眞 野 喜 洋
1 科目の概要
病態学では,主として成人期において急性・慢性に経過するさまざまな健康障害をもつ人々に対する看護支援の必要性を理解する基礎知識として,さまざまな病態についてその症候とメカニズム,診断・治療の概要を学ぶ。成人期に照準を合わせたこの病態学の基礎知識は,異なる発達段階にある人々の病態を学ぶ上での基本になる重要な学習内容として位置付けられる。
2 教育方針・教育目標
講義は臨床内科学的,臨床外科学的立場から,保健衛生学科教官の他,内科系,外科系関連教官により行われるが,それらの講義を通じて医学分化の趨勢に触れるとともに,器官系統別に主要な病態について内科学的,外科学的視点を統合して症候とメカニズムに対する理解を深め,患者の身体を統合的に把握する上での看護の役割の重要性を理解する。
講義時間が少ないため,自学実習により理解を確実にする態度を身に付けることが重視される。その経験を通して,他の発達段階にある場合の病態を理解する基盤とするとともに,臨地実習において講義を受けていない疾患の患者を受け持つ場合にも対応できるようにする。
3 教育内容
(1) 内科的診断・治療の基本的考え方について理解する。
(2) 内科的治療を要する主要疾患について,器官系統別の自然経過,病態,検査・診断および治療の概要を理解する。
(3) 外科的治療を要する疾患について,共通する病態および基本的処置・管理について理解する。
(4) 外科的治療を要する疾患について,器官系統別の自然経過,病態,検査・診断,手術・治療,および術前・術後管理の概要を理解する。
(5) 内科的,外科的疾患は器官系統別の理解を図るために,下記の回数とは別に,平行して講義されるように配列する。
回数 |
項 目 |
講 義 内 容 |
担当者 |
1 |
病態学総論 |
誕生から死に至る過程で生体の各器官はどのように調節されながら加齢現象を生じるのか,病態とは何かの基礎的考え方の概要 |
眞野喜洋 |
2 |
内科的総論 |
内科学の概要および内科的診断・治療・管理の基本的考え方,看護における意義 |
佐藤千史 |
3,4 |
内科的治療を要する病態 |
循環器の病態とその症候,メカニズム,診断法と治療・管理の概要 |
川良徳弘 |
5,6 |
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呼吸器の病態とその症候・メカニズム,診断法と治療・管理の概要 |
宮里逸郎 |
7,8 |
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内分泌・代謝(特に,糖代謝)の病態とその症候・メカニズム,診断法と治療・管理の概要 |
中山 徹 |
9,10 |
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腎の病態とその症候・メカニズム,診断法と治療・管理の概要,透析療法 |
佐藤千史 |
11,12 |
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消化器の病態とその症候・メカニズム,診断法と治療・管理の概要 |
〃 |
13,14 |
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血液の病態とその症候・メカニズム,診断法と治療・管理の概要 |
小山高敏 |
15,16 |
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神経系の病態とその症候・メカニズム,診断法と治療・管理の概要 |
神経内科学講座 |
17,18 |
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膠原病の症候・メカニズム,診断法と治療・管理の概要 |
窪田哲朗 |
19 |
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感染症総論,診断法と治療・管理の概要 |
岡村 登 |
20,21 |
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皮膚の病態とその症候・メカニズム,診断法と治療・管理の概要 |
皮膚科学講座 |
22,23 |
放射線科学 |
放射線による画像診断および治療手段としての意義と方法 |
放射線医学講座 |
24 |
外科系総論 |
外科系諸学の概要および相互の関係損傷,創傷の治癒,熱傷,凍傷 |
佐藤健次 |
25 |
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炎症,外科的感染症,外科的特異性炎症 |
〃 |
26,27 |
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腫瘍総論・各論・診断,手術術式 |
〃 |
28 |
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手術管理(術前) |
〃 |
29 |
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手術管理(術中) |
〃 |
30 |
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手術管理(術後早期) |
〃 |
31 |
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手術管理(術後後期) |
〃 |
32 |
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手術補助療法,臓器移植,医療過誤 |
〃 |
33,34, 35,36 |
外科的治療を要する病態 |
上部消化管(食道,胃),肝・胆・膵,血管の病態と症候・メカニズム,診断法,手術療法と管理の概要 |
外科学第1講座 |
37,38 |
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下部消化管,乳房の病態と症候・メカニズム,診断法,手術療法と管理の概要 |
外科学第2講座 |
39,40 |
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心臓・肺の病態とその症候・メカニズム,診断法,手術療法と管理の概要 |
胸部外科学講座 |
41,42 |
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骨・関節(脊椎,外)の病態とその症候・メカニズム,診断法,手術療法と管理の概要 |
整形外科学講座 |
43,44 |
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男性生殖器・尿路の病態とその症候・メカニズム,診断法,手術療法と管理の概要(腎移植を含む) |
泌尿器科学講座 |
45,46 |
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中枢神経系の病態とその症候・メカニズム,診断法,手術療法と管理の概要 |
脳神経外科学講座 |
47,48 |
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耳鼻咽喉領域の病態とその症候・メカニズム,診断法,手術療法と管理の概要 |
耳鼻咽喉科学講座 |
49,50 |
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婦人科領域の病態とその症候・メカニズム,診断法,手術療法と管理の概要 |
産科婦人科学講座 |
51,52 |
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手術麻酔(総論の該当時期に行う) ペインクリニック |
麻酔・蘇生学講座 |
53 |
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眼球・付属器の病態とその症候・メカニズム,診断法,手術療法と管理の概要 |
眼科学講座 |
54 |
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舌・口腔領域の病態とその症候・メカニズム,診断法,手術療法と管理の概要 |
歯学部口腔外科学第1講座 |
4 教科書・参考書
教科書
・内科系:病気の成立ちとからだT及びU,中野昭一(編),医歯薬出版
・外科系:ナースの外科学,磯野可一(編著),中外医学社
参考書
・系統看護学講座,成人看護学2〜14,医学書院
・系統看護学講座,別巻1,臨床外科看護学総論,医学書院
・標準外科学,第8版,武藤輝一・田部達三編,医学書院
・テーマによる参考図書の紹介
5 他科目との関連
看護の対象となる人々の疾患や障害を理解するためには,解剖学,生理学,病理学の知識に基づいて病態を知る必要がある。病態学では,単なる知識の集積にとどまらず,これら専門基礎科目で学習した事柄を関連づけて考えることが重要である。
6 受講上の注意
参考書の指定箇所について予習をして臨むこと。
7 成績評価方法
学期末筆記試験(第2学年前期・後期)により評価する。
各講師より出題されるので,全ての総合知識が要求される(内科・外科各100問以上出題)。