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「学会リーダーに訊く」zoom up 2010, No.131、2010年8月23日発行 (1) (2)

教授挨拶

ご挨拶(平成24年1月)(pdf)

ご挨拶(平成22年度)(pdf)

ご挨拶(平成21年度)(pdf)

ご挨拶(平成20年度)

福岡から上京し、東京医科歯科大学に着任して早1年が経ちました。環境の激変で戸惑うことも多かったのですが、ようやく少しずつペースがつかめてきました。
当科については「患者さんの愚痴や不満を聞くだけの外来」「精神的におかしい人が最終的に回される外来」「心の病気の患者さんの歯に関する不定愁訴を宥めすかすところ」といった誤解が先行していました。
しかし、現に歯科治療を契機に慢性疼痛や咬合の異常感、味覚障害や口腔内の異常感など様々な原因不明の症状が出現し、苦しんでいる患者さんが大勢おられます。歯科領域における“medically and psychiatrically unexplained symptoms”(身体医学的にも精神医学的にも説明できない症状)。これが当科、当分野が真に対象とする病態であると考えています。この1年間、精神疾患として精神科で治療すべき患者さんは適切な治療ルートにお願いし、診療対象を真に歯科医師が対応すべき歯科臨床上の心身医学的問題に特化していきました。

豊福教授近影

東京医科歯科大学大学院
医歯学総合研究科
頭頸部心身医学分野教授
豊福 明

教育面では大学院のみならず学部学生の臨床実習にも力を入れています。この領域は眼に見えない症状を対象とするため、いくら教科書を読んでも理解できないことが多く、臨床の現場でこのような疾患を肌で感じることが何より大事と考えているからです。患者さんが一番の先生です。実際に患者さんに接し、その苦痛の深刻さ、安易に「心因性」「治らない」などと片付けることの弊害、そして治療可能な疾患であることなどを体験してもらっています。患者さんの「心」が分かる歯科医師を育成したいと考えています。多少手狭な診療環境ですが、患者さんのプライバシーなどには十分配慮致しますので、ご理解とご協力の程、どうか宜しくお願い申し上げます。

臨床では、当科外来には、年間約500名の新患さんが受診され、紹介率は約80%でした。医科、歯科問わず、首都圏はもちろん名古屋や大阪、仙台、果ては北海道や九州といった遠方からもご紹介いただいています。より多くのニーズに応えるべく医療連携の推進と共に、さらなる治療成績と治療効率の向上が課題です。
東京でも患者さんの病態や治療反応性には大きな違いがなく、概ね九州でやってきたことが通用することが分かりました。ただ、医学部附属病院では目立たなかった非定型歯痛が当科ではかなり多いことが印象的でした。また歯科用インプラントの術後に様々な不快な口腔症状が生じて困っておられる患者さんがこちらでは目立ちました。難治例も少なくないのですが、1人1人を大事にし、約70%の患者さんでまずまず良好な経過が得られています。
昨年度は精神科の先生から口腔内セネストパチーの患者さんも案外多くご紹介いただきました。治療が難しい病気ですが、歯の治療の後から発症することも多く、歯科における切実なニーズがある以上、少しでもお役に立てるよう治療法の工夫に勤しんでいます。
当分野では「歯科心身症の治療技法の開発・改良および本症の病態解明」をテーマに、臨床と直結した研究を志向しています。従来「不定愁訴」として一括されがちであった、口腔領域の感覚認知の障害に対して、病態の本質に迫るような治療技法の開発・改良を目指し、日々の診療の中で試行錯誤を繰り返しながら、そこから得られた知見を元に本症の病態解明に取り組んでいるところです。
本症の病態に脳内神経回路の構造やそれらの接続パターンの関与が大きいことは間違いないと思われます。本学医学部核医学センターの協力も得て、SPECTなどによる本症患者の脳機能画像研究も始めました。まだ十分な症例数には達していませんが、現時点では臨床的には同じような舌痛症でも脳血流シンチにおける個人差が大きいことが示唆されています。脳内ニューロンの異なる別個の活動状態が、主観的には判別不能なことがあるかもしれず、本症の症状の微妙なバリエーション、薬剤の反応性、忍容性、副作用の出現に個人差が大きいことの説明につながるのではないかと推測しています。さらに画一的な治療より、各個人の回路の病態にきめ細かく対応する「個体差医療」の必要性が示唆されるものと捉えています。

しっかりした歯科医師としての考え方、知識、技術に基づき、「病める人」として患者さんを人間理解し、「心身医学の知識を臨床に応用する歯科医師」の育成、および「心理療法も治療に取り入れる歯科」としての「心療歯科」の確立を目指しています。
「歯科心身症」「歯科心身医学」「心療歯科」などという言葉への偏見も根強いのですが、歯科臨床における感覚認知や高次脳機能の問題に取り組んでいる領域とご理解戴けますと幸甚です。
歯科心身症の患者さんたちは、ご自身がとても苦しんでいるばかりか、各医療機関の先生方も一体どこに由来するのか理解できない訴えに対して、その対応に苦慮されているのが現状かと拝察いたします。私共が他科の先生方にご迷惑をお掛けすることも多々あるかと思いますが、歯や口の問題では可能な限りお役に立ちたいと考えています。今年度もどうぞ宜しくお願い申し上げます。

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ご挨拶(平成19年度)

「歯科心身症」あるいは「口腔心身症」と言う病気の存在の認知度は、我が国はもちろん世界中のどの国においても必ずしも高いとはいえません。しかし、70年も前から歯科医学の教科書に記載され、各種専門学会雑誌などでも報告され続けており、このような症状に苦しんでいる患者さんが世界中に少なからず存在することは疑いない事実です。
従来、他覚的所見や検査上の異常に欠く訴えは、「不定愁訴」「精神的なもの」と一蹴されがちでした。このような症状を訴える患者さんは、歯科からしばしば精神科や心療内科に「回され」ます。しかし、精神科や心療内科の先生方も、はっきりした精神科的診断もつかず、心理社会的背景にも特に問題が見出せないのに、このようにひたすら頑固な口腔症状のみを訴え続ける患者さんには困惑されることもしばしばあるようです。
結果的に患者さんは、専門医療の隙間からもれてしまい、「何処へ行ってもわからない、気にしすぎとか精神的なものとか言われるし….」「どうしたらいいんでしょう?」とあたかも難民化してしまうかのような状況です。我侭や贅沢などではなく、本人も家族も深刻に苦しみ、困っておられます。 このように医療の死角に陥ってしまった患者さんこそ、「歯科心身医学」が真に対象とすべきではないか、と考えてきました。
この3月まで私が在職しておりました福岡大学医学部歯科口腔外科学教室では、先代の都 温彦教授(現名誉教授)を中心に40年近く歯科心身医学の臨床的研究が続けられてきました。私は学生時代に、このような患者さんに出会い、何とか治せないものだろうかと思い、卒業後は直ちに同教室へ入局し、歯科心身医学を専攻してきました。「歯科心身症の治療技法の開発・改良および本症の病態解明」をテーマに、臨床と直結した研究を続けて参りました。
歯科心身症の場合、口の中に精通した歯科医師でなければできないきめ細かい対応や治療があります。もちろん歯科でできることには限界がありますが、医学部病院の中で17年間仕事をしてきて、やはり歯科医師が担当すべき「歯科心身症」という守備範囲が存在すると確信するに至りました。
食べること、味わうこと、話すことに支障を来たすのみならず、何もしていなくても四六時中口の中が痛んだり、不快な違和感が続いたりすることは、患者さんの生活の質の著しい低下に直結します。「生命に関わらない」から「大したことはない」、とは限りません。そのまま放置され続けると、いたずらに患者さんの苦痛は長引き、ご家族の疲弊や社会的損失も増大することになります。
着任早々、医科、歯科問わず、都内はもちろん名古屋や大阪といった遠方からも患者さんをご紹介いただきました。紹介医の先生方のご協力を得ながら、1日でも早く患者さんが苦痛から解放されるよう、病態の本質に迫るような治療技法の開発・改良を目指し、日々の診療の中で試行錯誤を繰り返し、本症の病態解明に邁進している毎日です。他の病院では治らなくても当科なら治せる、と言うくらい他の追随を許さない先駆的な心身医療を実践していきたいと考えています。
しかし、まだまだ完成には程遠い、発展途上の領域です。皆様から、当科へのご希望やご感想、ご不満や改善点など、広く声をお寄せいただければ幸いです。

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