母性看護学
Maternal and Infant Nursing
松 岡 恵
1 科目の概要
母性看護学は,人間の健康を性と生殖の側面から考え,看護的な援助が必要な状況や援助方法を理解する科目である。ここでは主に,妊娠・分娩・育児期の女性と新生児期のこども,および家族の看護課題と看護援助に関する基本的な知識を習得する。さらに,性と生殖に関わる健康課題について,女性だけでなく男性をも看護の対象に含め,地域社会における看護展開,多様な文化背景や価値観を考慮した看護展開を考える視点を養う。
2 教育方針・教育目標
母性看護学の対象,特に妊産褥婦と新生児の身体的・心理的・社会的特徴を理解し,健康の保持増進,正常からの逸脱の予防のための看護の基本的な考え方を理解する。さらに,看護計画の立案,実施・評価を行うための基本的な知識を習得し,健康状態のアセスメントが行えることを目標とする。
3 教育内容
回数 |
項 目 |
内 容 |
担当者 |
1 |
対象論(オリエンテーション含) |
母性看護学の対象の特徴,考え方の特徴を理解する |
松 岡 |
2 |
母性概念の再検討 |
母親役割,母性性等の母親概念に関する社会通念と現実の母親の認識を理解する |
松 岡 |
3 |
妊娠初期の女性と胎児への看護 |
妊娠の診断・及び妊娠初期の女性と胎児への看護を理解する |
松 岡 |
4 |
妊婦ケースと看護過程 |
妊婦事例をもとにアセスメントの方法とケアの必要性を理解する |
三 隅 |
5 |
女性生殖機能 |
月経周期を支配する内分泌環境の変化を中心に生殖機能を理解する |
久保田俊郎 (医学科) |
6 |
胎児胎盤系の生理 |
胎盤の形態,機能を知り,妊娠中の胎児環境の維持と検査方法を学ぶ |
清水康史 (医学科) |
7 |
妊娠期の生活適応 |
妊娠期に母体に生じる身体的反応とそれへの適応を理解し看護援助を考える |
松 岡 |
8 |
妊娠中期・末期の看護 |
増大子宮による女性の身体反応を理解し健康増進への援助を考える |
松 岡 |
9 |
異常妊娠@ |
妊娠初期,中期に発生する主な異常を知り,その診断・治療方法を理解する |
小坂元宏 (医学科) |
10 |
不妊治療・出生前診断 |
最新の不妊治療と出生前診断の原理,方法,課題について理解する |
清水康史 (医学科) |
11 |
正常分娩 |
正常な分娩経過を理解する |
三 隅 |
12 |
異常妊娠A |
妊娠初期,中期に発生する主な異常を知り,その診断・治療方法を理解する |
小坂元宏 (医学科) |
13 |
分娩中の変化と看護 |
分娩経過のアセスメント,基本的ニードの充足への看護援助の原則を学ぶ |
三 隅 |
14 15 |
異常分娩@,A |
分娩時に発生する産道の異常及び胎児とその付属物の異常,娩出力の異常及び分娩直後に発生する異常について理解する |
宮坂尚幸 (医学科) |
16 |
分娩期の看護過程 |
産婦のアセスメント技法を理解し,安全・安楽のための看護を考える |
清 水 |
17 |
新生児の看護 |
新生児の特徴とケアの原則(ケアの根拠)を理解する |
島美奈子 (賛育会病院) |
18 |
産褥早期の退行性変化と看護 |
産褥早期の身体的変化について理解し必要な看護を考える |
三 隅 |
19 |
母乳栄養 |
妊娠中・分娩後の内分泌環境の変化と母乳の分泌の機序を理解する。 |
井村真澄 (国際医療福祉大学) |
20 |
褥婦の関連図と看護過程 |
褥婦の身体心理社会的特徴をふまえた看護支援の方法を考える |
三 隅 |
21 22 |
新生児の生理・異常 |
母胎外生活への適応過程としての新生児の生理的変化を理解する。またその過程で生じやすい異常およびその徴候と予防を学ぶ |
山南貞夫 (川口市立 医療センター) |
23 |
授乳に関する看護 |
母乳栄養確立のための母親・新生児双方のアセスメント・看護援助の考え方を理解する |
井村真澄 (国際医療福祉大学) |
24 |
避妊と人工妊娠中絶 |
避妊法の原理と利用頻度,人工妊娠中絶実施状況を知り,今後の課題を理解する |
清 水 |
25 |
育児期の夫婦 |
育児期の夫婦の問題と問題解決に向けた相互作用を促すケアについて考える |
塩野悦子 (宮城大学) |
26 |
周産期の継続ケアシステム |
周産期における看護の継続ケアの実際について理解する。継続的な分娩期ケアを行うための看護職の役割について考える |
岡本美和子 (日本体育大学女子大学短期大学) |
27 |
実習オリエンテーション |
実習に向けての学生自身の準備について説明する。 実習病院の看護理念について理解する。 |
松岡,伊原, 三隅,清水 |
〔単位〕必修3単位
〔場所〕保健衛生学講義室2(医歯学総合研究棟8階)
4 教科書・参考書
・松岡 恵 編著:やさしく学ぶ看護学シリーズ6 母性看護学,日総研.
・山内逸郎:新生児,岩波新書339.
・WHO,(戸田律子訳):WHOの59カ条 お産のケア実践ガイド,農文協,1997.
・Doenges,M.E.&Moorhouse,M.F.(柴山森二郎監訳):看護診断にもとづく母性・新生児看護ケアプラン,医学書院,1998.
・Karen M Stolte,(小西恵美子・太田勝正訳):健康増進のためのウェルネス看護診断,南江堂
・阿部真理子:産む側2200人が語る お産ってなんだろう,阿部真理子(ぐるーぷ・きりん),1999.
・ 本庄英雄,宮中史子:周産期エキスパートナーシング 改訂第2版,南江堂,2003.
・ 堀内成子:産褥・退院支援ガイドブック,ぺリネイタルケア2003年夏季増刊,メディカ出版,2003.
・ トマス・W・サドラー:ラングマン人体発生学 第7版,医学書院MWY,1997.
・ マレー・エンキン,他:妊娠・出産ケアガイド,医学書院,1999.
・ 平山宗宏:母子健康・栄養ハンドブック,医師薬出版,2000.
その他,講義の進行の伴い,参考文献を提示する。
5 他科目との関連
この科目は,母性看護学演習と同時に受講することを前提として計画され,後期の母性看護学実習を行う上で必須の基礎知識を学ぶ科目である。他の看護専門科目で学習した看護理論,看護過程の考え方などを十分理解した上で参加していただきたい。
また,この科目及び母性看護学演習の単位を取得していない場合,母性看護学実習には参加できない。
6 受講上の注意
講義では,学生に問題を投げかけ,学生がそれについて意見を出し合う時間を多く持つ予定である。自分の意見を積極的に述べ,他者に論理的に説明する能力を高める努力をしてほしい。
7 成績評価方法
学期末試験,レポート,平常点から総合的に評価する。