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ホーム  > フロンティア研究室 遺伝子発現制御学  > 研究成果の紹介  > UNC-75による選択的スプライシング制御機構

UNC-75による選択的スプライシング制御機構

Nucleic Acids Res (2013)

線虫のCELFファミリースプライシング制御因子UNC-75の標的遺伝子の網羅的探索と位置依存的かつ神経系特異的な選択的スプライシングの制御機構について紹介します.


この研究成果は、東京大学大学院新領域創成科学研究科鈴木穣博士との共同研究によるものです.

線虫CELF3-6サブファミリースプライシング制御因子UNC-75

UNC-75タンパク質の構造の模式図

CELFファミリーRNA結合タンパク質は後生動物に進化的に保存されたRNA結合タンパク質で、3つのRNA結合モチーフ(RRM)型のRNA結合ドメインを持ちます[1,2].

哺乳類ではCELFファミリーに6つの遺伝子が含まれますが、RRMドメインのアミノ酸配列の相同性から、さらに、CELF1-2サブファミリーとCELF3-6サブファミリーに分類されます[1].

CELF1-2サブファミリーのCELF1(別名CUG-BP1)とCELF2(別名CUG-BP2)は幅広い組織で発現しますが、特に筋組織や脳で高い発現が見られ[3,4,5]、GUあるいはUGに富む配列に好んで結合し、スプライシング、翻訳、分解などのmRNAの代謝に関わっているとの報告があります.

一方、CELF3-6サブファミリーのCELF3からCELF6は主に神経系に発現してミニ遺伝子のスプライシング制御に関与するとの報告がありますが、内在性の標的遺伝子など詳しいことは知られていません.

線虫では、唯一のCELF1-2サブファミリータンパク質ETR-1は筋組織に発現し[6]、唯一のCELF3-6サブファミリータンパク質UNC-75は神経系特異的に発現しています[7].

UNC-75(図)の機能は長らく不明でしたが、私たちの研究室では、UNC-75がRBFOXファミリースプライシング制御因子と協働してunc-32遺伝子のエクソン7の相互排他的選択的スプライシングを神経系特異的に制御することを見出しました[8].

mRNA-seqによるUNC-75の標的遺伝子の探索と検証

UNC-75の標的遺伝子の検証例(NAR, 2013より)

私たちが単離した線虫unc-75変異体は運動失調(Unc, uncoordinated)の表現型があるものの生育可能であったため[8]、野生型背景とunc-75変異体背景の線虫株の同調したL1ステージの幼虫からポリ(A)+ RNAを調製し、大規模シーケンスを行いました.

そして、配列タグをゲノム参照配列とエクソン-エクソン境界配列にマッピングして、すべての遺伝子の各エクソンについて、配列タグの相対頻度を野生型とunc-75変異体で比較し、unc-75変異体で使用頻度に差があると予測されるエクソンの一覧表を作成しました.

このうち約50個についてRT-PCR法により検証し、unc-75変異体でスプライシングパターンが変化する合計24の選択的スプライシングの事象を同定しました.これらはカセットエクソン型か相互排他的エクソン型のいずれかでした(図).カセットエクソン型には、UNC-75によりスプライシングが抑制されるものと促進されるものがありました(図左、中).

UNC-75標的エクソンの選択的スプライシングパターンの解析

UNC-75標的カセットエクソンの蛍光スプライシングレポーター線虫(NAR, 2013より)

unc-75変異体でスプライシングパターンの異常が確認されたカセットエクソンのうち4個について、蛍光スプライシングレポーター線虫を作製したところ、いずれも何らかの組織特異的な制御を受けることを見出しました(図上段).

これらのレポーターをunc-75変異体背景に導入すると神経系での制御のみが影響を受けたことから、UNC-75は標的遺伝子を神経系でのみ制御していることが確認されました(図下段).

UNC-75標的エクソン周辺配列のモチーフ検索

UNC-75標的エクソン周辺配列のモチーフ検索(NAR, 2013より)

見出されたUNC-75標的エクソンを、unc-75変異体でのパターンの変化からUNC-75によって抑制されるものと活性化されるものにグループ分けしました.

そして、それぞれのグループでエクソン上または隣接する上流と下流のイントロンの3グループに分けてそれぞれモチーフ検索をしたところ、抑制されるエクソンの上流のイントロンと促進されるエクソンの下流のイントロンに共通して、(G/U)UGUUGUG配列が濃縮していることが見出されました(図).

このモチーフが、unc-32遺伝子イントロン7aからUNC-75に特異的に結合すると生化学的に特定されたUUGUUGUGUUGU配列とよく合致している[8]ことは特筆すべき点です.

UNC-75標的エクソンの制御の(G/U)UGUUGUG配列依存性

UNC-75標的カセットエクソンの変異型スプライシングレポーター(NAR, 2013より)

上述のレポーター線虫を作製した4個のカセットエクソンについて、この(G/U)UGUUGUG配列を改変した変異型レポーターを作製した結果、上流イントロンの(G/U)UGUUGUG配列が選択的エクソンの抑制に、下流イントロンの(G/U)UGUUGUG配列が選択的エクソンのスプライシング促進に必要であることを確認しました(図).

また、ゲルシフト実験により、試験管内でUNC-75がこれらの(G/U)UGUUGUG配列に特異的に結合することを確認しました.

これらの結果は、生体において、CELF3-6サブファミリースプライシング制御因子UNC-75が結合するシスエレメントと標的エクソンとの相対的な位置関係によって、標的エクソンのスプライシングが抑制されるか活性化されるかが決定されることを示しています.

本研究成果の意義

本研究では、私たちの研究室でこれまでに単離されたスプライシング制御因子変異体のトランスクリプトーム解析を行い、生物情報学的解析と実験的な検証によって、制御因子の新規の標的遺伝子を多数同定することに成功しました.

そして、同定した標的遺伝子の配列情報を元に、制御因子が特異的に結合してスプライシングを制御するのに必要なシスエレメントを生物情報学的に予測し、蛍光スプライシングレポーターを作製して生体内で実験的に確認することに成功しました.

私たちはunc-75変異体以外にも生育可能な組織特異的スプライシング制御因子の変異体をすでに単離していますから、今後の研究でも同様の手法を用いることで、線虫の選択的スプライシングの標的遺伝子をより多く同定し、制御機構の規則性を明らかにできると期待されます.

文献

1. Dasgupta T, Ladd AN (2012) The importance of CELF control: molecular and biological roles of the CUG-BP, Elav-like family of RNA-binding proteins. Wiley Interdiscip Rev RNA 3: 104-121.

2. Gallo JM, Spickett C (2010) The role of CELF proteins in neurological disorders. RNA Biol 7: 474-479.

3. Roberts R, Timchenko NA, Miller JW, Reddy S, Caskey CT, et al. (1997) Altered phosphorylation and intracellular distribution of a (CUG)n triplet repeat RNA-binding protein in patients with myotonic dystrophy and in myotonin protein kinase knockout mice. Proc Natl Acad Sci U S A 94: 13221-13226.

4. Good PJ, Chen Q, Warner SJ, Herring DC (2000) A family of human RNA-binding proteins related to the Drosophila Bruno translational regulator. J Biol Chem 275: 28583-28592.

5. Ladd AN, Charlet N, Cooper TA (2001) The CELF family of RNA binding proteins is implicated in cell-specific and developmentally regulated alternative splicing. Mol Cell Biol 21: 1285-1296.

6. Milne CA, Hodgkin J (1999) ETR-1, a homologue of a protein linked to myotonic dystrophy, is essential for muscle development in Caenorhabditis elegans. Curr Biol 9: 1243-1246.

7. Loria PM, Duke A, Rand JB, Hobert O (2003) Two neuronal, nuclear-localized RNA binding proteins involved in synaptic transmission. Curr Biol 13: 1317-1323.

8. Kuroyanagi H, Watanabe Y, Hagiwara M (2013) CELF family RNA-binding protein UNC-75 regulates two sets of mutually exclusive exons of the unc-32 gene in neuron-specific manners in Caenorhabditis elegans. PLoS Genet 9: e1003337.