母子看護学

Department of Maternal and Child Health Nursing

（教授 保崎純郎 休職）

教授 上田礼子 助教授 松岡 恵

助手 ２名（１名 産休・育休）

大学院生 博士課程（後期）２名

博士課程（前期）５名 計７名

専攻生 ４名

母子看護学は小児保健看護と母性看護の２分野の教育・研究を担当している。1996年1月から保崎純郎教授が病気のために休職し、また、新山裕恵助手が9月から1997年3月まで産休・育休のために休業となった。1996年4月から小児保健看護領域には専攻生が3人となり、母性看護領域1人と合計4名である。人員の移動もあり、両領域の実践・研究・教育の統合は、果たされておらず、別個に機能している。

（1）教育

大学院博士課程前期１年および後期１年在籍者の研究指導を主として上田礼子教授が担当し、一方、大学院博士課程前期２年在籍者の研究指導は主として松岡恵助教授が担当した。

学部学生に関しては、小児看護学（疾病論、小児保健・看護領域）の講義、演習、実習を上田礼子教授と新山裕恵助手が責任教官として担当した。ただし、新山裕恵助手は9月から産休となったために臨時的対応がとられ、本年度は前年度とは異なる病棟実習を行った。学生実習は、学生のみではなく、職員や教官を含めて病院側と大学側双方にとってお互いに学ぶよい機会ともなりうることを経験したといえよう。一方、松岡恵助教授と河野洋子助手は、母性看護領域の講義・演習と実習を担当した。

（2）研究

教官は、それぞれ個別に研究に従事しており、共通した特定の研究テーマは設定していない。上田礼子教授は、乳児期から老年期までを視野に入れた生涯人間発達に関心があり、多面的アプローチを試みている。本年度は、乳児期から縦断的研究を継続している対象者が成人初期に達した時点で、被験者とその家族を対象とした調査を東京都において実施した。また、病院では小児科外来において大学院生とともに慢性疾患患児とその家族への支援活動を開始しており、臨床現場の中から新たな研究テーマを見いだしている。今後、病棟においても同様な活動ができるように種々の準備をすすめている。「生涯発達研究会」を毎月１回開催し、大学院生、専攻生と実践者を加えて共同研究を継続している。この研究会における目下のテーマは、「生涯を通しての人間のあそび・たのしみの意義」であり、「生きがいとあそび・たのしみとの関係」「たのしみ体験の性差・世代差」「あそび・たのしみ体験の内容」などについて実証的研究を行っている。今後、心理的外傷・疾病や障害との関係も系統的に検討したいと考えている。新山裕恵助手は、「がん患児と母親を支える看護」をテーマとしている。(文 責上田)

一方、松岡恵助教授は、「周産期・育児期の女性の看護ニードの明確化」と「助産婦の能力開発」が主なテーマであり、本年度は、全国規模の中堅助産婦の業務評価と能力開発に関する研究を終了し、キャリア開発に関する研究に発展させて継続研究をしている。また、毎月１回、河野助手とともに学部卒業生、専攻生、大学院生、他大学の看護系大学院生を加えて助産学の文献抄読会を開催している。さらに、更年期女性の保健指導に関して他大学と共同研究を行っている。河野洋子助手は「更年期症状とライフサイクルの関連」をテーマとしている。（文責松岡）

＜業 績＞

[原 著]

1. Ueda R,Ozawa M : Generation gap of pleasureful experiences in pre-schooland school years. Life-Span Development,1996;Vol.3:46-61

2. 前田和子，上田礼子：幼児の自己概念測定に関する予備的研究−Harter modelの日本への適用．茨城県立医療大学 紀要 1996；第1巻：7-15

3. 小林由夏，上田礼子：養育意識の世代差．茨城県母性衛生学会誌．1996；第15号：22-26

4. 澤田和美，上田礼子：入院中の病児を持つ母親のサポート資源．茨城県母性衛生学会誌．1996；第15号：27-30

5. 佐藤秀郎，太田尚子：ダウン症の告知に関する一考察．茨城県立医療大学紀要 1996；第1巻：1-6

6. 太田尚子：周産期に子どもを亡くした母親のグリーフ・ワークに関する研究−グリーフ・ワークに影響を及ぼす要因−茨城県立医療大学紀要 1996；第1巻：39-46

7． 松岡恵，平澤美恵子，熊沢美奈好，佐々木和子，木村千里：施設における中堅助産婦の業務に関する調査−婦長の業務評価と中堅助産婦の臨床能力 自己評価の実態．助産婦雑誌 1996；50(1)：21-28．

8 松岡恵，平澤美恵子，熊沢美奈好，佐々木和子，木村千里：施設における助産婦の業務拡大に関する調査．母性衛生 1996；37(4)：346-350．

9． 河野洋子，清水由美子，松岡恵，麻生武志：更年期症状に対する対処行動の実態．母性衛生 1996；37(4)：416-422．

10． 木村千里，松岡恵：父親の分娩への没入行動の変化と助産婦の言語的かかわり．日本助産学会誌 1996；10(1)：29-35．

[総 説]

1. 上田礼子：生涯発達学の基本的な考え方． 総合リハビリテーション 1996；24(7)：639-644

2. 上田敏，上田礼子：運動機能の生涯発達．総合リハビリテーション 1996；24(9)：829-834

3. 上田礼子：乳幼児期から学童期までのこころの発達．はげみ−手足の不自由な子ども達・増刊 1996；674：4-10

4. 澤田和美，山崎慶子：(調査研究)看護婦の勤務体制が患者に及ぼす影響．看護管理 1996；6(8)：572-578

5． 松岡恵：助産婦の立場から見た子育て不安−不安の質の変化．現代のエスプリ 1996；342：33-37．

[著 書]
1. Ueda R : Dynamics of Human Development,A comparative-longitudinal studyin three different districts in Japan, Taga Shuppan,1996

2. 保崎純郎(分担執筆)：小児科学−コンパニオン−(矢田純一 編集)．文光堂 1996；207-210，493-508

3. 安酸史子，松原まなみ，澤田和美，掛本知里，小田和美 (訳)：ナースのための患者教育と健康教育．医学書院 1996；151-201，262-291

4. 松岡恵：母親．青木康子，加藤尚美，平澤美恵子編［助産学大系 第６巻 母子の心理・社会学 改訂第２版］日本看護協会出版会，1996，165-209．

[学 会]

国際学会

1. Hanaoka M : Responses of mothers of disabled infants to the JapaneseI Feel Picture Test(JIFPT)．World Association for Infant Mental HealthSixth World Congress, Finland, 1996

2. Ueda R,Ozawa M : Definition of Play and Pleasureful Experience among three generations in Japanese people. X�V IPA World Conference, Espoo,Finland, 1996

3． Matsuoka, M., Hirasawa, M., Sasaki, K., Kumazawa, M., & Kimura,C., : Evaluation of hospital midwives work and the development of burnoutsyndrome, International Confederation of Midwives 24rd Triennial Congress,Oslo, Norway, 1996

国内学会

1. 小口澄子，上田礼子，吉川千恵子，仲里幸子：３世代同居家族の意識と行動−性役割観を中心に．第61回日本民族衛 生学会，岡山，1996．

2. 池田紀子，小澤道子，上田礼子：生涯発達的視点からみたあそびの意義−老年期の「たのしみ」経験と自己概念．第61回日本民族衛生学会，岡山，1996．

3. 小澤道子，上田礼子，池田紀子：生涯発達的視点からみたあそびの意義−「たのしみ」経験と生きがい．第61回日本民族衛生学会，岡山，1996．

4. 前田和子，上田礼子：茨城県小学生の自己概念にみられる地域差−市部と農村部との比較．第61回日本民族衛生学会，岡山，1996．

5. 小澤道子，上田礼子，池田紀子：高校生の生活時間とたのしみ． 第43回日本学校保健学会，郡山，1996

6. 前田和子，上田礼子：健康障害のある小学生の自己概念−自己評価と教師評価との比較．第43回日本学校保健学会， 郡山，1996

7. 宮澤純子，上田礼子：保育園経験者と乳児の能力に対する認知．第49回日本保育学会，松戸，1996

8. 小澤道子，上田礼子：保育学生の子ども時代のたのしみ体験(3)祖母・母・娘．第49回日本保育学会，松戸，1996

9. 松本友子，上田礼子：１保育園児の親の養育態度−10年間の変化、家庭における養育と遊びを中心に． 第43回日本小児保健学会，横浜，1996

10. 小澤道子，上田礼子：子ども時代のたのしみ経験とたのしみ度合．第43回日本小児保健学会，横浜，1996

11. 宮澤純子，上田礼子：性役割観とそれに関連する要因−保育園経験者から 第43回日本小児保健学会，横浜，1996

12. 澤田和美，上田礼子：強靱性(Resilience)の発達に関する研究−入院中の乳幼児と母親の養育性． 第43回日本小児 保健学会，横浜，1996

13. 小室佳文，上田礼子：保育園児の母親の育児用品に対する意識と行動．第43回日本小児保健学会，横浜，1996

14. 池田紀子，上田礼子：ダウン症児の親のたのしみ経験．第43回日本小児保健学会，横浜，1996

15. 澤田和美，上田礼子：入院中の病児を持つ母親のサポート資源．第16回茨城県母性衛生学会，水戸，1996

16. 小林由夏，上田礼子：養育意識の世代差．第16回茨城県母性衛生学会，水戸，1996
17. 新山裕恵：がん患児を支える母親の内的過程−発病期から末期以前まで−第12回日本小児がん学会，東京,1996

18． 熊沢美奈好，松岡恵，平澤美恵子，佐々木和子，木村千里：ドレファスモデルによる中堅助産婦の臨床能力の自己評 価，第10回日本助産学会，名古屋，1996．

19． 木村千里，松岡恵：父親の分娩への没入行動の変化，第10回日本助産学会，名古屋，1996．

20． 松岡恵：ワークショップ−助産婦の将来像 今後10年間の助産婦の達成課題．第10回日本助産学会，名古屋，1996．

21． 島村可奈子，松岡恵：出産後二週目と四週目に初産婦が行う家事の変化．第14回東京母性衛生学会，東京，1996．

22． 上田恵子，松岡恵：初産婦の出産後１カ月間の疲労度と家事援助の実態．第37回日本母性衛生学会，仙台，1996．

23． 河野洋子，茅島江子，宮腰由紀子，松岡恵，福渡靖：更年期女性のライフスタイルと更年期症状との関連．第55回 日本公衆衛生学会，大阪，1996．

[研究助成金]

1. 上田礼子：「リスク児(者)」のresilienceとサポート・システムに関する研究：20年間の縦断的アプローチ． 平成8年度文部省科学研究費補助金基盤研究(c)

2. 澤田和美：発達のresilienceに関する研究．平成8年度山路ふみ子専門看護婦教育研究助成基金

3. 新山裕恵：がん患児を支える母親の内的過程−発病期から末期以前まで−文部省科学研究費助成金(奨励研究Ａ)

[その他]

1. 上田礼子：DENVER�UとJDDST(日本版デンバー式発達スクリーニング検査)との関係．作業療法ジャーナル 1996； 30(12)：1158-1159

2. 上田礼子 監訳：臨床発達心理学 1-26巻，ジェムコ出版 1996

3. 生涯発達研究会(代表 上田礼子)：生涯発達研究，第3号，1996

4. 澤田和美(分担)：看護サービスの安定した提供体制に関する研究．平成7年度厚生省看護総合対策研究事業報告書， 1996

5. 松本友子：講演 乳児の養護と生活．厚生省日本保育協会，大磯，1996

6. 松本友子：講演 乳児の遊び．群馬県児童課，高崎，1996

7． Kim,C.J., 松岡恵, 中村めぐみ, 斉院由紀子 :パネルディスカッション 修士課程におけるクリニカル・トレーニン グ、第28回聖路加看護大学公開講座，東京，1996．

8． 平澤美恵子，松岡恵，熊沢美奈好：特集 がんばれ中堅助産婦「座談会 調査結果をどう読みとるか」．助産婦雑誌 1996；50(1)：2935．

9． 堀内成子，松岡恵(ききて)：聖路加看護大学に母性看護・助産学ＣＮＳコース来春開講 堀内成子教授インタビュー． 助産婦雑誌 1996；50(12)：986-992．

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