(11)癒しの生化学・分子生物学
Biochemistry and Molecular Biology for
Healing
大 城 聰
1 科目の概要
ストレスおよび高齢社会にあるわが国は中高年の国民の3〜4人に1人がメタボリック症候群になるといわれており、平均寿命の上昇とともに高齢者の神経変性疾患も増えて来ている。遺伝要因に加えてストレス、加齢、生活習慣が原因と考えられる。今後、メタボリック症候群や神経変性疾患予備軍に対する予防と治療の改善が望まれる。「癒し」とは精神的、肉体的刺激から苦痛を軽減させること、或いは病気や傷を癒すことであり、煩いと患いの予防と治療を意味する。生体はストレス刺激を細胞内へ伝える情報伝達系、ストレス刺激から個体を保護する(癒す)独自のメカニズムを持つ。この理論を理解することにより個体へのストレス刺激を消去あるいは抑制する(癒す)物質の性質などを生化学および分子生物学レベルで理解することができ、生活習慣病やメタボリック症候群、神経変性疾患の予防、治療の理論の習得、これを基盤として新薬や機能性食品の開発などに応用することができる。
2 教育方針・教育目標
生化学、分子生物学の知識をベースにしてストレスの刺激がどのようにして細胞内に情報が伝えられるか、ストレス刺激によって糖尿病、心疾患、神経変性疾患などの生活習慣病(メタボリック症候群)がどのようなメカニズムによって発症するか、生体はストレスに対してどのような防御(癒し)機構を持っているかを学び、医学に於ける生化学、分子生物学を学ぶ意義とその重要さを理解することを目標とする。
3 教育内容
生化学、分子生物学の基礎知識に基づいて、様々なストレス、ストレスのシグナル伝達系、様々な
ストレス刺激による生活習慣病(糖尿病、心疾患、神経変性疾患など)発症のメカニズム、ストレス
刺激に対する保護機構、疲労と癒しの生化学・分子生物学、生活習慣病治療薬の作用メカニズムにつ
いて最新の報告も交えながら生活習慣病の予防について分かりやすく解説したい。講義を通じて我々
の生活に身近なダイエットやフィットネスの意味,機能性食品の開発,新薬と創薬との関連についても 触れたい。
回数 |
日 時 |
項 目 |
内 容 |
担当者 |
1 |
10/2(木) |
ストレスと刺激 |
ストレスと刺激種類、ストレス及び刺激の シグナル伝達系 |
大城 聰 |
2 |
10/9(木) |
ストレス応答蛋白質 |
ストレス応答蛋白質の生化学・分子生物学 |
〃 |
3 |
10/30(木) |
ストレスと生活習慣病 |
生活習慣病の
生化学・分子生物学 |
〃 |
4 |
11/6(木) |
ストレスと メタボリック症候群 |
肥満(メタボリック症候群)生化学・分子生物学 |
〃 |
5 |
11/13(木) |
ストレスと神経変性疾患 |
ストレスによるアルツハイマー病発症の メカニズム |
〃 |
6 |
11/20(木) |
ストレスと神経変性疾患 |
ストレスとパーキンソン病発症のメカニズム |
〃 |
7 |
11/27(木) |
老化 |
老化のメカニズム |
〃 |
8 |
12/4(木) |
疲労と香り |
疲労と香りの生化学・分子生物学 |
〃 |
〔単位〕選択1単位
〔場所〕保健衛生学講義室3(医歯学総合研究棟8階)
4 教科書・参考書
教科書は特にないが,以下の参考書と最新の学会誌の総説、シンポジウムなどの学会報告を使用する。
1. アポトーシスがわかる。田沼靖一 羊土社
2. 細胞内シグナル伝達がわかる。 山本 雅,秋山 徹 編 羊土社
3. バイオ研究イラストマップ 佐々木博巳 羊土社
4. 日本神経化学会、日本生化学会、日本薬学会誌の総説、要旨集など
5.活性酸素とシグナル伝達 レドックス制御と生物の生存戦略 井上正康編 講談社サイエンティフィック
6. 老化がわかる。 井手利憲 羊土社
7. 生活習慣病の最前線 岡 芳知ら 中山書店
8. 酸化ストレス 市川敏一編 医学のあゆみ 医歯薬出版
5 生化学,分子生物学,生理学,臨床化学とはかなり関連があり,周辺専門科目の要となるオーバー
ラップするテーマが含まれる。
6 受講上の注意
生化学、分子生物学のがどのように研究や治療,病気の予防に役立つかを常に意識して受講して
貰いたい。
7 成績評価方法
学期末筆記試験の結果を中心に、講義などへの積極的な参加態度・姿勢も評価に加える。