実施中のプログラム

岡田 随象

実験中のプログラム

photo

「遺伝統計学」の研究です。遺伝子や環境などの組み合わせで、どんな表現型や形質、たとえば性別、血液検査の結果、身長、体重、病気、つまり「ある病気になりやすい・なりにくい」、「太りやすい・太りにくい」などの違いが現れるのかを、統計的に解析するのが、遺伝統計学です。

私たちの細胞の中には遺伝情報がゲノム(DNA)として保存されており、ゲノムはA(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)の4種類の塩基で構成されています。ヒトの1個の細胞の中には、約30億の塩基配列があります。

 

ゲノムを構成する塩基の種類はA(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)の4つしかありません。そこで、例えば各SNPについてGGを0、GAを1、AAを2というように数字に置き換えてゲノムを表すと、行列になります。こうすれば、数学の行列に対する基礎的な知識をもとに、膨大な遺伝子データを解析することができるのです。

遺伝統計学では、1人分でも膨大な遺伝子データを、1万人、10万人分も集めて、それを解析する「ゲノムワイド関連解析(genome-wide association study;GWAS)」という手法を用います。これによって、形質と関係する遺伝子(感受性遺伝子)を見つけ、病気の治療や新薬の開発などに役立てようと研究が進んでいます。

photo

ヒトの遺伝子の中には、まだ機能が良くわかっていないものが沢山あります。さらに、ヒトの遺伝子解析を進めて行くうちに、1個~数個の遺伝子だけの影響で、病気が引き起こされたり、体質が決められたりするような、単純なものではないことがわかったのです。

そんな中、2002年に、理化学研究所統合生命医科学研究センター(当時の遺伝子多型研究センター)が、数百人から得られた遺伝情報の中にある約10万個にのぼる「一塩基多型(SNP)」をコンピュータ解析しました。

これが世界で初めて開発された、遺伝子の全体的な傾向とヒトの形質についての関連性を確かめる手法で、「ゲノムワイド関連解析(genome-wide association study;GWAS)」と呼ばれ、現在では、遺伝子研究の主流のひとつになるほど、たくさんの研究が行われています。

SNPとは、ヒトゲノムの個人間での違いのうちで、集団での頻度が0.5%~1%以上のものをさします。現在までに約1500万個のSNPが同定されています。

私の研究は、1人のヒトゲノムの中にあるSNPデータを数千人、数万人分解析して、例えば、ヒトの肥満度を示す指標であるBMIと、どのような因果関係があるかを調べたりもします。

そうです。東アジア人が欧米人に比べて、軽度の肥満で生活習慣病になりやすいことがわかっており、実際に2012年に発表した研究では、その理由の一部を説明できるかもしれない成果を発表しました。

中国、シンガポール、台湾、韓国、および日本から集めた東アジア人集団27,715人を対象にSNPを解析した結果、意外にも、肥満リスクを高めるSNPの一部が、一方で2型糖尿病のリスクを下げていることがわかりました。これは、以前から疫学調査で言われていた「肥満は糖尿病リスクを上昇させる」という見解に必ずしも合致しないと考えられる内容でした。

photo

2013年12月に英国の科学雑誌『Nature』のオンライン版に、全世界10万人を対象にGWASを行い、関節リウマチの発症に関係している101個の感受性遺伝子領域を同定したことが掲載されました。

さらに101個のリウマチを引き起こす感受性遺伝子領域内の遺伝子が、白血病や原発性免疫不全症候群などを引き起こす感受性遺伝子と共通していること、炎症を引き起こすサイトカインシグナルに制御されていることなどが判明しました。

また101個の感受性遺伝子領域が同定されたことで、それらをターゲットとした新しいゲノム創薬の手法も見出すことができました。

もともと病気に苦しむ患者さんを救いたいという気持ちで医師を志しましたので、膠原病やリウマチの患者さんを診させて頂いた経験もあるので、国内に約80万人もいるリウマチ患者さんのために、私の研究が少しでも役に立ってもらえればと考えています。

私の研究は、電子顕微鏡を使ったり、実験動物を使うものではなく、黙々とコンピュータを使っています。

世界中でどんどん若手の研究者が素晴らしい成果を上げており、お互いに情報交換しながら、研究を進めています。世界の研究者が協力することで、よりたくさんのデータが集まり、より詳しく解析ができるので、世界中の研究者との交流はとても大切です。

コンピュータの解析ソフトの性能が向上したことと、情報通信網が発達したことで、コンピュータさえあれば、世界中とアクセスができ、好きな時間に研究ができます。

ちょうど2年間のアメリカでの研究期間が終了し、帰国したら、どこで研究しようか、迷っていたところでした。それで偶然、今回の公募を知り、応募しました。その際は御世話になった先生方にも相談してみましたが、テニュアトラック制に対する前向きなお返事を頂けたことも応募の決め手となりました。

テニュアトラック制の魅力は、予算の裁量権もあり、自由に研究ができるところ。そして既存の講座や領域が少なく、所属場所を見つけるのが難しい研究領域でも、研究が可能なところですね。

2年間の海外留学で学んだことは、独立した裁量権をもつ研究者でなければ、どんなに良い研究成果を出しても一人前の研究者として認めてもらえない、ということでした。テニュアトラック制を通じて若い研究者が裁量権を持つことができるのは、とても素晴らしいことだと思います。

私が専門としている遺伝統計学は、国内に研究者が少なく、研究施設もごく限られています。ですから、先輩の研究者を探すのが難しく、自分で新しい研究の道を切り開いていく必要があります。そのためにテニュアトラック制はとてもいい制度だと思います。

大いになります。特定の診療科や疾患に限らず、大学全体でバックアップして、電子カルテをはじめ、貴重なデータを一元管理するバイオリソースセンターに大きな魅力と可能性を感じました。世界的に見てもグレードの高い施設で、研究を進める上で、強い武器になると思います。

もともとのスタートが医師でしたので、臨床の現場への還元を常に念頭に置いて、病気に苦しむ患者さんを助けられる研究を進めて行きたいと思います。データ上の仮説だけでは、机上の空論に終わってしまう可能性もありますので、医師としての意識を持ち続け、研究成果を、臨床現場で実践的に生かせるような、研究成果を発表できるように精進します。

また、少し時間がかかるかもしれませんが、東京医科歯科大学に所属する学生さんに、遺伝統計学の魅力や可能性を理解していただき、一緒に研究を進めて行くパートナーを増やしていけたらと考えています。

研究者プロフィール

photo

岡田随象 Yukinori Okada

疾患多様性遺伝学分野/テニュアトラック講師/博士(医学)

2005年 東京大学医学部医学科卒業
2011年 東京大学大学院医学系研究科内科学専攻 博士課程修了
2005年 東京大学医学部附属病院 初期研修プログラム
2009年 東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター GCOE リサーチアソシエイト
2010年 日本学術振興会 特別研究員 (DC2, PD)
2011年 統合生命医科学研究センター 客員研究員
2012年 Research Fellow, Brigham and Women's Hospital, Harvard Medical School、Postdoctoral Fellow, Broad Institute、日本学術振興会 海外特別研究員
2013年11月 東京医科歯科大学・大学院医歯学総合研究科・テニュアトラック教員(講師)

メンター教員名簿

  職名 氏名
研究領域に最も精通している当該部局の分野等教授 (主メンター) 大学院医歯学総合研究科医学系教授 田中 敏博
最先端研究を行っている教員 (副メンター) 医歯学研究支援センター教授 中村 正孝
難治疾患研究所教授 石川 俊平

前のページヘ 主メンターのインタビュー