関節リウマチ治療の歴史

関節リウマチ治療の歴史

図1.関節リウマチ(RA)の薬物治療史

関節リウマチは、多関節炎を特徴とする全身性の炎症性疾患です。詳細な原因は現在でも不明ですが、遺伝的要因と環境要因が組み合わさって発症すると考えられています。関節リウマチでは、主として手・足の関節を包んでいる関節包という袋の内側を覆う滑膜と呼ばれる組織に炎症を生じます。炎症を起こした滑膜はパンヌスとよばれる病的な組織を形成し、軟骨や骨を破壊して関節機能障害をもたらします。米国アラバマ州では、3,000-5,000年前の関節リウマチと考えられる骨破壊病変のある人骨が発見されています1)。欧州における関節リウマチと考えられる病変のある最古の人骨は西暦1785年のもので、1492年以降に北米から欧州に何らかの要因を介して患者が広がったかもしれないという説があります1)

1897年、アセチルサリチル酸(アスピリン)が登場して以来、関節リウマチに対し、消炎鎮痛薬として多種の非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs: NSAIDs)が用いられてきました。また、1940年代にはグルココルチコイド(ステロイド)が関節リウマチの特効薬として華々しく登場し、現在も用いられています。しかし、NSAIDやステロイドの主な効果は、痛みを和らげるなど対症療法的なものです。

1970年代には、20世紀始めから用いられてきた金製剤に加え、サラゾスルファピリジン、D-ペニシラミン、ブシラミン(日本・韓国でのみ承認)、ヒドロキシクロロキン(網膜症などの副作用のため日本では未承認)などが登場しました。これらを疾患修飾性抗リウマチ薬(disease-modifying anti-rheumatic drugs: DMARDs)と呼びます。DMARDsが有効な患者さんも沢山いますが、その効果は充分でなく、関節破壊の進行を確実に抑えるのは困難でした2)

1980年代になり、メトトレキサート(MTX)が関節リウマチの治療薬として登場し、関節リウマチの治療は大きく変わりました。MTXは日本では欧米に約10年遅れて1999年に承認され、現在、MTXは関節リウマチ治療の「アンカードラッグ」(アンカーとは錨の意味です)として中心的な薬剤となっています。しかし、MTXが有効なのは、関節リウマチ患者の半数程度で、臨床的寛解(臨床症状が消失する状態)に至るのは早期関節リウマチ患者を対象とした欧米の臨床試験のデータでも全体の25%程度です) (その上、2009年12月時点で、日本で承認されているMTXの投与量の上限は8mg/週で、世界標準の1/2から1/3に制限されています)。

1990年代後半に欧米で登場した腫瘍壊死因子(TNF)阻害薬は、関節リウマチの治療に革命的な変革をもたらしました3)。TNF阻害薬のように、分子生物学的手法を用いて作られる薬剤を生物学的製剤と呼びます。我が国では2003年に関節リウマチに対する生物学的製剤(TNF阻害薬であるインフリキシマブ)が初めて承認されました。2009年12月現在、3種類のTNF阻害薬(インフリキシマブ,エタネルセプト, アダリムマブ)と、我が国で開発されたインターロイキン-6(IL-6)阻害薬(トシリズマブ)が承認され、既に5万人以上の関節リウマチ患者が治療を受けています。

これらのTNF阻害薬やIL-6阻害薬は、TNFやIL-6という炎症を起こす蛋白の働きを抑えて関節炎を和らげるのみならず、関節破壊の進行抑制や身体機能の改善においても非常に優れた成績が我が国でも報告されています。

参考文献

1. Rothschild BM et al. Symmetrical erosive periphral polyarthritis in the Late Archaic Period of Alabama. Science 241:1498-501, 1988.
2. 小池隆夫. 関節リウマチ治療の歴史. Clinician: 572, 873-877, 2008.
3. 野々村美紀,宮坂信之. 関節リウマチの治療-生物学的製剤. 総合リハビリテーション (印刷中).

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