第6号発刊の辞
東京医科歯科大学歯学部年報は今回で第6号となります。歯学部年報を発刊する発端は、平成3年大学審議会より答申された「大学教育の改善について」の中に大学の自己評価の必要性及び制度化がもられたことによります。
「大学は学問の府として自律的な教育研究が保障され、その創意によって常に教育研究水準の向上に努めることが社会的に期待されている。
大学が、教育研究水準の向上や活性化に努めるとともに、その社会的責任を果たしていくためには、不断の自己点検・評価を行い、改善への努力を行っていくことが重要であり、このため、大学設置基準において、各大学自身による教育研究活動についての自己評価に関する努力規定を定めることが適当である。」とうたわれています。
当時は新鮮であった自己点検・評価が7年を経過するとやや色あせてきたのは何故でしょうか。原因は多くの時間と労力を割いたにもかかわらず、その結果が生かされないという不満と同時に、もうやりたくないという無力感すら感じられるといわれ始めています。自己評価とは自らを点検評価して問題点を自ら是正するという、言うは易く行うは難いことを、恥の文化が背景にあればこれが可能であるという前提があればこそです。年報をよく読めば個人の業績は明らかに見えます。最初はこれにより各自の反省を促すことができたはずですが、残念なことに人間は狎れには弱いものです。ひらき直りもあります。かくして無駄なことをやっているのではないかと。その結果、今回本学歯学部でも実施することになりました外部評価(学外者に自己点検・評価の結果の検証を依頼する。)が近年導入されてきました。日本の社会が自律構造から他律構造へ変わっていくのを反映しています。これは本年になってますます拍車がかかり、大学審議会はその答申の中で客観的な評価システム(第三者評価)の導入を次のように提言しています。
「大学における教育研究活動について客観的な立場から評価を行う組織としては、大学団体、学協会、大学基準協会等が考えられ、それぞれの機関がその特質に応じた多面的な評価を行うことや、各大学が多様な個性を存分に発揮できるような評価が行われることが必要である。しかし、大学が社会的存在としてその活動状況等を社会に対して一層明らかにしていくためには、透明性の高い客観的評価を行うとともに、大学評価情報の収集提供、評価の有効性等の調査研究を推進するための第三者機関(例えば、大学共同利用機関と同様の位置付けの機関)を設置する必要がある。」
評価は決して容易な仕事ではありません。またプラスの面ばかりでもありません。しかし大学評価が世界的傾向にあるのは、公的資金(税金)に依存している大学は納税者への説明責任(アカウンタビリティ)を示す必要があること、公的資金は評価の結果に応じて配分され有効に活用する必要があること、そして評価は大学がその目標を達成し、場合によっては新しい方向へ転換するきめてであること、等が共通認識となっているからです。個人にとって評価の大事な点は評価を感情で受け入れることなく、理性で受け入れることでありましょう。本学歯学部が歯学のリーダーとしての責務を全うしていくためには、評価を向上の糧として新しい時代の構築に向けて努力しなければなりません。
平成11年1月 歯学部長 江 藤 一 洋