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浦山 ケビン

実験中のプログラム

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疫学研究を専門としており、人間の病気、特に子供の病気の発症に対して環境、生活習慣、遺伝要素がどのように影響を及ぼしているかの解明を目指して研究しています。この種の研究を行う際には、臨床医、疫学者、統計学者、遺伝学者、環境学者、社会学者などの学際的な専門家がチームを組んで行う必要があります。具体的には、私が現在焦点を当てて研究を進めているのは急性白血病と胆道閉鎖症で、どちらも子供に発病する重病です。研究はまだ初期段階にありますが、どちらの病気に関しても、患者さんとこれらの病気でない子供達の両者のDNAサンプルと質問表から得たデータを大規模に収集しています。集めたデータは、これらの病気の遺伝要因や環境要因を検証するために用います。

大人の慢性病の多くは、その原因が自分でコントロールすることが可能な生活習慣が長期的に積み重なった結果起こるのが普通ですが、それに対し、まだ幼いころに発症してしまう小児病は、自分がコントロールできない要因によって引き起こされる場合がほとんどです。小児病の発症は、妊娠前や妊娠中などに遡って起因している可能性があります。このように特に傷つきやすい立場にある子供達がこれらの重病を発症してしまう原因を理解し助けたいというのが私のモチベーションであり、研究テーマに関心を持ったきっかけでもあります。

一番の目標は病気とそれに伴う苦しみを減らすことです。言い換えれば、病気の予防です。疾病を予防するためには、いったい何がその病気を引き起こしているのかを知る必要があり、それを見つけ出すために研究に従事しています。例えば、子供が白血病になってしまうのは、なにか特定の化学物質が原因なのだろうか?と考えたとします。もしその化学物質が小児白血病発症の原因だという確かな科学的な証拠が得られれば、子供の生活する環境からその物質を取り除いたり、その物質に曝される度合いを減らすことで予防効果が期待できます。
さらに、その中でもある特定の遺伝子要因を持つ子供達だけがその病気の発症を誘発する化学物質の影響を受けやすいことがわかれば、根本的な生体メカニズムを理解することができ、その特定の条件にあてはまるグループ(子供達)を対象に効果的に予防策を講じることができるようになる可能性があります。

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この種の人口対象研究(population research)は、患者さんとそのご家族のご協力のもとで実現可能な研究です。小児白血病の研究では、関東圏の25ヶ所の病院の小児科と提携して患者さんにご協力を得ています。患者さんから集めさせていただいた数百にのぼるDNAサンプルをSNPジェノタイピングし、どの遺伝子マーカーが疾患リスクや予後に関係があるかをつきとめるためにゲノムワイド関連解析(GWAS)を行います。現在、質問表を用いてさらに大規模なデータ収集を計画中で、そのデータが集まれば、小児白血病の発症要因や患者さんの長期的臨床成果の決定要因に対するより包括的な疫学的評価が行えるようになります。

以前から、自分がデザインした研究を研究支援環境が整った組織で行え、さらには自分自身が専門家として成長できるとともに教員として教える機会も持てる学術機関で働きたいと願っていました。もし自国であるアメリカにいたとしたら、大学のテニュアトラック制の職が理想的な就職先だったと思います。2012年に日本に来てから、日本でもテニュアトラック制が導入され始めたことを知り非常に嬉しく思いました。世界的に名高い教授陣と研究・教育支援体制が整い揃っている東京医科歯科大学でのテニュアトラック講師は私にとって理想の職です。

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このテニュアトラック制の長所は、若手研究者が自立した研究者として独自の研究を行うことが奨励されている点、また研究支援体制の充実、研究資金の提供、メンター教授によるサポート体制、事務職員の支援など自立した研究が行いやすい環境が整備されている点だと思います。デメリットは特に思い浮かびませんが、あえて言うならば、5年後のテニュア審査に通らなければ雇用がそこで終了してしまうため、長期的雇用が保証されていない点でしょうか。

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東京医科歯科大学の組織にもキャンパスにも非常に感銘を受けており、教授陣やスタッフと出会い学ぶ機会が日々得られることを嬉しくありがたく思っています。自分の新しい職にスムーズに移行できているように思いますし、自分の研究もすぐにペースがつかめてくることと思います。日本人ではないので、まだ日本の大学での職場文化に、まだ完璧には慣れていませんが、周囲の人々が皆温かくサポートしてくださるので心から感謝しています。

科学的研究を前進させるためには、いろいろなレベルでのチームワークが必要です。国際的に研究者同士がアイディアやリソースを分かち合ったり、研究成果を共有したりすることも非常に大切な要素の一つです。特に私が研究対象としているような症例の比較的少ない疾患の場合には、世界各国の他の同様の研究と比較検討したり、さらには研究結果を結合させたりすることで、より正確な統計学的評価、有効な科学的解釈を得ることができます。将来的に自分の研究も、世界各国で行われている研究との共同研究の機会を創り出し、科学的発見の可能性を最大限に引き出せるようにしていきたいと思っています。

研究者プロフィール

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浦山ケビン Kevin Urayama

疾患多様性遺伝学分野/テニュアトラック講師/博士(疫学)

2000年 カリフォルニア大学サンディエゴ校 卒業
2002年 カリフォルニア大学バークレー校公衆衛生大学院修士課程 卒業
2009年 カリフォルニア大学バークレー校疫学研究科博士課程 卒業
2002年 カリフォルニア州公衆衛生局 オークランド環境健康研究課 専門研究員
2005年 オークランドこども病院研究センター 免疫遺伝学研究室 博士課程研究員
カリフォルニア大学サンフランシスコ校 分子疫学研究室 研究員
2009年 国際がん研究機構(IARC)遺伝学部門遺伝疫学グループ ポスドク
2012年 聖ルカ・ライフサイエンス研究所臨床疫学センター 上級研究員
2014年4月 東京医科歯科大学・大学院医歯学総合研究科・テニュアトラック教員(講師)

メンター教員名簿

  職名 氏名
研究領域に最も精通している当該部局の分野等教授 (主メンター) 大学院医歯学総合研究科医学系教授 田中 敏博
最先端研究を行っている教員 (副メンター) 難治疾患研究所教授 木村 彰方
大学院医歯学総合研究科医学系教授 森尾 友宏

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