myositis)は、SJLマウスはジスフェリン遺伝子に変異がある筋ジストロフィーマウスにしかおこせないことや、キラーCD8T細胞ではなく、CD4T細胞によっておきていることなど、 多発性筋炎モデルとしてふさわしくなかったことも原因と考えられます。

マウスに起こした実験筋炎の組織像

図 マウスに起こした実験筋炎の組織像

   そこで、私たちは、筋肉の構成成分であるCタンパクの断片を1回免疫することによって、 筋ジストロフィーマウスではない健常マウスに筋炎をおこすことに成功しました(C protein-induced myositis; CIM。図)(新聞記事)。 新たに開発したCIMモデルでは、従来のEAMと異なり、CD8キラーT細胞が筋炎発症に重要な役割をはたしており、多発性筋炎に近いマウスモデルです。
しかも、多発性筋炎や皮膚筋炎の治療に有効とされている免疫グロブリン大量静注療法がこのマウスモデルにも奏功しました。

新しい多発性筋炎モデルに対する免疫グロブリン大量静注療法(IVIG)

表 新しい多発性筋炎モデルに対する免疫グロブリン大量静注療法(IVIG)
ヒトの多発性筋炎に有効とされているIVIGは、このモデルの筋炎も軽快させます。 

このように非常によくできたモデルであることがわかったため、今後、多発性筋炎や皮膚筋炎の病気の仕組みの解明や新しい治療法の開発に役立つものと考えて研究を続けています。

ヒト筋炎研究も同時進行

前述のように多発性筋炎は筋細胞がCD8Tリンパ球の標的となり組織破壊が生じていると考えられます。 一方で、CD8Tリンパ球は、CD4Tリンパ球と異なり、標的組織ではなくリンパ節で抗原提示を受けて増殖し、末梢血を経由して標的組織に移ることが知られています。 また、非特異的刺激でも増殖し易い。それ故、末梢血には健常人でもウイルスなどの外敵を殺すCD8Tリンパ球が多くあります。
私たちは、このようなCD8Tリンパ球の特性を考慮し、多発性筋炎患者さんの末梢血には健常者よりも高頻度にCD8Tリンパ球のクローン性増多があると推定しました。実際、これまでの研究でこの仮説が正しいことがわかり、 患者さんの末梢血には、筋組織を攻撃するキラーT細胞がいることを見いだしました。現在は、この「悪者」T細胞を抑制する方法を検討しています。

2011年度からは、厚生労働科学研究の自己免疫疾患調査研究班の中に多発性筋炎・皮膚筋炎分科会が設立されました。
分科会の構成員は、上阪等(分科会長)、冨滿弘之(東京医科歯科大学)、太田晶子(埼玉医科大学)、三森経世(京都大学)、川口鎮司(東京女子医科大学)、神田隆(山口大学)、清水潤(東京大学)、藤本学(金沢大学)、室慶直(名古屋大学)、神人正寿(熊本大学)です。
2014年度からは、砂田芳秀(川崎医科大学)が冨滿、清水に代わってメンバーとなっています(敬称略)。
皆で協力して、筋炎診療を向上させるように努めます。   

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