(2)免疫応答の原理

Principles of Immune Responses

鍔 田 武 志

1 科目の概要

免疫系は神経系とともに高次機能をつかさどり,その主要な機能は,自己成分を攻撃することなく,また,環境中の様々な無害な成分には反応せずに,病原微生物やがん細胞に正確に反応してこれら排除することにより,生体を感染や発癌から守ることである。このような免疫システムを理解し,応用するには,多くの問題に答える必要がある。たとえば,免疫系はどのような機構でありとあらゆる病原微生物に反応できるのか?どのような機構で自己成分には反応しないのか?どのようにして免疫系は正確に抗原を認識できるのか?アレルギーはどのようにしておこるのか?免疫系はがん細胞をどのような機構で排除するのか?等の問題である。

近年の分子生物学のめざましい進歩により,免疫系においても種々の制御機構が分子レベルで理解できるようになり,また,発生工学の手法も導入され,免疫システムについての種々の問題のなかには,十分な解答がえられたものも少なくない。しかしながら,その情報量は膨大であり,ややもすると免疫システムを理解する上での中心的な問題を見失いがちである。そこで,本コースでは,テーマを免疫応答の原理にしぼり,免疫システムとは何かについて議論する。

2 教育方針・教育目標

本コースでは,免疫システムの中心的な課題を再認識し,それに対して現在の科学があたえうる解答を理解することにより,免疫システム(あるいは,より広く医学生物学)を理解し,それを活用していく際の姿勢を身に付けることを目標にする。

3 教育内容

上記のような免疫学に関わる基本的な問題について,その問題の意義とこれまでの免疫学の成果について解説する。あまり細かな知見にはこだわらず,鍵となる現象とその意義について述べる

回数

日 時

項  目

内   容

担当者

1

6/6(月)

1

免疫応答の意義

生体にとっての免疫応答の意義を考える

鍔田武志

2

6/13(月)

1

抗原認識

免疫系が抗原を特異的に識別できる仕組みを理解する

3

6/20(月)

1

自己トレランス

なぜ,免疫系が自己成分に反応しないか考える。

4

6/27(月)

1

環境抗原との反応

なぜ,免疫系が環境抗原に反応しないか考える

5

7/4(月)

1

免疫制御

共刺激分子の制御により免疫応答を有効に制御できることを理解する

6

7/11(月)

1

自然免疫と獲得免疫の協調

自然免疫と獲得免疫が協調して生体を防御する仕組みの概略を理解する

〔単位〕選択1単位

〔場所〕保健衛生学講義室3(医歯学総合研究棟8階)ほか

4 教科書・参考書

なし

5 他科目との関連

本講義では,個々の知見にはこだわらず,免疫システムの基本原理を理解することを目標にする。免疫学の知識については,免疫検査学で学ぶ。


6 受講上の注意

講義内容の理解につとめること。不明な点は質問すること。

7 成績評価方法

レポート提出