電子顕微鏡学

Electron Microscopy

 

鈴 木 英 紀

 

1 科目の概要

電子顕微鏡学では電子顕微鏡の原理と構造を学習するばかりでなく,観察対象物に適した試料作製法を解説する。さらに,電子顕微鏡写真の例から細胞の微細構造と機能の関連を学ぶ。

 

2 教育方針・教育目標

電子顕微鏡は光学顕微鏡の解像力をはるかに凌駕するものとして開発され,人類を超ミクロの世界に導くことによって,現代の医学・生物学の発展に多大なる貢献をもたらしてきた。電子顕微鏡が普及してまだ半世紀にしか満たないが,この間に種々の利用,応用法が確立されてきた。電子顕微鏡学では,電子顕微鏡本体の原理と構造を学ぶばかりでなく,生物試料を作製する場合の周辺機器の原理と構造,多岐にわたっている生物試料作製法を体系的に学習し,医学・生物学における電子顕微鏡の利用,応用法の知識を習得することを目標とする。さらに,多くの電子顕微鏡写真を供覧し,生物試料,特に細胞の微細構造と機能の関連を理解させることを目標とする。

 

3 教育内容

電子顕微鏡学は三つの大項目に分けて講義する。すなわち,1)「電子顕微鏡の原理と構造」として,光学顕微鏡との違いを明らかにしつつ,電子顕微鏡の原理と構造を理解させる。次に,2)「試料作製法」として,種々の生物試料作製法を体系的に学習し,医学,生物学における電子顕微鏡の利用,応用法を学ぶ。最後に,3)「細胞の構造と機能」として,電子顕微鏡写真を数多く供覧することによって,電子顕微鏡レベルの細胞の構造と機能について学び,電子顕微鏡写真の判読法を理解させる。

回数

日 時

項  目

内   容

担当者

1

4/8(火)

1

電子顕微鏡と光学顕微鏡

(透過および走査型)電子顕微鏡と光学顕微鏡の違いを概説する。

鈴木英紀

2

4/15(火)

1

電子銃,電子レンズ

電子線の発生源としての電子銃,電子線を拡大する電子レンズの構造と原理を学ぶ。

3

4/22(火)

1

絞り,排気系

レンズの収差を減ずるための絞りの構造と効果,真空排気系の原理と構造を理解させる。

4

5/6(火)

1

透過型電子顕微鏡

透過型電子顕微鏡の構成と特徴を学習させる。

5

5/13(火)

1

走査型電子顕微鏡(1)

電子線を走査させる走査(偏向)コイルの原理と構造を解説する。

6

5/20(火)

1

走査型電子顕微鏡(2)

走査型電子顕微鏡の構成と特徴を学ぶ。

7

5/27(火)

1

生物試料の固定

固定の原理,固定剤の種類,二重固定法を理解させる。

8

6/3(火)

1

超薄切片法と免疫電顕法

固定試料の樹脂への包埋,超薄切片の調製,電子染色,免疫電顕法の原理,観察法を学習させる。

9

6/10(火)

1

走査電子顕微鏡試料作製法

固定試料の乾燥,金属コーティング,観察法を解説する。

10

6/17(火)

1

ネガティブ染色法とレプリカ法

生化学的に精製した生体高分子の電子顕微鏡による観察法を学ぶ。

11

6/24(火)

1

細胞の一般構造

電子顕微鏡レベルの細胞内小器官の構造を概説する。

12

7/1(火)

1

細胞膜と接着装置

細胞膜とその変形構造の接着装置の構造と機能を理解させる。

13

7/8(火)

1

細胞核とリボゾーム

細胞核とその内容物の核小体,クロマチンおよびリボゾームの構造と機能を学習する。

14

7/15(火)

1

小胞体とゴルジ装置

粗面および滑面小胞体とゴルジ装置の構造と機能を解説する。

15

9/2(火)

1

顆粒,ミトコンドリア,ライソゾームとその他の小器官

顆粒,ミトコンドリア,ライソゾーム,中心小体などの構造と機能を学ぶ。

16

9/9(火)

1

予備日

 

鈴木英紀

〔単位〕選択2単位

〔場所〕講義室A(3号館4階)ほか

 

4 教科書・参考書

教科書は使用しない。電子顕微鏡法 (平光広司,中村裕昭,宮本博泰 著,医歯薬出版),電子顕微鏡生物試料作製法 (日本電子顕微鏡学会関東支部編,丸善)を参考書とする。

 

5 他科目との関連

解剖,組織および生理学で学んだ人体の構造と機能の知識は,電子顕微鏡レベルの細胞の構造と機能の理解のための基礎となる。また,病理検査学で習得した光学顕微鏡レベルの試料作製法の知識および技術は,電子顕微鏡のための試料作製の各行程を理解し,さらに実践するにあたっての参考となる。

 

6 受講上の注意

超ミクロの世界に興味を持ち,電子顕微鏡の応用法を常に考えてほしい。

 

7 成績評価方法

学期末筆記試験および講義出席点で評価する。

 

8 その他

電子顕微鏡,その周辺機器,試料作製法および細胞の構造の理解度を深めるために,スライドを多用する。