看護方法論

Fundamental Clinical Skills

 

増 田 敦 子

 

1 科目の概要

看護の基本技術として,まず看護場面で共通する基本の技術,さらにそれらを基盤として基本的な日常生活の援助技術および診療に伴う基本技術について学習する。これらの技術は,単に技術手技的に用いられるのではなく,法則性を持った技術として対象者に適する技術を選択する科学的根拠,必要性およびプロセスを査定した上で,看護の援助方法を検討する。

 

2 教育方針・教育目標

看護の概念に基づき,全ての人間に共通する看護実践の基礎的知識と技術を学習する科目である。看護を必要とする人々の生活および医療を受けることに伴うケアの共通基盤の理解の上に,障害を持つ人々に対する看護過程を展開するための問題解決能力と基礎看護技術を対象への援助技術として応用し,看護の目的を達成できる能力を養う。

 

3 教育内容

 

回数

項     目

講   義   内   容

担当者

1

看護技術の概要

看護技術の構成および看護実践の中での看護技術の位置付けと特徴を理解する。

増田敦子

    他

2

コミュニケーション

コミュニケーションに関する基礎的知識を理解し,人間関係の確立や看護実践の中での利用方法を学ぶ。

3

身体の観察,バイタルサインの観察

身体全体の観察の重要性を学び,呼吸・体温・血圧・脈拍測定の意義と得られる観察値の意味を理解する。

4,5

バイタルサインの測定

呼吸・体温・血圧・脈拍測定の方法を身につけ,測定値の示す意味とその変動条件について考察する。

6,7

看護技術と人間工学

身体の機能的・効率的な活用の仕方の基盤となる知識を人間工学的(力学,動作・作業効率,安全性)側面から修得し,看護ケアの中で活用できる能力を養う。

斎藤 真

8〜10

環境

 ベッドメーキング

生活環境と健康状態の関係から入院患者の病床環境の調整を行なうための基礎知識を理解し,ベッドメーキングの技術を修得する。

増田敦子

11

運動と休息

活動と休息のリズムとそれぞれの意義・生活の中での重要性について理解する。さらに,健康を障害された人々にとって運動および安楽な体位の保持の重要性について理解する。

12,13

体位変換

活動(活動)と休息に関連する援助技術として基本的な安楽な体位の保持,体位変換,移動(移送)の方法を学ぶ。また,休息(睡眠)を妨げる要因を知り,援助方法を学ぶ。

14〜16

衣生活

 シーツ交換,寝衣交換

人間の生活と衣服の意義,健康と衣生活の関連について学ぶ。適切な衣服選択と衣服着脱の援助について学ぶ。

17〜20

清潔

 全身清拭,足浴,

 手浴,洗髪,

口腔ケア,陰部洗浄

健康な生活と身体の清潔の意義を生理的,心理的,社会的側面から理解する。清潔ケアに関連する身体機能への影響について理解し,効果的な援助方法について学び,身体各部位の構造・機能に基づいた援助方法を修得する。

21〜23

食生活

 食事介助

食生活としての食事の意義と栄養補給,健康について理解し,食事援助の必要性を見出し援助できる能力を養う。

宮腰由紀子

24,25

排泄介助

尿器・便器の取り扱い,導尿・浣腸

健康および生命維持における排泄の意義を理解し,排泄に関する観察能力を養う。排泄障害について理解し,適切な援助技術を修得する。

増田敦子

    他


 

26〜28

安全

感染予防

 無菌操作

 ガウンテクニック

 手洗い

 滅菌手袋の装着

医療事故防止

 抑制法

安全であることは看護の基盤であることを理解し,生活環境の中で,安全を妨げる因子について学習し,事故を防止し常に安全を確保する技術を実践できる基礎能力を養う。その具体的な防止対策として,感染予防と抑制についての知識と技術を修得する。まず,感染予防に関する基礎知識を習得し,滅菌物の取り扱い,手洗い,滅菌手袋の装着,ガウンテクニックの技術を学習し,感染に対する医療者の行動を体得する。また,ベッドからの転落や自制のきかない患者を事故から守るための抑制の技術を修得する。

増田敦子

    他

29〜32

薬物療法と看護

 経口与薬

 注射法

(筋肉内注射,静脈内注射,点滴の準備)

薬物を取り扱う際の法的責任について知る。また,薬物の正しい管理や取り扱い,正しい与薬を実施するための知識を学習する。そして,各種与薬方法の特徴を理解し,適切な援助技術を修得する。

33〜35

検査

 検査と看護

 採血

検査の種類,検査における看護婦の役割を知り,適切な援助ができる能力を身につける。検査の実際として血液検査を取り上げ,検体としての血液の採取技術を修得する。

36,37

罨法

 温罨法,冷罨法

罨法の目的,局所への温度刺激に対する生体への影響,目的に応じた罨法の種類を学ぶ。さらに,効果的な罨法の方法を修得する。

38〜40

呼吸障害と看護

 吸引,吸入

呼吸障害の原因および症状について理解し,呼吸困難時の援助について学ぶ。

41,42

意識障害と看護

意識障害の原因・症状・観察について理解し,意識障害のある患者の看護について学習する。

43

死と看護

死後の処置

死を迎える対象および周囲の人々への理解を深め,その看護および死後の処置について学ぶ。

44〜46

看護技術の科学的検証

経験的に積み重ねられた知識を基盤にしている従来の看護技術の科学的根拠をグループに分かれ,実験的に探求する。

47,48

看護とセクシュアリティ

人間のセクシュアリティに関する理解を深め,看護実践の中で,対象と看護者のセクシュアリティを尊重した看護について考える基礎を学ぶ。

大谷眞千子

49,50

カンファレンス

看護におけるカンファレンスの意義,基本要素を理解し,カンファレンスの運営方法を学ぶ。グループに分かれ,テーマを決めて実際に運営し,司会者,発言者,書記の役割を体験する。

増田敦子

    他

51

試験1

看護方法論試験1:既習の看護技術に関する知識を問う試験を行なう。

52〜54

試験2

看護方法論試験2:与えられた状況設定課題について,看護者と患者の役割を取りながら技術試験を行なう。

55〜58

看護過程

看護を実践する思考過程である看護過程の概要を理解し,症例をもとに看護過程の展開を学ぶ。

59

試験3

看護方法論試験3:看護過程についての基本的な知識を問う試験を行なう。

60

実習オリエンテーション

臨地実習(基礎看護学実習)に向けて、その位置付けと内容について理解するためのオリエンテーションを行なう。

 

4 教科書・参考書

杉野佳江編:基礎看護学2,看護学講座13,金原出版

兼松百合子他訳:看護過程ハンドブック,医学書院

坪井良子他:考える基礎看護技術,廣川書店

杉野佳江編:基礎看護学3,看護学講座14,金原出版

氏家幸子編:基礎看護技術,医学書院

川島みどり編:実践的看護マニュアル,共通技術編,看護の科学社

平田雅子他:看護技術の物理的考察,メヂカルフレンド社

山田里津監:看護人間工学,メヂカルフレンド社

阿部正和:看護生理学,生理学より見た基礎看護,メヂカルフレンド社

日野原重明監:基礎看護技術マニュアル(T),ナーシング・マニュアル14,学研

日野原重明監:基礎看護技術マニュアル(U),ナーシング・マニュアル15,学研

小田政江他訳:看護診断入門,ナーシングプロセス,廣川書店

 

5 他科目との関連

看護の基礎技術は,健康障害を持つ人々の生活全般に渡る内容と,診療に関連する内容があり,看護学原論,解剖学,生理学,薬理学,微生物学,生化学,栄養学などの科目との関連性が高い。

 

6 受講上の注意

専門基礎科目に関する学習内容を充分に理解することは,援助技術を学習するために不可欠である。終了している科目は,次の技術の学習までに復習し理解を深めておくことが望まれる。

 

7 成績評価方法

技術の学習に対する姿勢,技術演習毎に課するレポート,筆記試験および技術試験の総合評価