遺 伝 学
Human Genetics
木 村 彰 方
1 科目の概要
遺伝学は正常および病的状態における遺伝情報の構造や機能を研究する生物学の一分野で,メンデルの法則の再発見を機に,1900年代に入ってから研究が進み,特に1970年代からの分子生物学の進展と相まって,学問としてさらに進歩した。なかでも人類遺伝学の発展にはめざましいものがある。初期の研究は家系調査を中心とする統計的分析が主であったが,ヒトゲノム計画に象徴される大規模な構造解析を加えて,遺伝病の分子遺伝学的研究,細胞遺伝学的研究,免疫遺伝学的研究など,遺伝学はさらに広範な学問分野としての発展を遂げている。現時点でヒトは遺伝学的な解析が最も進んでいる生物であり,人類遺伝学的な研究の成果は,病気の診断や病態の理解を通じた新たな治療,さらには予防法開発への応用が進められている。
2 教育方針・教育目標
近年の分子遺伝学および細胞遺伝学の急速な進展により,遺伝学は大きく変わりつつある。特に人類遺伝学は,医学の全ての分野の中でも最も進歩の著しい分野のひとつであり,あらゆる分野において基礎的知見,基礎的研究技術として広く取り入れられつつある。本講義では,古典的な人類遺伝学と最近の分子遺伝学を一貫した体系として習得すること,およびヒトゲノム計画の進展で次々と解明されている各種疾患の分子レベルでの本態についても理解できる基礎的な学力を身に付けることによって,医学における遺伝学の意義と重要性を学ぶことを目標とする。
3 教育内容
遺伝学の基礎から始まり,古典的人類遺伝学から新世代の人類遺伝学への展開とその成果に関して,具体的に解説を行う。主に,以下の項目に重点をおいて講義を行う。1)遺伝の法則および遺伝子の構造と働き,2)遺伝様式と家系図の書き方,3)突然変異の遺伝的意義,4)各種疾患における遺伝子の関与,5)遺伝子検査に伴うインフォームドコンセント及び個人情報の保護と管理, 6)遺伝子診断と遺伝相談
回数 |
日 時 |
項 目 |
内 容 |
担当者 |
1 |
4/7(月) 1 |
遺伝学の基礎 |
遺伝子の基礎としてのメンデルの法則を中心に,その歴史的意義と重要性について理解するとともに,遺伝子検査、遺伝子診断に伴うインフォームドコンセントと個人情報保護管理の重要性について理解する。 |
木村彰方 |
2 |
4/14(月) 1 |
遺伝子の構造と機能(I) |
遺伝子の構造・複製・転写・翻訳に関して基本的な知識を習得する。 |
堀 久枝 |
3 |
4/21(月) 1 |
遺伝子の構造と機能(II) |
上記に加えて,遺伝子の構造と機能の解析技術の知識を習得する。 |
山口典子 |
4 |
5/12(月) 1 |
遺伝性疾患(I) |
単因子遺伝性疾患(常染色体性優性および劣性遺伝,伴性遺伝)の各遺伝様式,家系図の書き方と連鎖解析の原理を理解するとともに,遺伝子診断と遺伝相談の基礎をぶ。 |
木村彰方 |
5 |
5/19(月) 1 |
遺伝性疾患(II) |
ミトコンドリア遺伝病と多因子遺伝性疾患(生活習慣病など)の基礎を理解する。 |
安波道郎 |
6 |
5/26(月) 1 |
難治性疾患の遺伝学 |
疾患の病因究明,病態究明における遺伝学的解析の応用について理解する。 |
安波道郎 |
7 |
6/2(月) 1 |
染色体異常 出生前診断 |
染色体の構造,機能と疾患における染色体異常について理解するとともに,発症前診断および出生前診断の基礎を学習する。 |
小原深美子 |
〔単位〕選択1単位
〔場所〕講義室A(3号館4階)ほか
4 教科書・参考書
教科書は特に使用しないが,いくつかの参考書を紹介しておく。
ヒトの遺伝:中込弥男著,岩波新書
生命科学と人間:中村桂子著,NHKブックス
ヒトの遺伝学:エドリン著,東京化学同人
人類遺伝学:柳瀬敏幸編,金原出版
医学・薬学研究者のためのバイオテクノロジー概論:木村彰方編,医薬ジャーナル社
遺伝子・染色体検査学:池内達郎,吉田光明,小原(斎藤)深美子,東田修二著,医歯薬出版
5 他科目との関連
「染色体検査学」,「分子生物学」,「臨床生化学」,「バイオサイエンス」等を受講することにより,本講義の理解をより一層深めることができると思われる。
6 受講上の注意
古典的な遺伝学から最新の知見まで,幅広くしかも出来るだけ具体的に理解が得られるよう,質問を歓迎する。また遺伝子診断,発症前診断,出生前診断などを通して,遺伝学の持つ社会的意味に関して正しい理解を深めて欲しい。
7 成績評価方法
学期末筆答試験により評価するが,講義出席点も考慮する。