保健統計学

Health Statistics

 

田 中   博

 

1 科目の概要

本科目では保健科学における医学統計を扱う。与えられたデータからどのように指標となる値を導き出し,結果としてデータを提供した対象(患者等)にどのような判断を下したらよいかを,推測統計学的手法を用いて講義する。

授業では,医学統計とはそもそも何かから始まり,データの種類・統計の種類,統計における基礎的な指標,推測統計学の考え方,計量データ・計数データの解析と順を追って説明を行う。また,現在の統計処理では欠かせない,統計パッケージ(SAS)を用いたパソコン実習も併せて行う。

 

2 教育方針・教育目標

調査研究とは,自らが計画し,自らが実験あるいは調査し,そこで得られたデータを自らが分析し,将来の行動の基盤となる結論を得る過程である。

医学・医療分野における調査研究では,対象が生体であるため,一つ一つのデータは揺れが大きく,厳密な意味を求めようとすればするほど,何も言えなくなってしまう。そこで,得られた個々のデータを,一定の条件の下に分類したデータの集まりと考え,その集まりに対し統計的推論Statistical Reasoning)を行なうという方法が取られる。本科目の目標は,保健医療分野における何らかの認識を得るため,この統計的論証を修得することに置かれている。

 

3 教育内容

以下の項目について講義および演習を行う。

回数

日 時

項  目

内  容

担当者

1

4/11(金)

2

医学統計の基礎

推測統計学の考え方,データの種類,母集団と標本,正規分布,標本統計量,推定と検定,バイアスの種類

田中 博

2

4/18(金)

2

計数データの解析I

色々な確率分布(二項分布等),比率の検定,2×2分割表, クロス集計, 帰無仮説・対立仮説,χ2検定,Fisherの正確検定, Mcnemerの検定

3

4/25(金)

2

計数データの解析II

4

5/9(金)

2

計量データの解析I

2つの集団の標本平均の比較(StudentのT検定,WelchのT検定,paired T検定,Wilcoxonの順位和検定)

3つ以上の集団の標本平均の比較(一元配置分散分析, Kluscal-Wallisの検定)

5

5/16(金)

2

計量データの解析II

6

5/23(金)

2

パソコン実習I

統計パッケージを用いたデータ解析の演習

7

5/30(金)

2

パソコン実習II

8

6/6(金)

2

計量データの解析V

二元配置分散分析, 多重比較, データと統計手法

〔単位〕必修1単位

〔場所〕保健衛生学講義室1(医歯学総合研究棟18階)ほか

 

4 教科書・参考書

参考書として

丹後俊郎 新版 医学の統計学 朝倉書店 (著者・出版社同)統計学のセンス

 

5 他科目との関連

公衆衛生関係とくに疫学(3年)と関連が深い。コンピュータとの関連では,情報科学(1年),医療情報学(2年)の受講が必要である。

 

6 受講上の注意

看護学専攻の学生には,高校時代,数学のカリキュラムが少なかった者も見受けられる。本科目では,高度な数学の知識は要求されないが,数学Aの確率、数学U,Bの数列、微分・積分程度の基礎的な記号や式などの意味は理解されているという認識の下で授業を進める。不安がある者は,教養課程や高校時代の教科書などを読み返し,授業に臨むことを勧める。(高等学校における履修者は非常に少ないと思われるが)特に数学B,数学Cの統計関連分野などに目を通しておくこと。

 

 

本科目で用いられる数式の例:

           

 

7 成績評価方法

出席状況及び筆記試験で評価する。筆記試験は学期末に行い,合格点に満たない者には再度試験を行う。