保健医療福祉制度論演習

Seminar of Health and Welfare System

 

眞 野 喜 洋

 

1 科目の概要

この科目は広義の社会保障制度と行政について学ぶものである。このうち社会福祉学で医療保障制度,所得保障制度,社会福祉の各分野について扱っているので,ここでは医療供給制度,一般保健サービス,医療行政・薬事行政等の厚生行政,地域保健法に示される保健所市町村保健センターの活動等につき学ぶことにする。社会福祉学と合わせてわが国の保健医療福祉制度に関する知識を今後の保険医療活動に生かすように身につけたい。

 

2 教育方針・教育目標

保健医療福祉制度および行政に関する知識を相互に関連づけて把握し,自らの保健医療活動に役立たせることはもちろん,保健医療の現場において対象者への援助や問題解決に際し問題点を的確に分析把握し,社会資源の利用等生きた知識として活用できることを目標とする。

 

3 教育内容

回数

項     目

講   義   内   容

担当者

1

社会保障制度総論

社会保障の概念・体系につき整理する。社会保険と公的扶助,対象となる生活事故等人権との関連も含めて学ぶ。

眞野喜洋

2

行政論総論

行政とは何か,行政と法規,権力行政と給付行政,厚生行政の概要,公衆衛生の概念規定等につき学ぶ。

3

社会保障制度の歴史

制度としての社会保障の発展過程をイギリスを中心に,ドイツ,アメリカ,ロシア(ソ連),ニュージーランド,国連,ILO,そして日本を取り上げ考察する。

山見信夫

4

公衆衛生・衛生行政の歴史

科学の発展と公衆衛生の発展は密接に関連している。19世紀からの発展経過を学び,現在の位置を理解する。コレラ対策の歴史を取り上げ具体的にたどることによりわが国の衛生行政の歴史の特異性を把握するとともに,結核対策の歴史も取り上げわが国の公衆衛生の歴史の特異性についても考察する。

5

性と社会保障

女性と労働,パート労働,雇用機会均等,育児介護休業制度,セクシュアル・ハラスメント,女性に対する人権侵害の世界的現状等を通して女性と人権につき全般的に考察する。

6

医療保障制度

わが国の医療保険制度の概要と問題点,国民健康保険制度,老人保健制度等,高齢化を迎え,今後の医療保障制度のあり方,政府の各種報告・ヴィジョン等も分析し広範に考察する。

7

医療供給制度

医療法の一次二次による改定,医療計画,病床規制,医師数削減,医療施設体系の改編等,わが国の医療供給体制は急速に変化してきている。今後の展望はどうか,政府の各種報告も分析し考察する。

8

医療費

医療費の三要素,国民医療費とその範囲,国際比較,医療費増加の要因診療報酬制度,医療費に関する政策誘導等医療費を総合的に分析考察する。

9

その他の医療関係行政

医師関係者,医療施設,医療施設数・病床数,看護体性,看護婦需給,国立病院療養所再編,へき地医療,救急医療,災害医療等の変遷現状等につき学び問題点を把握する。

10

厚生行政・地域保健

厚生省とその機構,地方衛生行政機構,社会保険行政,地域保健,保健所とその統廃合の問題点,保健センター,地域保健における保健婦活動とは何だったか,大きく変化する地域保健を中心に厚生行政を分析考察する。


11

保健サービス

健康増進,国民栄養調査,がん対策,循環器疾患対策,糖尿病その他の成人病対策,老人保健事業,感染症対策・予防接種,エイズ対策等の歴史と現状を学ぶ。

山見信夫


 

12

薬事行政

医薬分業,医薬品の承認・許可制度,医薬品副作用被害救済制度,医薬品再審査制度,CMP,麻薬覚せい剤対策,製造物責任法(PL法)等につき学ぶ。

13

社会保障経済,国家予算

医療・年金・社会福祉等の社会保障総費用,国家予算,厚生省予算等を分析検討する。

14

国際保健・国際社会保障

国連,WHO,ODAとその問題点,ILOの活動・条約,OECD社会保障関係大臣会議声明,NGO等保健医療福祉の分野における国際協力の歴史,現状,問題点を分析検討する。

15

まとめ

 

 

 

4 教科書・参考書

眞野喜洋・遠藤立一(監著):健康管理者のための公衆衛生学,圭文社,東京

鈴木路子・眞野喜洋(編著):教育健康学 教育と医療の接点を求めて,ぎょうせい,東京

(財)厚生統計協会:国民衛生の動向,厚生の指標臨時増刊,(財)厚生統計協会,東京

労働衛生のしおり(労働省労働基準局編),成人地域看護活動(地域看護学講座7),医学書院

第3版 公衆衛生看護学大系9 保健福祉行政論,日本看護協会出版会

など書籍はすべて参考となるが,購入の折できるだけ新しい数値の乗った統計データを有するものから選ぶこと。

毎年資料が更新されるので,その場合にはプリントを配布する。

 

5 他科目との関連

公衆衛生学,地域や老年保健学・看護学とは密接な関係にあり,クロス・オーバーする領域が多い。母性,成人老人,精神の各保健学,看護学とも関連性が高い。

基礎学力としての生理学,薬理学,病理学などの知識は講義の理解を深める上で重要である。

 

6 受講上の注意

保健医療福祉制度論演習は他領域とそれぞれ深く係る学際性の高い分野なので,日頃からマスメディアの医療の関与する社会ニュースなども関心を持つことが望ましい。

 

7 成績評価方法

学期末筆答試験,出席点などにより評価する。