実施中のプログラム

浦山 ケビン

実験中のプログラム

photo
Q.高瀬さんの研究テーマは?

A.マウス精子幹細胞の増殖や分化がどのように制御されているのかを解明するために、シグナル伝達を介した細胞間の相互作用に着目して研究を行っています。我々の身体には、成体幹細胞と呼ばれる未分化な細胞群が存在します。その成体幹細胞は失われた最終分化細胞を供給しており、組織の通常のターンオーバーに加え、障害からの再生にも重要な生理的役割を担っています。成体幹細胞のうち、次世代に遺伝情報を伝えるという特殊な細胞群が生殖幹細胞です。線虫やショウジョウバエなどでは、オスでもメスでも生殖幹細胞を持っていますが、マウスやヒトなどの哺乳類では、オスのみが生殖幹細胞(精子幹細胞)を保持しています。精子幹細胞が正しい比率で増殖し分化することによって、一日あたり数万個の精子を作り出すことができ、その産生はオスのほぼ一生涯にわたって続きます。近年は不妊に悩むカップルが増加していると言われていますが、その原因は男性側と女性側でほぼ半々と考えられており、精子幹細胞制御の理解は男性不妊の理解へ直接的に繋ぐことの出来る研究テーマだと考えました。これまでに、古典的Wntシグナル伝達経路が精子幹細胞の増殖に寄与していることを見出しています。今後は、精巣内で発現している異なるWntファミリー分子の機能や、協調して機能すると予想している他因子との関連を、マウスモデルを用いて解明していきたいと思います。また、まだ構想中ではありますが、卵巣や着床に関わる研究にも着手していく予定です。

Q.関心を持ったきっかけは?

A.自然に恵まれた環境で育ったことも影響して、子どもの頃から生き物が好きでした。明確に目標を持ったのは、中学2年生のときに、環境ホルモンが生物に与える影響についてのテレビ番組を見たときになります。環境ホルモンは当時さかんにメディアに取り上げられていた話題で、環境中に流出した化学物質が野生生物に生殖異変を引き起こすという現象です。複雑で不可思議なものに見えていた「生物が生きる」という現象が、細胞・遺伝子・タンパク質・ホルモンといったミクロな単位によって美しく説明できるということが、当時の私にとってたいへんな衝撃でした。これをきっかけに生命への興味をより一層強く持つようになり、将来は生物について研究する仕事に就きたいと思うようになりました。

photo
Q.現在の研究は、どんなことに役立つのですか?

A.不妊治療や生殖医学に役立てて行ければと考えています。そのためにも東京医科歯科大学というたくさんの医学研究者の集まる環境で研究ができることは、大きなプラスになると考えています。実際に周産・女性診療科の先生方のご厚意で、体外受精、胚移植・顕微授精などの不妊に対する生殖医療が実際に行われている採卵室や培養室を見学させて頂き、顕微授精の技術に関するレクチャーをしていただく機会に恵まれました。これを機会に、以前よりもさらに明確に、自分の研究が医療の現場で活用されることを目標に感じることが出来ました。地道かつ自由な基礎的研究を展開することで、新しい知見を生殖医学にもたらせるように努力していきたいと思っております。

Q.テニュアトラックに応募したきっかけは?

A.留学先のスタンフォード大学での研究が3年半で区切りがつき、今までの成果を持って帰国し、日本の科学・医学に貢献したいと思いました。博士課程に在籍していたときは肝臓の幹細胞についての研究を行っていましたが、留学先ではテーマを変え、新しく生殖巣の研究を始めました。留学先では面白い研究ができましたが、まだまだ取り組み始めたばかりでもあり、帰国後もぜひ生殖医学について研究を続けたいと考えて日本での勤務先を探しておりました。タイミング良く、東京医科歯科大学の金井正美先生の研究室からテニュアトラック助教の応募があることを知り、すぐに応募しました。テニュアトラック制度は独立した研究者として挑戦できる素晴らしいシステムですので、採用していただけたことは幸運でした。また、留学先の研究室内では私だけが生殖巣の実験を行っていたため、技術的に難しい点も多くありましたが、疾患モデル動物解析学分野は研究室として生殖巣や着床の基礎研究を行っていますので、研究環境も申し分なく、同僚の先生方とのディスカッションもたいへん有意義です。

Q.将来的なキャリア設計は?

A.将来的には独立した研究室を主宰できるように、今後も研究者としてのキャリアを磨き続けて行きたいと思います。留学先で結婚した夫も研究者で、東京大学の研究室にいますので、夫婦ともに職場も近く、今回の異動で一緒に住むことができるようになりました。研究に理解のある家族が近くにいてくれることは、悩みも喜びも共有できるという点で、研究を進める上でも、心身の健康においても良い影響をもたらしてくれると思います。将来的には、妊娠・出産などのライフイベントが起こったとしても、研究者としてのキャリアを継続していくことを希望しています。もしかしたら、私自身が妊娠や出産などを体験することで、研究に対する新しい取り組み方やアイデアが浮かんでくるかもしれません。

photo
Q.テニュアトラックに対する満足感は?

A.若い研究者にとって恵まれた環境を提供してくれるシステムだと思います。自分ひとりでゼロから研究室を立ち上げるとなると、研究機器をそろえるだけでも時間と費用がかかりますし、やはり近くに相談できるメンターの先生や仲間の研究者がいることは心の支えにもなります。

photo
Q.東京医科歯科大学の雰囲気は?

A.皆さん親切かつフレンドリーで、すぐに研究室の雰囲気にもなじむことができて感謝しています。同じ研究室に先輩のテニュアトラック教員である鈴木仁美先生がおられ、研究についてのアイデアから実験に必要な手続きなど相談することも出来ます。テニュアトラック教員同士の交流も始まり、周囲の優秀な先生方と情報交換と切磋琢磨することが、レベルの高い研究を行ってゆくモチベーションにもなります。私はマイペースな性格ですし、マウスを用いた研究は結果が出るまでに時間がかかることも多いので、スピード感も重視して、有意義な研究成果を社会に発表できるように頑張りたいと思っております。

研究者プロフィール

photo

高瀬比菜子 Hinako M Takase

疾患モデル動物解析学分野/テニュアトラック助教/博士(理学)

平成20年3月 東京農工大学大学院 生物システム応用科学府生物システム応用科学専攻 博士前期課程修了
平成23年3月 東京大学大学院 理学系研究科 生物化学専攻 博士課程修了
平成22年4月 東京大学大学院 理学系研究科 生物科学専攻 発生再生研究分野 日本学術振興会特別研究員
平成23年10月 スタンフォード大学 医学系研究科 発生生物学専攻 Nusse研究室 日本学術振興会特別研究員
平成24年4月 スタンフォード大学 医学系研究科 発生生物学専攻 Nusse研究室 ポストドクトラルフェロー
平成26年4月 スタンフォード大学 医学系研究科 発生生物学専攻 Nusse研究室 日本学術振興会海外特別研究員
平成27年3月 東京医科歯科大学・大学院医歯学総合研究科・テニュアトラック教員(助教)

メンター教員名簿

  職名 氏名
研究領域に最も精通している当該部局の分野等教授 (主メンター) 大学院医歯学総合研究科医学系教授 金井 正美
最先端研究を行っている教員 (副メンター) 難治疾患研究所教授  仁科 博史
大学院医歯学総合研究科医学系教授 寺田 純雄

前のページヘ 主メンターのインタビュー