講座設立までの経緯

表1.関節リウマチに対する各生物学的製剤の特長

本講座は、関節リウマチにおける生物学的製剤を対象としたファーマコビジランスを主要な研究テーマに田辺製薬株式会社(現在の田辺三菱製薬株式会社)のご協力のもと、本学大学院医歯学総合研究科に寄付講座として2005年4月に設立されました。  

関節リウマチの治療には非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAID)やグルココルチコイド(ステロイド)といった対症的薬剤だけでは不十分であり、疾患修飾性抗リウマチ剤(DMARD)と呼ばれる薬剤が疾患の進行や関節破壊を阻止するのに不可欠とされています。しかし従来用いられてきたDMARDの効果は必ずしも満足できるものではありませんでした。

1990年台後半には、欧米を中心に新規薬剤の開発が急速に進み、本邦でも当時、レフルノミド(アラバR)が、欧米に約4年遅れて承認されました。レフルノミドは従来のDMARDと比べて優れた有効性を示し、重症副作用が少ない新しい関節リウマチ治療薬として多くの期待を集めました。  

ところが2003年冬、レフルノミドを使用した日本人患者において、欧米ではほとんど報告のなかった間質性肺炎の多発が明らかになり、死亡例も報告されました。日本のリウマチ専門医らは発売元の製薬会社に対して、該当症例についての詳しい情報や検討結果の公開を求めましたが、発売元はこれらの求めに対して迅速な情報公開を行いませんでした。そして、報告医療機関の確認や許可もないままに、米国の本社に設立された安全性委員会での討議を基に、米国リウマチ学会でこれらの事例を発表してしまいました。  

この一連の事件にリウマチ専門医として関わった東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 膠原病・リウマチ内科学 宮坂信之教授は、利益追求が目標である製薬企業によるファーマコビジランスの限界を痛感し、独立した立場でファーマコビジランスに関わることができる大学講座の設立を発案しました。時期を同じくして、さらに強力な抗リウマチ効果が期待できるTNF阻害薬であるインフリキシマブが発売開始となり、専門医による適正かつ慎重な使用と、副作用の厳密な調査の必要性を強く認識しました。  

そこで、本邦において関節リウマチに対する最初の生物学的製剤を発売した田辺製薬株式会社(現在の田辺三菱製薬株式会社)に独立した立場でのファーマコビジランス研究の重要性をご理解いただき、寄付講座へのご協力をお願いしました。その結果、特に関節リウマチに対する生物学的製剤のファーマコビジランスを主要な研究テーマとする薬害監視学講座が、鈴木章夫学長(当時)、宮坂信之教授のご指導・ご尽力を得て、2005年に設立されました。

2009年からは講座の運営体制を一新し、構成人員を増員しました。また、新薬開発状況を視野に入れ、対象薬剤を生物学的製剤から分子標的薬に広げ、活動内容を拡充いたしました。講座の運営の中立性と透明性を高めるために、現在はアボットジャパン株式会社、エーザイ株式会社、武田薬品工業株式会社、田辺三菱製薬株式会社、中外製薬株式会社、ファイザー株式会社、ブリストルマイヤーズ株式会社(50音順)の7社に寄付を頂いて、活動を継続しています。分子標的薬による治療を受けているリウマチ性疾患の患者数の増加に伴い、この領域のファーマコビジランスの重要性はますます高まっています。

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