(4)癒しの生化学・分子生物学
Biochemistry
and Molecular Biology for Healing
大 城 聰
1 科目の概要
「癒し」とは病気や傷を治すこと,或いは肉体的,精神的な苦痛を軽減させることである。これまで病気或いは健康とは関わり合いはあるが,しかし生化学の研究対象となり難かった分野が脚光を浴びている。「ストレスstress」「疲れfatigue」などがその研究テーマであり,生化学レベルでストレス刺激stressful stimuliを細胞あるいは個体に与えることにより,生体内で起きる変化を物質として取り扱えることができるようになったことで生化学レベルでの理解が進んでいる。「ストレスstress」或いは「疲れfatigue」のメカニズムを理解することで「癒し」「回復」に役立てる治療や予防に役立つことを生化学レベルの知識で分かり易く解説したい。
2 教育方針・教育目標
一般生化学の基礎知識をベースにしてストレスと生活習慣病との関係を理解し,生活習慣病を予防するにはどうすれば良いか,またストレスのメカニズムを理解することにより機能性食品の開発や創薬へどのように応用されていくかを学び,更に最近,注目されている「疲労」に対する「香り」の効果についても生化学的にどのような研究が進められているかを紹介する。
3 教育内容
基礎的な生化学,分子生物学に基づいて,ストレス刺激によってどのようなシグナル伝達系が関わり,細胞はどのように応答するか。細胞は自己を癒す為にどんな機構を持っているか。病気の原因となるストレス刺激にはどんな種類があり,どんな生活習慣病と関わるか。またそれを癒す方法(予防や治療)にはどんなことが考えれるかなど,最近の報告を交えて解説したい。講義を通じてダイエットやフィットネスの意味,機能性食品の開発,創薬との関連についても触れたい。
回数 |
日 時 |
項 目 |
内 容 |
担当者 |
1 |
4/7(水) 1 |
ストレス |
ストレスの種類とその細胞情報伝達系 |
大城 聰 |
2 |
4/14(水) 1 |
抗ストレス物質 |
抗酸化物質,ストレス抑制の理論 |
〃 |
3 |
4/21(水) 1 |
ストレス・センサー蛋白質 |
ストレス・センサー蛋白質の生化学・分子生物学 |
〃 |
4 |
4/28(水) 1 |
ストレスと生活習慣病 |
ストレスと生活習慣病との関係 |
〃 |
5 |
5/12(水) 1 |
ストレスと神経変性疾患 |
ストレスとアルツハイマー病との関係 |
〃 |
6 |
5/19(水) 1 |
ストレスと神経変性疾患 |
ストレスとパーキンソン病との関係 |
〃 |
7 |
5/26(水) 1 |
みどりの香り,疲労 |
みどりの香りの成分,疲労の生化学 |
〃 |
8 |
6/2(水) 1 |
まとめ |
以上のまとめ及び研究,研究室紹介など |
〃 |
〔単位〕選択1単位
〔場所〕講義室A(3号館4階)ほか
4 教科書・参考書
教科書は特にないが,参考書と最新の学会報告を使用する。
1.フリーラジカル 体内動態と生体障害機序 近藤元治編 メジカルビュー社
2.活性酸素とシグナル伝達 レドックス制御と生物の生存戦略 井上正康編 講談社サイエンティフィック
3.細胞内シグナル伝達がわかる 山本 雅,秋山 徹 編 羊土社
4.生化学 臨床検査講座 阿南功一,阿部喜代司,原 諭吉,医歯薬出版
5.2003年日本神経化学会大会要旨集vol.42, No.2, 3
6.2003年日本生化学会大会要旨集 第75巻
7.2000年日本薬学会大会要旨集
8.2001年日本薬学会大会要旨集
9.2002年日本薬学会大会要旨集
5 他科目との関連
生化学,分子生物学,生理学,臨床化学とはかなり関連があり,オーバーラップするテーマが含まれる。
6 受講上の注意
生化学の知識の確認およびその知識がどように研究や治療,病気の予防に役立つかを常に意識して受講して貰いたい。
7 成績評価方法
講義への積極的な参加態度,姿勢およびレポートにもとづいて評価する。