1)咀嚼リズム発生に関与する中脳網様体への入出力様式
Role of the mesencephalic reticular formation as the integration center responsible for the practice of mastication野崎修一
巨大細胞網様核吻側部
(GCo)へのHRP注入によって逆行性に標識されたニューロンは傍巨大細胞網様核背側部、外側小細胞性網様体背側部および中脳網様体(MRF)に見出された。このことは、これらの領域のニューロンがそれぞれGCoに直接投射している可能性を示している。そこで、咀嚼リズム発生に関与するMRFニューロンの入出力様式を検索した結果、MMAに存在するニューロンは、LHAからの直接投射を受け、GCoに直接投射し、この経路が摂食調節に関与している可能性が示唆された。
2)咀嚼時の顎,舌協調運動に関与する神経機構
Neural mechanisms involved in the cooperative jaw and tongue movement during chewing
野崎修一
咀嚼中に,咀嚼筋(
MM)および舌筋の協調運動が見られる.舌下神経運動核(HMN)に直接投射するプレモ−タニュ一ロン(PM)は,MMのPMと同様に,小細胞性網様核(PCRF)に存在し,咀嚼リズム発生器からリズミカルな入力を受け,HMNにリズミカルな興奮性出力を送っている,またその一部は顎二腹筋運動ニュ−ロンに同様の出力を送っており,これらのPCRFニュ−ロンが咀嚼時の顎,舌協調運動に関与していると考えられた.
3)血糖値および胃壁伸展刺激が咀嚼リズムに及ぼす影響
Effects of stretching the stomach wall and varying the blood sugar level on the induction of rhythmical jaw movements.
野崎修一,櫻井全
4)哺乳類味細胞におけるトランスダクション機構とセカンドメッセンジャー
The role of second messengers in taste transduction mechanisms in mammalian taste receptor cells
杉本久美子
パッチクランプ法および膜電位感受性蛍光色素を用いた光学測定を用いたマウス味蕾細胞からの記録により,旨味刺激のグルタミン酸ナトリウム(
MSG)は,選択性の低い陽イオンチャネルを活性化すること,および,そのチャネルを通ってCa2+が流入する可能性が示唆された.また,MSGの味神経応答を増強することが知られているモノヌクレオチドは外向き電流を増強し,Ca2+依存性のK+電流が増強された可能性が考えられた(日本味と匂誌, 3, 384-386, 1996).このことはMSGとモノヌクレオチドとの相乗作用に細胞内Ca2+濃度の調節が関与する可能性を提起する.
5)味覚感受性の加齢による変化
Changes in taste sensitivities related to age
杉本久美子
高齢者では味覚閾値が上昇することが知られているが,高齢マウス味蕾細胞の微細構造を電顕で観察すると,老化によると推察される細胞内空胞やリポフスチン顆粒の集積などが認められた(口病誌,
67,157,1995).また,高齢マウスの味蕾細胞では興奮性の低下も観察された.一方,ヒトでの官能検査により,小児(4-14歳)の味覚閾値を成人と比較したところ,塩味については幼児期でかなり閾値が高く生後徐々に発達することが示唆され,甘味については低年齢でも大人と同様の感受性を持つとの結果が得られた(日咀嚼誌,6, 30, 1996).
6)肥満抑制ホルモン”レプチン”によるマウス味細胞甘味感受性の調節
Modulation of sweet sensitivities by anti-obesity hormon
“leptin” in mice taste cells.河合桐男,杉本久美子