精神保健看護学

Department of Mental Health and Psychiatric Nursing

教授 小見山實、栗栖瑛子
助手 1名
大学院生 博士後期課程 1名
博士前期課程 3名

(1)教育

1) 学部:精神科系看護学(疾病論)では精神障害に関して診断、症候学、治療などを学ぶが、とくに基礎的な事柄の理解に重点をおき、また患者をひとりの人間として全体的に把握するようにしている。精神保健については、ライフ・サイクル及び生活の場における精神保健上の諸問題をとりあげる。

精神科看護学ならびに地域精神保健看護学では近年大きく変化しつつある精神医療の動向を踏まえて、ノーマライゼーションの考えに立脚した精神科看護を学ぶ。具体的には、急性期から回復途上にある精神障害者ならびに精神障害者を支援する人々が、それぞれの過程で必要とする看護上の問題を取り上げ、その支援のあり方を学ぶ。

2) 大学院(修士課程):精神保健、精神科看護学、精神医学の領域における基本的な理論や方法論を学ぶ。また、精神保健看護の領域における研究方法ならびに援助の展開や評価方法などについて専門職として必要な知識を学ぶ。今年度から、臨床の場での看護実践事例検討を定期的に行い、個々の精神障害者の理解の質を高めると共に、問題発見・解決能力を培う試みを行っている。

(2)研究

1) 精神障害の臨床精神病理学的研究

内因性精神病や神経症、特に精神分裂病について、現象学的人間学ないし解釈学的現象学の立場からその本態の解明を試み、それに基づいて精神療法的アプローチを行っている。主なテーマは妄想、自我障害、身体性の病理であるが、さらに分裂病者における間主観性、仮面性の問題もとりあげている。またこうした研究をとおして疾病学的問題を検討しているが、さらに疾病分類困難な症例も対象としている。

2) 精神保健看護、社会精神医学に関する研究

ライフ・サイクルおよび生活の場(家庭、学校、職場)における精神保健看護、精神病理現象、地域精神保健看護、リエゾン精神保健看護を対象としている。特に最近の企業におけるうつ病の増加とその形態変化に関心があり、調査・研究を行っている。またがん告知、ターミナル・ケア、自殺、精神病者の死の意識など現代において問われている生と死の問題について精神医学的なアプローチをしている。
精神科看護の領域では、看護者の現任教育の問題点、看護者の精神保健と患者−看護者関係、精神障害者に対する偏見及び看護実践の評価(例えば精神科訪問看護の有用性など)などを中心とした研究、また、慢性期精神障害などの症例への看護支援に関する研究を行っている。

3) 創造性の病理に関する研究(病跡学、表現病理学および芸術療法)

この領域における一般的な問題(妄想と絵画など)と個別的な作家(アンソール、ノルデなど)について研究を行っている。現在、表現病理における仮面、力動性などの問題がテーマである。

業 績

[原 著]

1. 右京チヨ,佐藤三枝子,茶谷知代,栗栖瑛子:精神科訪問看護を受ける精神分裂病者の予後について.QualityNursing.1996;2(8):700-707.

2. 長井暢子,栗栖瑛子:「患者−看護者」関係についての一考察.Quality Nursing.1996;2(11):981-989.

3. 國生拓子:境界例水準の思春期強迫神経症患者に対する限界設定についての考察,日本精神保健看護学会誌.1996;5(1):15-22,

[著書・訳書]
1. 小見山實,大森健一,中根晃,宮本忠雄編:生と死の精神病理.岩崎学術出版.1996

2. 小見山實:ICD−10をめぐって.上島国利編:精神分裂病をめぐる最近の話題3.ライフサイエンス出版.1996

3. 宮本忠雄,小見山實監訳:アンリ・エー 幻覚V,「線形」病態発生論,金剛出版.1996

[その他]

1. 國生拓子:転移・逆転移,月刊ナーシング ,1996;16(12):70-76.

2. 國生拓子:睡眠の機能とその障害について,精神科看護,1996;55号:39-43.

3. 國生拓子:地域リハビリテーションにおける看護婦の役割について考える,精神科看護,1996;55号:15-22.

4. 國生拓子:精神科入院患者の成人病及び身体合併症に関する疫学的調査とその看護援助に関する研究.平成8年度財団法人笹川医学医療研究財団助成金

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