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コラム

英語の度量と日本語の度量

かつて米国に在留していた時、旅行先では子連れでも気兼ねがいらないファー
ストフード店に出かける事が多かった。だが、私はなんとなく苦手意識を持って
いた。店員が私のアイスクリームの注文を理解してくれなかったからである。私
の好みはバニラアイスクリームなのだが、渡されるのはいつもバナナアイスクリ
ームになってしまう。ある時、一計を講じて小学生の息子に注文を託したところ、
間違いなくバニラアイスクリームを手にすることが出来た。
職場の米国人同僚に顛末を話した所、笑いながら解説してくれた。Vanilla は
ヴァニーラでありバニーラではない。バニーラに一番近い商品がBanana、バナ
ーナだったからだよ、と。我が息子は地元の小学校で揉まれ、しっかり英語の発
音を身に付けており、その後もしばしば通訳を頼む事となった。しこうして、英
語は融通の利かない堅物で“度量”が狭い、というのが私の感想である。元来、日
本語にはva の発音がない。ところが、欧米語が入ってくると持ち前の器用さで
ヴァという表記を工夫した。しかし、いかにも面倒で、巷ではヴァに続くニラさ
えはっきり発音すれば、バニラをバナナと間違う事はない。我が日本語は実に寛
大で、ヴァニラもこだわりなくバニラで通用している。
事程左様に日本語は極めて“度量”が広いので多少の構音障害があっても苦労す
ることはない。実際、舌足らずの発音はむしろ「可愛い」くらいの感覚で社会に
受容されている。ところが、英米ではこうはいかない。英米人は発音の識別能が
極めて高いので曖昧音は許容されない。先ほどのva とba では下口唇の位置が、
l、r、th 等の発音は舌尖の位置が極めて重要であり、下口唇や舌尖の位置がずれ
ると単語そのものが通じなくなってしまう。舌小帯短縮症や、その疑いのある若
者が英語圏での活動を目指す場合には、是非一度舌小帯と舌機能の評価を受ける
ことを勧めたい。
余談だが、やはり米国在留中に電車に乗る必要が生じ、最寄りの駅で切符を購
入するため乗車区分を伝えた。それはEvanston という町名だったが、普段から
va にアクセントを付けて発音していたので、そのまま伝えた。ところが、何回繰
り返しても通じず、困り果ててしまった。ふとEvanston という町名の由来に考
えが及び、恐らくEvans Town だろうと想像してE にアクセントを付けて発音し
たところ、やっと切符を手にすることが出来た。密かに親指を立てて喜んだもの
である。しかし考えてみれば、我が日本語は地名であれば何処にアクセントを付
けようと大概通じるではないか。それに比べ、英語は実に頑固で“度量”の狭い言
葉だ。
(高木裕三)

[小児科と小児歯科の保健検討委員会構成メンバー(あいうえお順)]
伊藤憲春
日本小児歯科学会・ミルク小児歯科
井上美津子
日本小児歯科学会・昭和大学歯学部教授
太田百合子
管理栄養士・こどもの城小児保健部
小口春久
日本小児歯科学会・日本歯科大学東京短期大学学長
巷野悟郎
母子保健推進会議
高木裕三
日本小児歯科学会・東京医科歯科大学名誉教授
塙佳生
日本小児科医会・塙小児科
前川喜平
日本小児保健協会・慈恵会医科大学名誉教授
前田隆秀
日本小児保健協会・日本大学松戸歯学部教授
丸山進一郎
日本小児歯科学会・アリスバンビーニ小児歯科
水谷修紀
日本小児科学会・東京医科歯科大学大学院教授
吉田弘道
臨床心理士・専修大学文学部教授